夫婦で一緒に子育てしたいし、子どもとの時間も長く取りたいから、育児休業(通称、育休)を取得したい。けれど、そもそも育休はどれくらい取れるのか、そのときの収入は?と、疑問や不安を抱いている夫婦は多いだろう。

厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得率は上昇傾向にあるものの、2021年度で13.97%。女性の85.1%に比べて低い水準だ。

男性の育休取得も後押しするため、2022年10月に施行された改正育児・介護休業法により新設・変更された制度もある。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんに、制度内容やお金に関することなど、育休の基礎知識を教えてもらった。

パパが取得できる2つの育休制度

「育休とは、育児・介護休業法に定められた両立支援制度のひとつで、会社員を対象にしている制度です。いわゆる育休以外にも、子どもの出生後8週間以内に取得できる産後パパ育休という制度があります」と、高山さんは解説する。

【育児休業】
子どもが1歳(保育所に申し込んだものの入所できなかったなどの事情がある場合は最長で2歳)に達するまで取得できる休業制度。

2022年10月からは対象期間内であれば、2回に分けて取得できるようになった。

夫婦ともに育休を取得する場合は、子どもが1歳2カ月に達するまで延長が可能だが、延長されるのは育休取得期間の期日であり、育休が取得できる期間はこれまで通り1年間(パパ・ママ育休プラス)。

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【産後パパ育休(出生時育児休業)】
2022年10月に創設されたもの。父親が子どもの出生後8週間以内(母親の産後休業中)に、最長4週間(28日)まで取得できる休業制度。

出生後8週間以内であれば、2回に分けて取得できる。

労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中の就業(10日以下または10日を超える場合は80時間以下)も可能。

次は、出産前や育休中に支給してもらえる給付金などを解説してもらう。

出産前に知っておきたい子育てに関する給付金

「育休取得の際、金銭的な不安を抱く人は多いと思います。しかし、妊娠や出産に関する給付金はいくつかあるので、心配しすぎなくてもいいでしょう」

●妊婦健診費用の助成
妊娠が判明した後、住んでいる市区町村の役場に申請し、母子健康手帳の交付とともに妊婦健診のための補助券などを受け取ることができる。助成内容は市区町村によって異なるため、HPなどで確認しよう。

●出産育児一時金
2023年4月以降の出産の場合、子ども1人につき50万円(産科医療補償制度の対象とならない出産の場合は48万8000円)が支給される。

出産予定日の2カ月前から、医療機関・健康保険・市区町村役場などで申請できる。

(画像:イメージ)
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●出産手当金
母親が産前産後休業(産前の6週間(42日)と産後の8週間(56日)合わせて98日)を取得している間、健康保険から1日につき原則として賃金3分の2相当額が支給される。

1日当たりの支給額:
支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)

支給開始日の以前の加入が12カ月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使用して計算する。
(1)支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均額
(2)標準報酬月額の平均額(支給開始日が2019年4月1日以降の場合:30万円)

●育児休業給付金
1歳未満の子を養育するために育児休業を取得している間、支給される給付金。手続きは勤務先によって異なる。勤務先が行ってくれるところと、自身でハローワークに赴き手続きをしなければならないところがある。

支給額:
休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育休開始から181日目以降は50%)

休業開始時賃金日額とは、原則、育児休業開始前(産前産後休業を取得した方が育児休業を取得した場合は原則、産前産後休業開始前)6カ月間または当該休業を開始した日前の2年間に、完全な賃金月が6カ月に満たない場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上である賃金月6カ月の間に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金と3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く)の総額を180で除して得た額のこと。

ちなみに、支給額には上限と下限が定められており、育休を取得した日数を30日とすると以下のようになる(2023年7月31日までの額)。

給付率67%の場合:
支給上限額30万5319円、支給下限額5万3405円
給付率50%の場合:
支給上限額22万7850円、支給下限額3万9855円

●出生時育児休業給付金
2022年10月に育児・介護休業法の改正で、産後パパ育休が創設。この産後パパ育休を取得している間に支給されるため、原則男性を対象としている。

支給額:
休業開始時賃金日額(育児休業給付金と同様)×休業期間の日数(上限28日)×67%

休業開始時賃金日額の上限額は1万5190円(2023年7月31日までの額)となっているため、出生時育児休業給付金の支給上限額は、28日取得したとすると28万4964円になる。手続きの方法は、育児休業給付金と同様。

育児休業制度とそれに伴う給付金がわかったところで、後編では夫婦ともに育休を取得したらどのくらい支給されるのか、育休中に働いたら給付金は減るのか、社会保険料や税金はどうなるのかを解説してもらった。

高山一恵
ファイナンシャルプランナー。Money&You取締役。2005年に女性による女性のためのファイナンシャルプランニングオフィス・エフピーウーマン設立に参画。2015年から現職に就任。講演、執筆、個人マネー相談などを通じて、お金の知識を伝えるべく活動中。著書に『1日1分読むだけで身につくお金大全100(改訂版)』(自由国民社)など多数。

取材・文=有竹亮介(verb)
イラスト=さいとうひさし

プライムオンライン編集部
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