自民「4勝1敗」後の玉木発言の意味
先週末の衆参補欠選挙で自民党は接戦ながら4勝1敗と勝ち越した。岸田文雄首相は遅くとも年内には解散するとの声がもっぱらだが、補選後に僕が気になったのは、玉木雄一郎・国民民主党代表の「維新は我々に最も近い」という発言だった。
補選と一緒に行われた統一地方選でも維新は議席を増やしたのだが、実は国民も東京で議席を倍増させている。両党がもし都市部で連携したら化学反応を起こす可能性があると思うのだ。
玉木氏は25日の会見で立憲民主党との選挙協力について「政策で一致しない政党と選挙のために候補者を一本化することは野合と見られる」と述べて、選挙区調整についても否定的な考えを示した。
この記事の画像(4枚)一方で玉木氏は維新については「国会の中での共闘はあるが選挙ではライバル」としたものの、「憲法、安保、エネルギーでは我々と最も近い政党だ」とエールを送った。
国民はもともと民主党から立憲と共に枝分かれしたのだが、最近は玉木氏が自民寄り、前原誠司元外相が維新寄りと言われている。だが玉木氏のこの発言は、「維新とは選挙協力はしないが選挙区調整くらいならできるし、政権取れるなら連立は組める」という意味だと僕は理解した。
すでに維新と国民は連携している
実際に昨年の参院選の京都選挙区で国民の前原氏は維新候補を応援し、次期衆院選で維新は前原氏の小選挙区で候補者を立てないと言われている。京都新聞によると京都府議会と市議会では維新、国民、地域政党の京都党の3党が統一会派を組み自民に次ぐ第2勢力になるらしい。
京都は維新と国民の連携の「モデル都市」になるのだろうか。
補選の自民「4勝1敗」は、「首相の求心力が高まり、解散判断に追い風」(4/28付産経)なのか、「手放しで喜べない薄氷の勝利」(同日付朝日)なのか、評価は分かれている。岸田氏はいつ解散を打つのか。
維新はすべての小選挙区に候補を立てると豪語しており、現在ネットで候補者をすごい勢いで募集しているが実際に立てるのはなかなか大変だ。そこにもし国民が候補者調整という「ゆるい」連携を持ちかけたら、維新にとっては悪くない話だし、立憲だけでなくむしろ自民公明の与党にとっては脅威だろう。
岸田さんは風を読み間違えるな
維新と国民の連携で最大のネックは国民の支持母体の民間労組が維新の労働政策とは全く合わないところだ。だが安保やエネルギーなど国の根幹の政策に比べ、労働政策というのはそれほど譲れないものなのか。僕は妥協点を見いだせる余地があるような気がする。
もし維新と国民が連携して自民を脅かすような存在になったら、立憲の右派や自民の左派が維新・国民グループに合流するという事もありうる。つまり2大政党制に向けた政界再編が起こる可能性があるのだ。
僕はそうなった方が日本にとっていいのではないかと思っている。理由は、
①2大政党制でないと有権者が政権選択できない
②自民も立憲も左右どちらかが出て行った方がわかりやすい
③維新の勢いは今の政治の閉塞状況を変えられるかも
の3点だ。
維新の藤田文武幹事長は24日の会見で「急きょ解散となると問答無用で立てるところは立てる」と述べた。これは「ウチはまだ体制が整ってないから今解散するなよ。でももし自民がケンカ売るなら、こっちも関西の公明党の選挙区に全部候補者を立てるからな」という脅しだ。
岸田文雄首相の選択肢は2つ、維新を叩きたいなら早期解散、公明を守りたいなら早くとも年末解散くらいまでは待つ。だが自民がもし維新を敵と認定するなら解散はなるべく早くした方がいいと思う。風を読み間違えてはいけない。
【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】