新緑の5月になったが、多くの雪が残っている場所が福井にある。日本百名山の1つ、大野市の「荒島岳」だ。しかも、雪解けの時期にしか見られない巨大な“雪の芸術”が出現するという。期間限定の自然美を求めて、登山経験3回の福井テレビ・田島嘉晃アナウンサーがアタックした。
険しい道の先に広がる「絶景」
JR福井駅から車で1時間半余り。大野市にある「荒島岳」の南方に位置する下山エリアに到着した。
この記事の画像(15枚)田島嘉晃アナウンサー:
季節は4月下旬、新緑の季節になりました。最高気温は28度で、周辺には雪はありません。果たしてこの先、雪は待っているのでしょうか
気温が上がっても残っている雪を「雪渓(せっけい」と呼ぶ。
案内してくれたのは、毎年雪渓を見に訪れる大野市の松田靖彦さん(64)。筋金入りのクライマーで、標高7,556メートルの難峰「ミニヤコンカ(中国)」をはじめ、ヒマラヤ山脈に属する「ガネッシュ五峰(ネパール)」など、世界有数の山々にアタックしている。
田島嘉晃アナウンサー:
雪はありますか?
松田靖彦さん:
2023年は、この10年で2番目くらいに少ない
田島嘉晃アナウンサー:
見られる期間は?
松田靖彦さん:
あと1カ月くらい
今回目指すのは標高約500メートル。松田さんによると「雪崩の巣」が目的地だという。解けた雪は雪崩となって一定に集まり、夏まで残り続ける。歩き始めて約30分。山肌に雪の姿が現れ始めた。
田島嘉晃アナウンサー:
ちょっと雪が見えてきました!本当にあった、雪!すごい、奥までずっと雪が積もっていますね
松田靖彦さん:
雪渓のところに滝がある。山の上では滝が扇状に広がっていて、そこで解けた雪が全部一点に集まる
本物の雪を見つけたことで、一気に気持ちが高ぶった。登山を続けると、次に発見したのは透き通った雪解け水だ。周囲にも多くの雪が残っていて、ひんやりと涼しく感じるようになってきた。
雪で滑らないよう慎重に歩みを進めると、雪解け水が小さな川を作り、行く手を遮っていた。目的地はこの先。松田さんは「歩いてこの川を渡る」と余裕の表情を浮かべた。雪解け水のため、水温は極めて低い。足を入れると、突き刺すような痛みが襲ってきた。
田島嘉晃アナウンサー:
冷たい!待って待って!耐えられない…。進めない、泣きそう…
何度かためらったが、気合を入れて一気に渡り切った。あまりの冷たさに、しばらく動けなくなってしまった。しかし、絶叫の後には、心を奪われる「絶景」が待っていた。1時間かけて目的地に到着すると、一面白銀の世界が広がっていた。
若葉が顔を出すこの季節には雪解けが進み、巨大な雪の下では、流れ落ちる水との間に巨大アーチ状の空間が生まれていた。この時期にしか見られない“雪の芸術”だ。白い雪と、緑の若葉のコントラストも、この時期ならではの貴重な光景だ。
松田靖彦さん:
地上は夏のように暑いのに、ここには多くの雪があるのがいい
険しい道を登り切った人だけが見られる自然の美しさ。登山の疲れを忘れさせるほどの「最高の光景」を思う存分堪能した。
(福井テレビ)