2023年6月2日から静岡県で降った雨は24時間雨量が500mmに達した所もある。100年に一度より頻度が低い「まれな雨」との分析もある。病院が1.5m浸水したり、川の堤防が2年連続で決壊した。なぜ、こんなに大量の雨が降ったのか、気象予報士の解説だ。

1日で6月雨量の1.5倍が降った

水没した車から脱出する人(2023年6月2日・磐田市)
水没した車から脱出する人(2023年6月2日・磐田市)
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台風2号の北上に伴い、静岡県は6月2日から大雨となり、線状降水帯が4回発生した。

24時間で降った雨量は、山間部で400mmを超え、浜松市天竜区春野は500mmに達した。天竜や川根本町などは観測史上最大、井川や御殿場などは6月としては観測史上最大の雨量となった。
山間部だけでなく、平野部も浜松・静岡・富士が300mmを超え、浜松・静岡は観測史上最大だ。
たった1日で、6月1カ月に降る平年の雨の1.3~1.5倍の雨が降ったことになる。

紫色が「100年以上に一度」の雨が降ったエリア
紫色が「100年以上に一度」の雨が降ったエリア

防災科学技術研究所は、「大雨のまれさ」を分析している。観測された降水量が平均してどのくらいの期間に一度起こるかを、「2~5年に一度」「5~10年に一度」「10~30年に一度」「30~50年に一度」「50~100年に一度」「100年以上に一度」の6段階で分析している。
浜松市など県西部に3日午前3時までの24時間に降った雨は、そのエリアでは、「100年以上に一度」と分析している。“「100年に一度」よりも頻度がまれな雨”ということだ。

沼津市などを流れる黄瀬川が増水(6月2日)
沼津市などを流れる黄瀬川が増水(6月2日)

この雨で、県西部の磐田市・袋井市、それに県東部の沼津市には警戒レベル5の「緊急安全確保」が発令された。

病院が1.5m浸水 医療機器が水没

冠水した「きせがわ病院」の駐車場(6月2日)
冠水した「きせがわ病院」の駐車場(6月2日)

沼津市は5日現在で、約300棟の浸水被害を把握している。
近くの川があふれ浸水した病院もある。

浸水の跡を示す雨宮記者(6月5日)
浸水の跡を示す雨宮記者(6月5日)

雨宮 帆風 記者
沼津市にある「きせがわ病院」です。病院の1階は、リハビリを行うデイケア施設として普段は利用されています。最大で1m50cmの高さまで水が達したということで、壁には水が流れ込んだ跡が今も残されています

病院の内側から冠水の深さがわかる(6月2日)
病院の内側から冠水の深さがわかる(6月2日)

病院によると、2日午後5時ごろ、病院の横の川があふれて駐車場があっという間に冠水したそうだ。そして、病院の出入り口や窓から水が流れ込み、浸水は最大で1.5mに達したという。

医療機器やリハビリ用の機器に汚水や砂などが入り、洗っても消毒しても使えないもの、1/3以上は廃棄を決めたという。近所の支援もあり、7日の再開を予定している。

2年連続で堤防決壊 復旧工事の県「予想外」

磐田市では敷地川の堤防が決壊し、40棟余りが浸水被害を受けた。川の近くに住んでいた74歳の男性が、海岸で遺体で見つかった。

2年続けて堤防が決壊した敷地川
2年続けて堤防が決壊した敷地川

決壊した堤防は2022年9月の台風15号で決壊した場所で、土のうを積み上げる仮復旧工事が2022年10月に完了していた。

地元の自治会長
2度はあってはいけないという所で、仮復旧で本復旧に向けて準備をしている中でのこういう惨事だったので、地元の人たちは本当にがっかりしています

国土交通省などの視察(6月4日)
国土交通省などの視察(6月4日)

水の勢いで堤防の下が掘られて、堤防が壊れた「洗掘」とみられる。仮復旧工事を進めてきた県は、決壊は「予想外だった」と説明する。

県袋井土木事務所・榊原 正彦 所長
今回こういった形になってしまったことは、我々としても予想外というのが正直なところ。強度不足というよりも水の量が多かった、水の勢いが強かった

県は国土交通省の指導を受け、土のうの中身を重たいものにするなどして仮復旧工事を急いでいる。

台風の動きが遅く記録的な大雨に

なぜこれほどまでに雨量が増えたのか、小塚恵理子気象予報士の解説だ

小塚 恵理子 気象予報士
要因を天気図で解説します。2日に梅雨前線が停滞、少し離れたところに台風2号がありました。沖縄を離れ、北東方向に非常にゆっくり進んでいました。前線の北側には冷たくて乾いた空気が入ってきていて、そこへ台風から暖かくて湿った空気が流れ込むことで前線が活発化し、次から次へと積乱雲を発生させました

小塚恵理子 気象予報士
台風の動きが遅かったことがポイントで、風の流れがなかなか変わりませんでした。同じような場所に暖かく湿った空気の流れ込みが続いたため、前線の位置が変わりませんでした。このため同じ場所に雨雲ができ続けて、線状降水帯の発生が相次ぎました

たとえ、台風が上陸しなくても、台風のスピードや前線の動き次第では、100年に一度よりもまれな雨が降ってしまう。
これからの出水期に注目しなければいけないのは、台風進路だけではない。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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