鳥取・倉吉市のウイスキーメーカーが3月、クラフトビールを新たに発売した。ウイスキーづくりの技術を生かしながら、異なるジャンルの商品開発への挑戦だ。背景には、若い世代を中心に進む「アルコール離れ」があった。
酒類業界での生き残りをかけた取り組みを取材した。

老舗酒造の生き残りをかけた挑戦

ラベルには、力強い書体で「倉吉」の文字。4月24日に発売された「マツイビール倉吉」は、すっきりとした飲み口のクラフトビールだ。

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取材した本田航太記者は、「フルーティーでさっぱりとしたキレを感じる」と試飲した印象を語った。

このビールをつくったのは、倉吉市の「松井酒造」だ。110年余りの歴史を持ち、ウイスキーや焼酎を製造・販売している。

松井酒造・野島崇弘さん:
まだ試行錯誤、分からないところも多々ありますので

ウイスキーや焼酎など蒸留酒づくりを手がけてきた松井酒造が、醸造酒であるクラフトビールづくりに取り組んだ。その狙いを聞くと…。

松井酒造・野島崇弘さん:
近年、若い人のお酒離れもありますので、そういった方でも「これなら飲んでみようかな」と思えるものを製品化していく。既存のお客さまのみならず、なじみのない方にも「おいしい」といってもらえるように

若者を中心にアルコール離れが進む中、新たなターゲットの開拓を狙ったそうだ。国内の酒類の市場は、1999年をピークに徐々に縮小。松井酒造の主力商品・ウイスキーも、ピークの1980年代と比べると、出荷量は半分以下にまで減少している。

こうした中、縮小する酒類市場の中で近年広がりを見せているのが「クラフトビール」。小規模の醸造所でつくられる、いわゆる「地ビール」だ。

来店した人:
日本酒より飲みやすい。旅行に来ている者からしたら、地元のクラフトビールを飲んでみたい気持ちになる。どんな味なのかなと

来店した人:
普通のビールよりも、クラフトビールの方が味がしっかりしていて、お酒そのものと感じる。ごはんと一緒にというより、ビールを楽しむという感じ。ゆっくりくつろぎながら、ぜいたくな感じもありますよね

「家飲み」需要を追い風に…

クラフトビールは、小規模な装置で少量だけつくられるビールだ。工芸品のように、醸造する職人のこだわりによる「プレミアム感」が人気で、製造免許の件数が20年間で倍増、全国で400件を超えるなどブームになっている。

松井酒造も2020年に製造免許を取得し、クラフトビール市場に参入した。

松井酒造・野島崇弘さん:
缶であれば手に取りやすいし、「家飲み」需要にも期待して作った。総合酒類メーカーとして、全酒類の網羅を目指したい

「マツイビール倉吉」は、鳥取県内のスーパーなどに、年間1万ケースの出荷を見込む。コロナ禍で高まった「家飲み」需要を追い風に、ウイスキーとは異なるジャンルで成長を図り、アルコール離れの中、生き残りを狙う。

(TSKさんいん中央テレビ)

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