新年度のスタートとともに、子育て世帯を応援する新たな取り組みが始まっている。人口減少に歯止めをかける「特効薬」が見いだせない中、山陰両県の自治体では、子育て世帯の支援策を拡充する動きも広がっている。地方版の「異次元」の子育て支援策を取材した。

保護者にうれしい“入学祝い”

新学期を迎え、入学式がピークを迎えた4月11日。島根・奥出雲町の横田小学校でも入学式が行われ、23人の新1年生を迎えた。

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新1年生は「勉強が楽しみ」、「剣道をがんばりたい」、「友達100人作りたい。鬼ごっごとか、かくれんぼとかしたい」など、これから始まる小学校生活にワクワクが隠しきれない様子だ。

TSKさんいん中央テレビ・福村翔平記者:
胸を躍らせているのは新1年生だけではありません。その保護者にはうれしい入学祝いが渡されています

入学式の前、控室に集まったのは新1年生の保護者。その一人一人に、奥出雲町の職員が何かを手渡していた。

実は、町からの「入学祝い」。奥出雲町は2023年度から、子育て世帯を支援するため、小学校入学時に町内で使える10万円分の商品券の支給を始めた。今年度は75世帯が支給の対象だ。

新入生の保護者(女性):
ありがたいと思っている。これから子どものためにいろいろ使いたい

新入生の保護者(男性):
子どもと同じ気持ちで、僕もワクワクしています。生活費として使わせてもらう。日用品だったり、おいしいもの食べたり

“奥出雲流”「異次元」の少子化対策

入学を迎えた子どもと同じように保護者もうれしくなるこのお祝い金。その狙いは…。

奥出雲町・糸原保町長:
少しでも子どもたちが増えていき、ここで暮らしているみなさんが暮らしやすく、子育てしやすい環境を作ることが急務

奥出雲町は、これまでにも子どもが生まれた世帯を対象に、出産祝い金として10万円分の商品券を支給するなど少子化対策に手を打ってきたが、出生数は年々減少。
2022年度に生まれた子どもの数は54人と、10年前に比べ約3割減少している。

こうした現状に歯止めをかけようと、2022年9月に就任した糸原町長は、国の無償化の対象にならない0歳から2歳児の保育料を完全無償化し、さらに次の一手として、この入学祝い金制度を導入した。

奥出雲町・糸原保町長:
中山間地域で子育てすることは大変だと思う。少しでもスピード感を持ってやることが大事

新入生の保護者:
子育てをするなら奥出雲町がいいなって、皆さんによく言われる。私もそう思う

子育て世代にうれしい支援金。“奥出雲流”「異次元」の少子化対策で人口減少に待ったをかける。

地方に広がる“少子高齢化への危機感”

一方、「異次元」の取り組みは鳥取・江府町でも行われている。
江府町もこれまで出産祝い金として、子どもが生まれた世帯に一律3万円を給付してきた。
そこへ新たに…。

江府町 住民生活課・中尾達治さん:
「出生祝い金」という制度で、この4月から1人目5万円、2人目10万円、3人目を50万円に引き上げています

「出生祝い金」をこの4月から大幅に増額。第3子以降には、50万円を支給する。
その背景にあるのは、やはり深刻な出生数の減少だ。

江府町 住民生活課・中尾達治さん:
(出生数が)年間1桁という年もある。出生数を上げたい。そして、江府町に住んでもらいたいという思いを込めました

近隣の市町村と比べても「異次元」の支給額。
今のところ申請した人はいないということだが、50万円という破格のお祝い金が少子化ストップにつながるのか、関心が集まっている。

少子高齢化への強い危機感。地方版「異次元」の子育て支援は他の市町村にも広がる勢いだ。

(TSKさんいん中央テレビ)

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