愛知県豊橋市で、時刻表に行き先のない「バスの来ないバス停」の設置が進んでいる。バス停にどんな目的があるのか、取材した。

豊橋市内各地のグループホームにも登場し大盛況

豊橋市にあるバス停。レンガ作りの本格的な待合所に、レトロなベンチが置かれている。

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バス停はかつて豊鉄バスの路線で実際に使われていた「本物」だ。

停留所の名前は「ぽかぽかの森」。しかし、時刻表に行き先は書かれていない。

カフェのスタッフ:
高齢者や認知症の方に「バスに乗っていくと家族の元へ行けるよ」ということで「じゃあちょっと待とうかな」と、待っている間に忘れちゃう

バス停を設置した「アンキカフェ」は、認知症の人やその家族が、お茶やお菓子を楽しみながら交流することを目的に作られた「認知症カフェ」だ。

カフェのスタッフ:
認知症カフェを作るときにシンボルとして作ったんですけども、バスは来ないんです

「バスの来ないバス停」はもともと、ドイツの介護施設で考案された。

認知症の人の徘徊は「自宅に帰ろうと交通機関を探すため」という気づきから生まれた認知症ケアの一つで、来るはずのないバスを待っている間に、なぜそこにいるのかを忘れ、職員の声がけに応じて施設に戻っていくという。

バス停の設置は他の場所でも進んでいる。大声援の中、停留所が迎え入れられたのは、認知症の人だけが暮らす豊橋市内のグループホームだ。

女性A:
ほんとに大きなバス停が来た。(Q.どこへ行きましょう?)伊良湖か…

故郷や楽しかった思い出の場所の記憶がよみがえってきたようだ。

女性B:
(田原市の)蔵王山。うちの2階から見えるんです。田原だからね、子供が2階から蔵王山って呼ぶの

女性C:
今までそんな、バス停1つでゲラゲラ笑うことはなかったからね

グループホームの施設長:
すごいです。このバス停が今到着しただけなのに、皆さんの心がものすごくウキウキして。本当に素晴らしいことだなと、やってよかったって

認知症カフェをきっかけに、今回市内の4つのグループホームに設置された「バスの来ないバス停」。

Q.バス停が来たらどこへ行く?
女性たち:
世界一周でもしてみたい
東京行きたい
豊橋

愛知県認知症グループホーム連絡協議会で東三河地区を取りまとめる武田誠さんは、設置の意義は、決して施設のためだけではないという。

武田誠さん:
これから認知症の方は増えるし、正直、グループホームとか施設に誰でも入れるわけではないので。在宅介護で本当に頑張っているご家族の人たちが、ちょっと目を離した隙に出て行ってしまう。だけどそこにベンチがあってバス停があると、ここに寄ってくれて座ってくれたら。僕たちはグループホームとして認知症の施設をやっているから、何かちょっとおかしいと思った時にすぐ声をかけてあげられる。今回は4カ所で、できれば徐々に増やして、バスの来ないバス停について東三河から発信して、愛知県の方にも流していく

(東海テレビ)

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