「古市憲寿のエンタメ社会学」。今回は俳優・山田裕貴さんに話を聞きました。
明るく元気なイメージの山田裕貴さん。しかし、古市のインタビューで見えてきたのは、孤独と葛藤を抱え、もがき続ける意外な一面でした。

自分で自分にプレッシャーを…

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山田裕貴(以下、山田):僕はものすごくネガティブだから、自分で自分に言ってプレッシャーかけてるんですよ。「俺こうなるから!」って…。
古市憲寿(以下、古市):ちなみに今は何て言ってプレッシャーかけてるんですか?
山田:大河やらせてもらったり、主演ドラマやらせてもらったり、やらせてもらってる数が多い分、クオリティーを落としたくないから、「全部いい」って思ってもらえるように、「力抜くな」って思ってます。
古市:大変じゃないですか?
山田:大変っすね。

俳優を目指した理由「いろんな心を知れると思ったから」

―最近の活躍についてー

山田:「山田くんにやってほしいんですよね」って言われた時の方が燃えるというか。それを引き受けていくと、「あれ、これ重なってるね」が、ずっと5年ぐらい続いてるみたいな感じ。
古市:結果的にハマり役も増えて、今回の東京リベンジャーズも前作ですごい話題になりましたけど、ほんとドラケンくんみたいですね。

人気漫画を実写化した映画「東京リベンジャーズ」で、「東京卍會」の副総長・ドラケンを演じた山田さん。先月、続編となる「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-」が公開され、さらに多くのファンを生んでいます。

古市:ドラケンってその、「東卍の良心」と言われていて、その心根の優しさみたいなものが、すごい山田さんとマッチしてるなと。
山田:なんかそこは、人間として僕が大事に生きてる部分だったので…。オカンが観た時に「あんたみたいな人だね」って言ってたのが、なんか面白かったですけどね(笑)。
古市:そういう感想だったんですね、お母さまは。
山田:はい。小さい頃から「何のために生きてるんだろう?」みたいなことを考える子だったので、そういう、心を見つめているみたいなことをたぶん親は見てきたんでしょうね。「人を思う心を持て」っていうこのドラケンにすごく縁を感じるというか。
俳優やりたいって思ったのは、僕、心理学に興味があって、俳優さんならいろんな人の人生を疑似体験できるから、いろんな心を知れるのかと思ったんです。

古市:なんで人の心にそんな興味を?
山田:父親がプロ野球の世界にいる人で、家にあんまりいないっていう状況で。
古市:あーなるほど。
山田:とても厳しい父親で何をやるにしても「自分で考えろ」って言う人だったんで、さみしいって言えなくて。
古市:さみしかったけど言えない。
山田:子供ながら受け止めてたんですけど、すごいそこが溜まっていって。世界に自分が干渉してるって思わないと、生きてる心地がしなくて。たぶんすべては寂しかったんだなっていう。
古市:あー、根っこにさみしさがあって。
山田:誰かに「あれ良かったよ」とか言われることが、やっぱり今でもいちばん喜びだし。
でも、今になって「自分で考えろ」っていうことは、どんな瞬間も自分の選択だから、まぁ、さみしかったけど、ある意味よかったなってすごく思ってて。

本当は弱いから…“俳優王に俺はなる”

古市:挫折とかは?
山田:ありますよ。「やりたい」って言って自分で始めた野球を中学でやめてしまったんです。高校になって自分が通ってた高校が甲子園に出て「あいつはあきらめなかったから、甲子園の土を踏んでいる。俺はあきらめたからスタンドで制服で応援してる」って思ったら、見てるだけで涙止まらなくて、もうなんか一回死んだ感覚になって。
そこで、自分でやるって決めたことは最後までやり続けろっていう親の言葉を思い出して、「次やるって決めたことはマジで最後までやり続けよう」と。それが、俳優という仕事だったっていう。

古市:じゃあ、俳優はもう絶対にやめない…?
山田:って、決めたはずなんですけど。辛くて。今ようやく、顔をなんか見たことあるとか、名前知ってるとかになりましたけど、「この人のお芝居面白いな」とか「この人のお芝居すごいな」ってなって、「あの人のお芝居を映画館に観に行こう」とか思われたいなと…。それを達成するにはどうしたらいいのか、とか。自分で考えることをひたすらやってきたかもしれないですね。

古市:ONE PIECEが大好きなんですよね?
山田:「俺はなる」系好きですね。「海賊王に俺はなる」じゃないですけど。18歳ぐらいの時にあのバイトしてたときに、ネームプレートに「俳優王に俺はなる」って書いてましたよ(笑)。「裕貴って、なんか実写版少年ジャンプみたいだな」みたいなことを言ってくれた人がいて。
たぶん、僕は実はネガティブだから、外ではそういようとして頑張ってる姿が、なんか主人公に見えるのか…。

古市:自分を奮い立たせるための、少年ジャンプ的な生き方というか?
山田:そうなんすよ。本当は弱いから。

どこまでもまっすぐで熱い山田さん。ここで、古市らしいひねくれた質問を投げかけます。

古市:感情表現が豊かだから、落ち込んだ時とかもすごいメンタルがアップダウンするんですか?
山田:そうなんですよ。もう、どん底まで落ちるんで。しんどいっすね。
古市:じゃあもう、早いこと地球とか終わって欲しいですか?
山田:それが…地球は救いたいんですよね(笑)。
古市:地球は…そうか、少年ジャンプだから、地球は救いたい。
山田:だから、人がどう、より良く生きられるかみたいなことを、メッセージとして残していくのも使命なのかなとか思ったりもするんです。それをするには、やっぱりたくさんの人に知ってもらわなきゃいけないし。
なんか自分だけ幸せなの一番さみしい。僕に関わる人がなんか幸せであればいいし。関わる人が「あいつといてよかったな」って思える人間であればいいかなっていうのは思います。

(めざまし8「エンタメ社会学」5月1日放送)