国内に多く生息してしまっている外来種。いま、福島県内で被害が拡大しているのがカミキリムシ。この異常事態に、外来種の根絶と侵入防止に専門家たち6人が集まり「外来カミキリバスターズ」を結成。本来の環境を守る戦いが始まる。

被害は拡大 異常事態

2021年に福島県郡山市で初めて確認された「サビイロクワカミキリ」。樹木医の安齋由香理さんは、中国など大陸から物流に潜り込んでやってきたと見ている。サビイロクワカミキリは、国内では福島だけで被害が出ていて、福島県の調査によると郡山市から県南を中心に19の市町村で被害を確認。

サビイロクワカミキリ 物流に潜り込み上陸か
サビイロクワカミキリ 物流に潜り込み上陸か
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これだけではない。いま福島県で被害が確認されているのは2種類で、もう一つが「ツヤハダゴマダラカミキリ」。樹木医・安齋さんは「中国の文献だと50種類以上の木を食べる記録がある」と話し、20の市町村に被害をもたらしていて、福島市や二本松市のほか、いわき市など浜通りでも確認される異常事態となっている。

ツヤハダゴマダラカミキリ 50種類以上の木を食べるとも
ツヤハダゴマダラカミキリ 50種類以上の木を食べるとも

幼虫による食害で木が枯れる

外来カミキリは、木に大量の卵を産み付け幼虫が木を食い荒らしてしまうという。
樹木医・安齋さんは「一本の木にたくさんの幼虫が入っているので、木が枯れてしまう。街路樹や公園の木が倒れた時に、ケガをすると一番問題」と倒木による人的被害を心配している。

木に大量の卵を産み付け幼虫が木を食い荒らす
木に大量の卵を産み付け幼虫が木を食い荒らす

この事態を食い止めるべく2023年5月に設立したのが…その名も「外来カミキリバスターズ」 外来種の根絶と侵入防止に、専門家たち6人が集まった。
外来カミキリバスターズでもある樹木医の安齋さんは「一匹のメスを逃がしただけでも、そこで500~1000の卵を産まれてしまうと、防除が追い付かない状態になってしまうので、本当に初動が大切」と話す。

外来カミキリバスターズで樹木医の安齋由香理さん
外来カミキリバスターズで樹木医の安齋由香理さん

新たな脅威が迫る

外来カミキリバスターズをつくった背景には、もう一匹の外来種の存在がある。それが「クビアカツヤカミキリ」

クビアカツヤカミキリ バラ科の木を好む 被害は福島県の隣県まで
クビアカツヤカミキリ バラ科の木を好む 被害は福島県の隣県まで

茨城県や栃木県など隣県まで被害が近づいていて、モモやサクラ、ウメといったバラ科の木を好んで食べるという。外来カミキリバスターズの安齋さんは「中にはかなりモモ畑を食い荒らされて、廃園に追い込まれた農家もいる」と話す。

モモ畑を食い荒らされ廃園に追い込まれた農家も
モモ畑を食い荒らされ廃園に追い込まれた農家も

県北を中心にモモの産地となっている福島県。また、三春滝桜などサクラの名所も多くあり、安齋さんは花見ができなくなく可能性も指摘する。
クビアカツヤカミキリから、農作物や自然・文化財をどう守っていくのか?外来カミキリバスターズができた大きな理由だ。

三春滝桜に代表されるように福島県には桜の名所が多い
三春滝桜に代表されるように福島県には桜の名所が多い

外来カミキリバスターズの安齋さんは「広く県民の皆さんに、このカミキリを知って頂いて、外来カミキリを見つける『目』を今年は増やしたい」と語る。外来カミキリから福島の財産を守るために、もし見つけたら外来カミキリバスターズや福島県の自然保護課に連絡してほしいと呼びかけている。

防除には初動が大切 見つけたら連絡を
防除には初動が大切 見つけたら連絡を

外来と在来の違い

外来カミキリは”生きている木”を食べる。それによって、木が枯れたり倒れたりする被害が出る。一方で、元々日本にいるカミキリムシはほとんどが”朽ち木”を食べるので、いわば「森のお掃除屋さん」と言えるんだそう。

在来種は「森のお掃除屋さん」と言われる
在来種は「森のお掃除屋さん」と言われる

福島県の調査によると、サビイロクワカミキリは26%が街路樹で、70%が農地や民家・造林地などで被害が出ているという。外来カミキリバスターズの安齋さんは、福島県の中通りの民家によく植えられている「イヌエンジュ」という木で多くの被害が出ていると話す。
またツヤハダゴマダラカミキリは、街路樹で33%、公園で21%と割合が多くなっている。
安齋さんは、福島県ではトチノキやカツラを中心に被害が出ていて、今後は果樹への被害も懸念しているという。

外来カミキリは街路樹や庭木にも
外来カミキリは街路樹や庭木にも

後手に回ると被害拡大

外来カミキリバスターズは「後手後手になると、被害が拡大し大きなお金がかかってしまう。今抑え込めるように行政の体制・予算作りが重要。外来カミキリを見つけたら外来カミキリバスターズや県の自然保護課に連絡してください」と呼びかけている。

「外来カミキリバスターズ」と検索すると問い合わせフォームへ
「外来カミキリバスターズ」と検索すると問い合わせフォームへ

外来種による危機的状況は他にも

福島県が作成した外来種ハンドブックには、28種類の外来種が掲載されている。農作物の食害や家屋で糞尿被害をもたらすハクビシンや、水草の減少やサルモネラ感染症の事例があるアカミミガメ。意外なのが植物で、園芸スイレンはため池などで大きく茂ってしまい、水生動物に影響を与える。さらに、オオキンケイギクといった綺麗な花も外来種だという。
生態系はもちろん、私たちの生活にも悪影響を与えうる外来種。まずは知ることで、「入れない」「捨てない」「広げない」ことを徹底することが大切だ。

「入れない」「捨てない」「広げない」を徹底することが大切
「入れない」「捨てない」「広げない」を徹底することが大切

(福島テレビ)

福島テレビ
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