2022年に産まれた赤ちゃんの人数は、統計を取り始めて最低の79万9728人。止まらない少子化を受け、国は先週「異次元の少子化対策」の目玉として、児童手当の拡充を提言した。

少子化を食い止め、子育てをしやすくなる提言・政策なのかどうか、子育て支援に詳しい大阪教育大学の小崎恭弘教授に伺った。

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自民党案では第1子は月1万5000円、第2子は3万円、第3子は6万円の手当

“児童手当の拡充で子育てはしやすくなるのか”。政府はどういう対策を考えているのか。

政府が公表した「異次元の少子化対策」のたたき台。その目玉とされているのが児童手当だ。どういう対策なのか見ていくと…
●所得制限の撤廃
●支給期間を高校卒業まで延長
●そして児童手当の金額の見直し

など。

気になる手当の金額は、現時点の「政府案」ではまだ明らかになっていませんが、「自民党案」を見てみると第1子は月1万5000円、第2子は3万円、第3子は6万円。子どもが3人いれば、月におよそ10万円が支給されることになる。

大阪教育大学・小崎恭弘教授:
少子化対策としてはインパクトがあって評価できる部分があります。特に、所得制限を外すというのは、“すべての子どもを社会が支える”というメッセージになろうかと思います。金額として“3人で月10万円”ならとても大きいですが、本当に実現できるのかどうか…ですね

では街の人はどう思っているのか?児童手当の拡充で子育てはしやすくなるのか、聞いてみた。

37歳女性(子ども2人):
児童手当の金額が増えるからといって、子どもを産もうとは思わない、体力もいるし

32歳女性(子ども2人):
児童手当がいつ廃止されるか…不安

41歳女性(子ども1人):
少子化対策として、(1人目の子ども)月1万5000円では弱い

と言った声が聞かれた。

大阪教育大学・小崎恭弘教授:
制度がたくさんあっていいが複雑なのは確か。また「制度がコロコロ変わるのが不安」という意見は理解できます。
財政の面での不安定さ、制度の維持ができなくなる不安…、一過性にならないことが大切。安定的に続けられるかどうかがポイントだと思います

大阪大学大学院・安田洋祐教授:
ゼロからイチになる時が一番ハードルが高い。だから、1人目に月1万5千円支給ではちょっと心もとない。3人目の子どもに月6万円支給ではなく、「1人目から月6万円」の方がいいのではないか…とも思います。ただ、1人目から月6万円支給にすると、財政面の不安も出てくるかもしれません

少子化対策の最大の課題「1人目の壁」

少子化対策を考える上で小崎先生が、最も大きな課題と考えていることが、「1人目の壁」。これはどういう問題なのか。

「婚姻数」と「出生数」を示すグラフを見ると、それぞれグラフの曲線は同じような動きをしている。つまり、結婚する数と、子どもを産む数はほとんど同じということになる。

とすると、少子化対策のためには、まず“結婚する人”を増やすのが大切ということになる訳だ。

大阪教育大学・小崎恭弘教授:
まさにその通りです。結婚と出産はセットとも言えます。自治体が最近「婚活」に力を入れていますが、結婚することが子どもの増加に繋がる…という考え方は理解できますね

今回の児童手当の拡充も大事だが、そもそも結婚をする人を増やす、というところにお金を使うことも大切になりそうだ。

結婚しない理由のひとつに「経済的な不安」もあるが、景気状況と結婚・出産はどのように影響するのか?

大阪大学大学院・安田洋祐教授:
理想は政府がきちんとした経済対策を行って、景気が良くなっていくという見通しが立てば、結婚しやすくなるのではないでしょうか。短期的に「それは難しい」というのであれば、ある程度お金に余裕がある家庭に沢山子供を産んでもらう、という政策もありえるかもしれません。
実際に、フランスでは子どもを産めば産むほど、実質的に所得税を下げる、といった税制を導入しています

関西テレビ 加藤さゆりデスク:
今回、たたき台は出てきましたが、「そのお金はどこから出てくるのか?」という財源の話にまで踏み込んでいません。これから詰めていくことになるとは思うのですが。あと、この話が選挙前に出てきたので、“やってます!”アピールだけにならないようにして欲しいですし、(国の関係各所での)予算の取り合い合戦がどう行われていくか…に注目しています

この問題について視聴者からはこんな質問があがった。

Q:子育て世代、あるいは“独身の人たち”の意見はどのくらいリサーチしているのか?

大阪教育大学・小崎恭弘教授:
自治体は多くの市民の声を聴いているので、独身の方のご意見も聞いていないわけではないですが、機会はすこし少ないのかなと思います。
ただ、その独身の方々が結婚する、というハードルを乗り越えるところから、少子化対策がスタートしていると言えるのかもしれません

6月に予定されている「骨府の方針」にはたしてどこまで盛り込まれるのか。政府の少子化対策・子育てに対する本気度に注目したいところだ。

(関西テレビ「newsランナー」4月4日放送)

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