20人が死亡、今も6人が行方不明。北海道・知床半島沖で遊覧船が沈没した事故から1年が経過した。この事故は全国の遊覧船業者に多大な影響を及ぼした。福井・坂井市の遊覧船会社の売り上げは、コロナ禍前の7割に減少し、回復の見込みは立っていない。
「いかに信頼してもらえるのか」。厳しい基準を突き付けられる運航会社の今を取材した。

乗客数は「コロナ禍前の7割」

坂井市の東尋坊は柱状の岩が約1kmにわたって広がり、国の名勝と天然記念物に指定されている。毎年、観光客入込客数は県内トップ10入りする、福井を代表する観光地となっている。

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「東尋坊観光遊覧船株式会社」は東尋坊周辺の海を運航する遊覧船事業を手掛けている。来年で創業50年を迎えるが、創業以来事故は一度も起こしたことはない。
ただ阪本浩三社長によると、知床半島沖での沈没事故以来、遊覧船に対する世間の目は厳しくなったと話す。

東尋坊観光遊覧船会社・阪本浩三社長:
事故後、客からは運航基準は大丈夫なのか、きょうの風は何メートルなのかなどを聞かれる機会が増えた。沈没しないかと聞く客すらいた。安全に対する捉え方が変わってきた

この会社では4隻の遊覧船を所有しているが、必ず2隻同時に運航するようにしている。万が一、1隻にトラブルが生じた場合、もう1隻がすぐに救助に向かうためだ。

遊覧船の周遊時間は約30分間。年間10万人程度が遊覧船に乗船している。事故後は安全対策を徹底したが、乗客数はコロナ禍前の約7割と大きな落ち込みが続いている。修学旅行に来る生徒たちは乗客の定番だったが、一気に800人がキャンセルした月もあった。

“安心して乗ってもらう”ための取り組み

阪本社長は「信頼回復」を第一に掲げ、新しい手を打ち続けている。

東尋坊観光遊覧船会社・阪本浩三社長:
安全運航の取り組みを知ってもらおうとホームページで紹介している。救命設備、緊急時の通信手段、損害賠償保険なども表示している

このほか、動画投稿サイト「YouTube」で年に5回実施される安全点検の様子も公開している。

東尋坊観光遊覧船会社・阪本浩三社長:
広く知ってもらい、安心して乗ってもらうための取り組み。座礁して船底から水が入って来た時、水を吸い上げる設備も導入した。万が一に備えて訓練している

取材したのは、かき入れ時となるゴールデンウイークの直前。安全運航に向けて、気を引き締めていた。

東尋坊観光遊覧船会社・阪本浩三社長:
客の安全意識は高い。しっかり安全対策を行っているので、1年で一番忙しいゴールデンウイークに安心してたくさんの客に乗ってもらいたい

福井にはこのほか3つの運航会社がある。福井県南部の美浜町にある「美浜町レイクセンター」では、運航している船のほか、救助用の船を1隻常駐させている。さらに地元の造船会社や漁業組合と「災害救助協定」を結び、緊急時に連携して救助できる体制を整えている。

(福井テレビ)

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