広島の被爆者の間では、G7広島サミットでの核軍縮の議論について、複雑な思いが広がっている。それは発表された「広島ビジョン」で核抑止論が肯定され、失望感が広がる一方で、首脳らの原爆資料館視察で、ある程度は被爆の実相を訴えることはできたというプラスとマイナスの両面があるからだ。

「広島ビジョン」は核兵器の防衛や戦争防止の役割を肯定

G7広島サミットで発表された「広島ビジョン」では、「核戦争は決して戦われてはならないことを確認する」としたうえで、「核兵器は、存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、 侵略を抑止し、戦争を防止すべき」として、核抑止論を肯定した形となっている。

サミット参加の各国首脳
サミット参加の各国首脳
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これについて、5日に開かれた広島県の被爆者団体、県被団協の定期総会では、「期待とはかけ離れたものとなった」と失望感が広がった。

定期総会には、県被団協の会員の被爆者や被爆2世など約50人が出席。
県被団協はG7広島サミットで、核兵器の削減や先制不使用が成果文書に盛り込まれることを期待していた。

その一方でG7の首脳が原爆資料館の視察後に記帳したメッセージなどにも着目し、被爆者から話を聞き、核兵器がもたらす悲惨で、甚大な破壊を目にしたことで「核兵器は使えるものではない」との認識に至ったと推測できると評価した。

バイデン米大統領は、「世界から核兵器を最終的に、そして、永久になくせる日に向けて、共に進んでいきましょう。信念を貫きましょう!」と記帳している。

献花するG7首脳ら
献花するG7首脳ら

県被団協 箕牧智之理事長:
5年先10年先に、あのときの広島サミットはいろいろ批判もあったが、結果としては良かった、という話になれば一番いいのだが…と思う

事実上、アメリカの核の傘に守られている日本は「核兵器禁止条約」に参加していないが、被爆者団体などは政府に対し、条約への参加を求めている。

8月6日平和記念式典 4年ぶりにもとの規模で

一方、広島市は約2カ月後となった8月6日の平和記念式典を4年ぶりにもとの規模に戻すことになった。

ここ3年は新型コロナの影響で縮小しての開催となっていたが、今年2023年は平和公園の式場に昨年2022年の倍近い7000席、広島国際会議場に屋内席2200席を用意し、コロナ禍前とほぼ同規模に戻る。

また、広島市はロシアのウクライナ侵攻が続いていることを理由に、昨年2022年同様、平和記念式典にロシアとベラルーシを招待しない方針。式典には、例年、各国首脳や駐日大使などを招待している。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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