鹿児島市にある鹿児島地方気象台では、毎日、上空の気象観測のために気球を飛ばしている。これまで1日2回、職員の手で飛ばしていたが、2023年2月28日の夜から、機械により自動化された。実に83年間にわたって行われてきた手作業による観測がどう変わるのだろうか?節目の1日に密着した。

名残惜しみながら気球を空へ

2023年2月28日午前8時の鹿児島地方気象台。担当の職員が、観測気球を揚げるための準備を行っていた。気球に水素を詰め、先端につけているのが「ラジオゾンデ」と呼ばれる機械。上空の大気の状態を観測し、天気予報の基礎となるデータを収集する。

手作業で準備をする職員
手作業で準備をする職員
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鹿児島地方気象台・松尾進 主任技術専門官:
ここが気温計で、ここが湿度計です。このデータが1秒ごとに送られてきて、天気図のもとになるデータになります

雨の日も風の日も、1日2回、83年間にわたり続けられてきた手作業での観測は、2023年2月28日朝が最後となった。観測時間が迫ると、気象台の職員がぞろぞろと屋上に上がってきた。風向きを読み、気球を揚げる方向を判断するのも担当者の役目だ。

職員の手から放たれた最後の気球
職員の手から放たれた最後の気球

青空に上がる気球を名残惜しそうに眺める職員たち。長い間、観測に携わってきた松尾さんは「ちょっと寂しい気持ちがします。私は気象台に入って20歳ぐらいの時に最初、気球の放球をして。それから37年くらいになるが、もう人間で気球を揚げることはないのかなぁと」感慨深げに語った。

自動化で「必要なときに、必要な観測を」

人の手に代わってこれから活躍するのが「自動放球装置」。気球に水素を詰め、飛ばすところまで、すべて自動で行われる。自動化した背景には、どんな理由があるのだろうか?

鹿児島地方気象台・松尾進 主任技術専門官:
人が揚げる観測は人がいないとできないが、必要な時に、必要な観測ができるということで、自動化ということになりました

今後は、東京にある気象庁本庁からの遠隔操作も可能になるという。

2月28日午後8時半。自動化されて初めての観測気球が、鹿児島地方気象台から夜空高く上がった。

鹿児島地方気象台・松尾進 主任技術専門官:
大雨が予想される時は、回数を増やして観測することができます。線状降水帯の把握のための観測に寄与すると思います

全国に16カ所あるラジオゾンデの観測地点。すでに同じ鹿児島・奄美大島の名瀬測候所などで機械が導入されている。

機械化の波は避けられないが、気球は今後も、気象、防災のための大切な情報を送り続ける。鹿児島の人たちの安全、安心を守るために。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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