JR東海の悲願 リニア中央新幹線は、静岡県内で工事に入れず開業の目途が立たない。その静岡県で生まれた新社長が、川勝知事と初めて面会した。新社長は「静岡に愛着がある」と話し、懇談はなごやかな雰囲気だったという。リニアのカギを握る2人は、信頼関係を築けるだろうか。

JR新社長が工事への協力を要請

川勝知事(左端)を訪れた丹羽社長(右端)
川勝知事(左端)を訪れた丹羽社長(右端)
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2023年4月12日 静岡県庁知事室を訪れたのは、4月に就任したばかりのJR東海の丹羽俊介社長と、前の社長の金子慎会長だ。

川勝知事
ああ、どうも。ようこそ、お越し頂きまして恐縮でございます

JR東海・金子会長
社長の交代で挨拶にまいりました

JR東海・丹羽社長
丹羽でございます。どうぞよろしくお願い致します

リニア新幹線の山梨実験線
リニア新幹線の山梨実験線

リニア新幹線について、静岡県は大井川の水資源や南アルプスの生態系に影響があるとして着工を認めておらず、丹羽社長は就任後の会見で「静岡工区のメドがたたず、2027年の開業は困難」と話していた。

県庁知事室での懇談
県庁知事室での懇談

面会は非公開で30分ほど行われ、丹羽社長はリニアの早期開業に向けて川勝知事に工事への協力を求めたということだ。

静岡生まれの新社長に知事も好感

初面会の後、2人は取材に応じた。

JR東海・丹羽俊介社長
地域の方々と丁寧に誠心誠意、双方向のコミュニケーションをとらせて頂くことによりまして、懸念を解消していきたい。それを踏まえて南アルプストンネル静岡工区の早期着工に、どうかご理解ご協力を頂きたいという旨を申し上げました

川勝知事
ともかく「科学的 工学的にやることが大切だ」ということにおきましては、合意したわけですね。合意したというほどでもありませんでしたけど、共通理解であることがよくわかった

丹羽社長は愛知県出身だが、母親の里帰り出産で現在の浜松市北区三ケ日町で生まれたそうだ。静岡県内で勤務した経験もあり、川勝知事との面会では「静岡県に愛着がある」と話し、知事も面会の後で「いい感じで会話が進んだ」と話していた。

「田代ダム案」流域市町と県でなぜ対応が違う?

このリニア工事での大井川の水問題をめぐっては、静岡県外に流出する水を戻す案として、田代ダムの取水を抑えることで、流出する量と相殺する案が話し合われている。

JR東海の田代ダム案をめぐる流域市町と県の対応
JR東海の田代ダム案をめぐる流域市町と県の対応

島田市など大井川利水関係協議会のメンバーの市町は、JR東海がダムを管理する東京電力と協議を始めることに賛成した。
一方で、県は了承したものの、前提条件となる文言の修正を求めている。
流域市町と県の対応がわかれているのはなぜだろうか。
大井川利水関係協議会に参加する牧之原市の市長を、3期12年務めた西原茂樹氏に聞いた。

大井川水系の田代ダム(静岡市)
大井川水系の田代ダム(静岡市)

西原茂樹氏(元牧之原市長)
田代ダムは10年に一度 水利権の更新がある。水利権は従来、治水と利水の2つだったが、それに環境保全が入ってきて、年4回ほどウグイやアユの生息を保証するという形で、水を大井川に流す水利権の更新をやってきた。
JR東海は田代ダム案を「水利権に関係ない」としているが、県としても水利権の更新が2025年にあるので、そこにくさびを打っておきたいという思いがある。
JRとしてはそれ(2025年の水利権更新)には触れたくない、下流域の市町もリニア工事に限って田代ダムの水の抑制をしてもらえばいいのだけれど、そこで県とJRと市町があわないのだと思う

周辺市町も田代ダム案に期待を寄せる中で、どのように解決に向かっていくべきなのだろうか。

元牧之原市長・西原茂樹氏
元牧之原市長・西原茂樹氏

西原茂樹氏(元牧之原市長)
リニア工事で流出した水を田代ダムで戻すというが、そもそも「これは静岡県の水、これは山梨県の水」と色をつけて分けた例は全国でもない。JRにとってとても難解な問題なので、流域市町がひとつの判断を出して、県もその方向にそうと思うので、流域市町の判断をきちんと進めることがとても大事だと思う

「静岡市のかかわり方が重要になる」

大井川
大井川

大井川利水関係協議会の会員となっている流域の市町は島田市・焼津市・藤枝市・牧之原市・御前崎市・菊川市・掛川市・袋井市・吉田町・川根本町の10市町だ。

南アルプスを水源とする大井川は、上流部は静岡市の山間部を流れるが、静岡市は“利水”の協議会には入っていない。たが、リニア工区は静岡市にある。

県庁を訪れた静岡市の難波新市長(12日)
県庁を訪れた静岡市の難波新市長(12日)

その静岡市の新市長に、静岡県の元副知事(リニア担当)で国土交通省出身の難波喬司氏が就任した。

西原茂樹氏(元牧之原市長)
静岡市のかかわり方はとても重要になってくる。今まで10市町が水の問題で知事と対応してきた。静岡市は入っていない。でも一番大きな流域をもつのは静岡市だ。静岡市が10市町と一緒になって大井川の水をどうするか考える。難波氏は(副知事時代にリニア担当で)専門でもあるので、南アルプスの生態系だけでなく、水問題も静岡市がかかわっていけば、難波氏は知事とも関係性ができているから、一気にいい方向に進めば良いと思う

リニア問題のキーパーソンたち
リニア問題のキーパーソンたち

JR東海と、静岡工区のある静岡市の市長。
2人のトップ交代がリニア問題にどんな影響を与えるか、注目だ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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