35年の歴史に幕を閉じる「須磨海浜水族園」。思い出がたくさんある方もいるだろう。最終日の「スマスイ」から、坂元龍斗キャスターが生中継でリポートする。

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坂元龍斗フィールドキャスター:
関西、特に神戸方面の方にはおなじみの“三角形の建物”、神戸市立須磨海浜水族園です。5月31日で閉園ということで、最終日のきょう、たくさんの人がいらっしゃっています。 「35年間ありがとう」という看板が掲げてありまして、少年たちもたくさん集まってくれました。

坂元龍斗フィールドキャスター:
1957年に前身の「須磨水族館」として開園し、1987年にリニューアルオープンして現在の「スマスイ」となりました。35年たって施設が老朽化していることもあり、新しい水族館を隣にオープンするにあたって、スマスイは一度閉じることになりました。新しい水族館は1年後にこの横にできます。
こちら「波の大水槽」というとても大きな水槽で、できた当時は“東洋一”と言われたそうです。ここでスマスイのスタッフの皆さんが、思い出を語るトークショーをやっていまして、ざっと見たところ500人ぐらい、ものすごい人が集まっています。

「スマスイ」35年の歩み そしてスマスイで働くただ1人の獣医師の思い

「スマスイ」の愛称で親しまれた、神戸市立須磨海浜水族園。開業から35年。5月31日が最後の一日。

来場者:
午前7時くらい(から並んでいる)。本当に最後なんで目に焼き付けておこうかと

来場者:
母との思い出が強くて。もう母は亡くなっているんですけど、小学校のとき一緒に来たなとか、震災後も一緒に来たなとか。時代ごとにたくさんの思い出があるので。ここで写真撮ったなとか

前身の「須磨水族館」から、1987年にリニューアルオープンした「スマスイ」。当時のニュース映像に残されているのは、“ウミガメのお引っ越し”。軽トラックに乗せ、新しい水槽に移動します。水量1200トンの「波の大水槽」は、当時“東洋一”と言われ、連日多くの人でにぎわった。

そんなスマスイに暗い影を落したのが阪神・淡路大震災。

1995年当時の記者リポート:
普段ならば市民の憩いの場所となっている水族館なんですけれど、現在こうやって布団が運び込まれまして、市民の避難場所となっています。1400匹のピラニアがいたんですけれど、全滅です

スマスイでも半数以上の生き物が死ぬなど、大きな被害が出た。しかしわずか3カ月で営業を再開。

子供からお年寄りまで幅広い世代から愛されてきたが、施設の老朽化に伴い、再整備が行われることが決定。2024年には新しい水族館としてリニューアルオープンする予定だが、「スマスイ」としては5月31日に閉館を迎えることになった。

須磨海浜水族園 獣医 毛塚千穂さん:
おはようございます

スマスイで暮らす約8000匹の生き物たちの命を一手に引き受けてきたのが、館でただ1人の獣医師・毛塚千穂さんだ。

須磨海浜水族園 獣医 毛塚千穂さん:
きょうはお祭りだなと思ってきました

Q.お客さんの姿見るのも?

須磨海浜水族園 獣医 毛塚千穂さん:
しばらく見られないので、じっくり目に焼き付けようと思います

毛塚さんは2011年にスマスイに入社。しかし入社4日後に20年務めていたベテラン獣医が退職。右も左も分からぬまま始まったスマスイただ1人の獣医としての日々。厳しさもたくさん味わってきた。

須磨海浜水族園 獣医 毛塚千穂さん:
他の施設の獣医さんとか、飼育員さんの助言を聞きながら、かなり必死で。あるイルカが死んだときは、イルカの治療プールって、イルカライブを行っているプールの真裏にあって、客観的にこういう現場なんだなって。まだ(入って)2年目か3年目の時だった。たくさんの経験をさせていただきましたね

たくさんの生き物の命と向き合う中で、毛塚さん自身も成長を重ね、今ではスマスイのみんなから頼りにされる獣医になった。

飼育員:
あー。頑張れ頑張れ

須磨海浜水族園 獣医 毛塚千穂さん:
この個体たちは、病気というか、健康チェックの頻度が高い要注意個体です。体調崩さないようにしっかり診ていきます

生き物の多くはリニューアルまでの間、バックヤードや別の水族館で暮らし、それまでの間、生き物の健康を守るのも毛塚さんの大切な仕事だ。

須磨海浜水族園 獣医 毛塚千穂さん:
足の裏に“しりゅう”っていう、たこみたいなものができた子がいて、それを毎日交換しています。ペンギンの足の裏は柔らかいので、ばい菌が入ると病気になってしまう。施設自体が変わって寂しい気持ちがある方もいると思うんですけど、そこで(新しい施設で)同じ動物が元気に生きてるんだなって安心してもらえたらなと

5月31日、「スマスイ」最後のミーティングでは…

スタッフ:
おはようございます。獣医お願いします

須磨海浜水族園 獣医 毛塚千穂さん:
朝、ペンギンの血液検査と足の検査があります

スマスイにとって特別な一日でも、毛塚さんの仕事は変わらない。いつも通り、多くの人に笑顔を届けてくれる大切な生き物たちと向き合う。

スマスイ最終日に訪れた家族:
コロナ禍もあって、なかなか来れなくて
お母さん、カメもおる。カメもおった、ほら

須磨海浜水族園 獣医 毛塚千穂さん:
水族園は“生き物”のようなものだなと思っていて、お客様も時代もどんどん変わっていく中で、変化していく。「スマスイ」は本当に愛されて愛されて、きょうという生涯を終える日に至っている。獣医師って人と生き物をつなぐ仕事。スマスイって人と人とを、ものすごくつなげてくれる場所で、「ありがとう」って言いたいです

35年にわたってこの場所を支えてきた人たちの思いは、2024年に誕生する新施設へと引き継がれていく。

スマスイに寄せられた たくさんの「ありがとう」

坂元龍斗フィールドキャスター:
再び中継です。スタッフの方が思い出を語るトークショーが続いていまして、すごい熱気で、歓声が上がったりして、皆さん楽しそうに話を聞いています。本館の3階にメッセージがたくさん寄せられていまして、その数なんと1万枚。「ありがとうございます」という言葉が、本当にたくさんあります。メッセージの中身に注目しますと、どうやら小さい時に遠足などで来て、お子さんが生まれた後に今度は子供を連れてきてということで、「ずっとお世話になっています。ありがとうございます」というメッセージが非常に多かったです

1年後オープンの“新しい水族館”はホテル会社が運営 目玉は“シャチ”

坂元龍斗フィールドキャスター:
スマスイは閉館しまして、新しい水族館「神戸須磨シーワールド」が1年後の6月にオープン予定です。新しい水族館を運営するのは、元々ホテルを運営している会社だということで、水族館の隣にホテルができたり、ホテルの室内に水槽ができたり、水族館とのコラボがされるということです。スマスイにいる生き物の9割が新しい水族館に引っ越すということで、引っ越しまでの間、獣医の手塚さんがしっかり体調管理をされるということです。新しい水族館には目玉として“シャチ”がやって来る予定で、そうなると西日本で唯一シャチがいる水族館になるということです。 2024年6月に新しくオープンしますので、ぜひ見にいってください。

営業最終日のスマスイは大変な熱気に包まれていた。

(関西テレビ「newsランナー」2023年5月31日放送)

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