ポイントは「手間をかけずに無農薬」。大阪にいながら愛媛で大豆を育て、育てた大豆で「味噌づくり」。農作物の作られない耕作放棄地を有効活用し、ある家族が挑んだ1年がかりのSDGsな挑戦を追った。

雑草だらけの畑に豆まき

2022年6月、田園の広がる愛媛・西条市玉之江地区で田植えが進んでいた。

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傍らには、ぽっかりと雑草の生い茂る場所があった。農作物の作られない耕作放棄地だ。ここで無農薬で大豆を栽培し、収穫した大豆で味噌を作る挑戦が始まろうとしていた。

小西宏和さん:
農薬と化学肥料は使わない前提なので。なるべく循環できるようにしたい。ここの畑で全てが終わる状態に。畑でできた種をまたまくとか畑にある草を使ってそれが肥料になるとか

小西宏和さんは、大阪でオリジナルタオルやスーツ、ベビー用品などを展開するブランド・マエムキスーツを運営している。ブランドのコンセプトは「肌触り良く、環境にも良い、いのちが喜ぶものづくり」。

手掛ける製品は、廃棄される食品を原料に染め上げたりと、世代や環境をも超えた、自由な優しさが特徴だ。

作り手のいない荒れた畑は今は亡き祖父の土地で、子どもの頃は夏休みに遊びに来ていた思い出の場所。この場所をどうにかできないかと思ったのが発端だった。

小西宏和さん:
ぼくら基本的に大阪に住んでるというのもあるし、常に管理もできないし、でもそれをうまいこと次の世代にもつないでいこうと思ったらある程度無理のないようにやれる方法があるんじゃないかと思って。その実験というかチャレンジ

大阪に住みながら、手間をかけずに無農薬で大豆を栽培し、収穫した大豆で味噌を作る実験。果たして大豆は収穫できるのだろうか?いよいよ豆まきの日がやってきた。

小西宏和さん:
30cmおきくらいで穴を掘って、そこに2、3粒種を落とすっていうのを延々やっていけたらなと

地元の友人たちの手も借りて、相変わらず雑草だらけの畑にみんなで豆をまいていく。

参加した親子:
ちょっとよ。ちょっと。はいOKOK。次、次々

参加した人:
ほっといたら荒れてしまう農地に対して自分たちがちょっとでも何かできるんやったら。しかも大阪から来られてやから地元の者として何かしたいなという思いはあって

この日まいた大豆は25kg。無事に芽が出てくれることを願うばかりだ。

大豆が完成するまで

8月、夏の日差しを浴びて大豆も雑草もぐんぐん育っていた。小西さんの長男・青くんは真夏の農作業に少し退屈そうだ。

長男・青くん:
つまらない。子どもは子ども向けの所に行って楽しむ方がいいって思ったんですよ

それでも真剣に畑の手入れに取り組む両親の姿を見て、青くんもお手伝いに挑戦する。

長男・青くん:
ねえ、ぼくする~

母・緑さん:
しゃがんでしゃがんで。じゃあ、1本でもいいよ

長男・青くん:
はいできた

長男・青くん:
これは大豆の花です

大豆の小さな花を見つけた。

10月、夏の雑草が枯れ、青々とした大豆の姿がよく見えるようになり、その枝には緑のさや、枝豆が実っていた。早速収穫した枝豆をゆでて食べてみると「おいしい!」「おいちい!」「味が濃い!」「うまい!うまい!」と絶賛の声が。

耕作放棄地でほぼほったらかしで育てた無農薬大豆。初の実りに、小西さんの感激もひとしおだ。

12月、冬を迎えて大豆も枯れて乾燥が始まっていた。

長男・青くん:
枯れてるねぇ

ここまできたら収穫だ。長女のときちゃんも青くんと一緒にお手伝い、家族総出で収穫する。

長男・青くん:
大物だぞー

どんどん茶色い大豆の山ができていく。

陰干しすれば、音も軽やかにおなじみの大豆の完成だ。

「自然に任せても大豆はできる」

3月、西条に小西さんの姿があった。地域の人や友人たちも集まって味噌作りのスタートだ。

乾燥させていた大豆10kgに米麹(こうじ)と塩を加えて味噌を作っていく。

小西宏和さん:
炊いただけです。何も味付けてないです

参加した人:
甘いですね

参加した人:
すごいですよね。うちの余っとる畑でも大豆をばらまいてできるんやったらやりたいですよね

味噌作りは、出し料理研究家の森智恵子さんに教わる。

出し料理研究家・森智恵子さん:
麹で菌を作って今から大豆と混ぜて塩と麹で発酵させる

ペースト状にした大豆と塩と麹をよく混ぜてお団子にする。

出し料理研究家・森智恵子さん:
投げて容器の隅を狙っていく感じで

大豆の中に空気が入ると熟成中にカビが生えるため、味噌玉を投げ入れ、上から押してならしてゆく。

参加した人:
楽しみです。1年

参加した人:
手作りのものって自分で素材を選べるし、こだわって何が入ってるかわかってるものっていうのが安心して食べられるのがいいなと思います

小西宏和さん:
ある程度自然に任せても大豆はできるなって思いました。地元の人がたくさんお手伝いいただけるのでいろんな人と知り会えたりというのが楽しい。あと子どもたちもいろいろ勉強になると思うんで。もちろん自分らも勉強になりますし

作り手のいなくなった耕作放棄地に小西さん一家がまいた25kgの大豆は、約50kgの恵みをもたらした。この大豆をまたこの場所にまいて、ほったらかし無農薬大豆の循環が始まる。

(テレビ愛媛)

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