山形・遊佐町で今、新しいウイスキーの蒸留所の建設が進んでいて、その心臓部ともいえる装置が6月18日に到着した。そのウイスキー作りを手掛けるのは、日本酒の蔵元。そのねらいと目指すところは何なのか?

“ウイスキー市場参入”への大きな一歩

遊佐町に建設が進むウイスキーの製造工場「月光川蒸留所(がっこうがわじょうりゅうじょ)」。18日、群馬県の工場から500kgの麦芽を仕込むことができる銅製のポットスチルが到着した。

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ウイスキーの原酒は、大麦に水を加えて麦汁を作り、そこに酵母を加えてアルコール発酵させたもろみを蒸留して作る。ポットスチルは、このウイスキー製造に欠かせない蒸留装置だ。

月光川蒸留所・長谷川千浩製造部長:
すごいうれしい。ちょっとテンション上がっています

楯の川酒造・佐藤淳平社長:
いよいよここまで来たかという気持ち。数年かけて事業計画を組んでいたので、非常に感慨深い

月光川蒸留所を建設したのは、江戸時代後期の1832年に創業した酒田市の楯の川酒造。2010年からは市場のニーズを先読みし、純米大吟醸のみの製造にシフトした上で海外輸出にも力を入れてきた。そして今回挑むことにしたのが、拡大が続くウイスキー市場への参入だ。

楯の川酒造・佐藤淳平社長:
日本酒と比べるとウイスキーの方が我々と接する時間が長いのではないかと気が付き、ウイスキーには商売としての面白みがあるんじゃないかなという判断

遊佐の水が決め手に

世界5大ウイスキーの一つに数えられるジャパニーズウイスキー。近年は小規模な蒸留所の建設が相次ぎ、全国には157の蒸留所がある。そうした中、遊佐町に蒸留所を建設すると決めたのには一つの理由があった。

楯の川酒造・佐藤淳平社長:
水が非常に豊富で潤沢にあるところ。地下水だがかなりきれいな水で、蒸留に必要な冷却水が大量に必要になるので、そういったところで遊佐を選んだ

鳥海山の豊富な伏流水で知られる遊佐町。青い水が印象的な丸池様をはじめ、岩場から湧き出す胴腹滝や、豊富な湧き水で満たされる透明な牛渡川など、水の名所がたくさんある。ウイスキーの仕込みに良い水は欠かせず、3年がかりで遊佐町への建設を決めたという。

楯の川酒造・佐藤淳平社長:
蒸留とこの建物と、プラントを入れて全部で8億くらい。来年、貯蔵棟を建てるのでトータル9億から10億くらいの事業費かなと思っている

聖地誕生に期待

実は遊佐町には2018年からウイスキー製造に乗り出した「遊佐蒸溜所」があり、楯の川酒造の月光川蒸留所が2カ所目となる。1つの市町村に蒸留所が2つあるのは東北では例がなく、この地が将来、ジャパニーズウイスキーの聖地となる可能性を秘めている。

楯の川酒造・佐藤淳平社長:
30年物ぐらいまでは商品として企画していきたいと思っています。じっくり落ち着かせたいい品質のものを作って、世界のウイスキー好きに届けられるようしっかりまい進していきたい

月光川蒸留所でウイスキー製造が始まるのは2023年9月の予定。ウイスキーは熟成に時間がかかるため、一部の商品を除き、2027年以降の販売が計画されている。遊佐町の良質な水で仕込まれたウイスキーがどんな味わいになるのか、今から楽しみだ。

(さくらんぼテレビ)

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