3日間の日程を終え、閉幕したG7広島サミット。被爆地・広島に核保有国を含むG7首脳らが集結し、被爆の実相に触れた。核軍縮などの重要課題が議論されたが、その成果について被爆者からは批判の声も上がった。
「まだ本当の平和につながっていない」
15歳のときに被爆した切明千枝子さん(93)。テレビ画面から報じられるG7広島サミットの様子を、真剣なまなざしで見守っていた。
この記事の画像(6枚)切明千枝子さん:
たった3日間だったが、非常に重大な3日間だった。G7の首脳たちが広島で何を思ったか、何を考えたか、自分の国に帰ってどんな行動をするのかとても気になります。まだ本当の平和につながっていない。すべての国の人たちが平和を願い、戦争なんか二度としないという思いになってほしい。今のロシアとウクライナの戦争も早く終わってほしいです
「被爆者1人の話ではわからない」
一方、広島県原爆被害者団体協議会(県被団協)の箕牧智之理事長からは不満の声が…。各国首脳やゼレンスキー大統領と面会した被爆者が小倉桂子さん1人だったことへも言及した。
県被団協・箕牧智之 理事長:
G7首脳らが原爆資料館を見学した時間が短かったという不満がある。それに、被爆者1人の話ではその人の考えしかわからない。せめて2、3人くらいの話を聞かないと…。被爆者はみんな立場が違うんじゃけ。家族を亡くした者から、自分が大きな傷を負ったとかね。
ウクライナのゼレンスキー大統領はみんなに訴えたいから広島へ来られたんだと思います。それに応えないといけない
もう一つの県被団協、佐久間邦彦理事長は次のように語った。
県被団協・佐久間邦彦 理事長:
核兵器禁止条約について、G7の中でまず議論してほしいと、私たちは要望として出しました。それすらない。これは一番残念なことです。核軍縮はやっていかないといけない課題。それすらやろうとしない。本当にできるのかどうか
「何も新しいものはない、失敗だった」
19日に発表した文書「広島ビジョン」について、岸田首相は「核兵器のない世界の実現に向けたG7首脳の決意や行動を示す、歴史的なものになった」と強調したが、被爆者の期待に沿う内容ではなかったようだ。カナダ在住の被爆者、サーロー節子さん(91)からは怒りと失望に満ちた厳しい意見も聞かれた。サーローさんは13歳のとき、広島市で被爆。親族や多くの同窓生を亡くした。
サーロー節子さん:
広島ビジョンに何も新しいものはない。こういうことは何度もいろんなところで語られたこと。とにかく非常に失敗でした。核軍縮に関する市民と政府が、一緒になって前進させようという機運が生まれましたか?私はそれを感じていないのです
初めて被爆地で開催され、G7として初めて軍縮に焦点を当てたサミット。「核兵器のない世界」へ理想を掲げる岸田首相の声は届いたが、被爆者から悲痛な表情が消えることはなかった。G7広島サミットの成果が問われるのはこれからだ。
(テレビ新広島)