男性が育児休業を取得すると、最大で100万円もらえるシステムを導入した企業がある。

それが、大和リース株式会社の「エンジェル奨励金」制度。元々の運用開始は2015年度で、子どもが誕生すると第1子で30万円、第2子で50万円、第3子以降は100万円を支給していた。

これを2023年4月から、男性の育休(産後パパ育休を含む)の取得日数に応じて、もらえる額が増えるように支給基準を見直したという。

エンジェル奨励金の支給基準(提供:大和リース)
エンジェル奨励金の支給基準(提供:大和リース)
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・育休が30日未満
第1子では30万円、第2子では50万円、第3子以降は100万円を支給
・育休が30日以上90日未満(1カ月以上)
第1子では50万円、第2子では70万円、第3子以降は100万円を支給
・育休が90日以上(3カ月以上)
第1子、第2子、第3子以降のいずれでも100万円を支給

※エンジェル奨励金の申請には、家事や育児の役割分担を夫婦で決めて、指定の書式にまとめた「家事・育児シェアシート」の提出が必須となる。

1カ月以上、3カ月以上で支給額が増えることから、自然と長期取得を目指したくなるが、今回の見直しを行ったのはなぜだろう。どんな影響を期待しているのか。大和リースの担当者に聞いた。

男性の育休は1週間程度が大半

――エンジェル奨励金の支給基準をなぜ見直した?

当社では、育休の取得率は男性が2022年度に90.9%となりましたが、取得期間は1週間程度が大半を占めていました。女性は取得率が100%で、取得期間も年単位が一般的です。そこで長期取得の推進につながればと、今回の改定となりました。

長期で育休できるムードはまだ弱いという(画像はイメージ)
長期で育休できるムードはまだ弱いという(画像はイメージ)

――男性の育休の取得期間はどれくらい?

当社の男性で30日以上取得したのは、2019年度が1人(3%)、2020年度が4人(8%)、2021年度が3人(8%)、2022年度が11人(22%)です。取得期間が長くなる傾向にはあるものの、ムードの高まりはまだ弱いと言えます。※カッコ内の%は、育休取得者内における割合


――支給したお金の使い道は決められている?

指定はなく、報告も求めていません。有意義な活用を願っています。

男性は中長期的に育児に関わってほしい

――育休の長期取得を勧めるのはなぜ?

母親の出産や授乳に伴って分泌されるホルモン「オキシトシン」(愛情ホルモンとして知られます)は、男性の場合、子どもとのスキンシップを続けることで徐々に分泌量が増すことが学術的に証明されています。そのような観点から、男性が中長期的に育児に関わっていけるよう推奨しています。

育児・家事を夫婦で行うきっかけに(画像はイメージ)
育児・家事を夫婦で行うきっかけに(画像はイメージ)

――制度の見直しでどんな効果を期待したい?

育児・家事を夫婦で行う、雰囲気づくりにつながればと考えています。共働きと夫婦で育てることが浸透すれば、母親の時間的な負荷が分散され、精神的な負担も軽減されるはずです。復職後のパフォーマンスやキャリアにも良い影響も与えるでしょう。結果的に、女性の社会進出や活躍につながるとも思います。


――見直し以降で長期育休した男性はいる?

はい。1人ですが、5月から取得している者がいて、3カ月以上の取得を予定しています。

男性だから、女性だからの“ワンオペ”から脱却すべき

――職場の同僚には、フォロー的なものはあるの?

詳細は差し控えますが、準備はしています。取得状況や当事者の意見を踏まえて進めたいと考えます。


――エンジェル奨励金は女性でも同じ条件で申請できるの?

女性職員には、配偶者(弊社職員ではない場合)の育児休業期間を基に奨励金額を決定しています。(支給基準や金額は男性と同じ条件)


――男性の育休取得を促進するため、企業にはどんなことが求められそう?

経済的な支援は必要だと思いますが、ワークスタイルも見直す必要があると思います。仕事を単なる役割分担で取り組むのではなく、能力的に補完できるようなチームづくりが必要なのではないでしょうか。当社では、男性が仕事のワンオペレーション、女性が育児・家事のワンオペレーションとならないような「ワンオペからの脱却」も進めていきます。



支給基準の見直しには、育休を子育てに関わるきっかけにしてほしいという狙いがあった。各企業が男性育休の取得率を上げるためのさまざまな取り組みを行っているが、担当者が語るように、ワークスタイルの見直しも大事なのだろう。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。