日本で生まれた子どもの数は、2022年、初めて80万人を下回った。こうした中、2016年に国が始めた「企業主導型保育事業」に今回はスポットをあてる。企業が従業員の子どもを預かるために社内に保育所を設置したり、複数の企業が共同で保育所を運営したりする際に国が助成金を支払うというもの。金沢市内の企業に運営を始めた理由やメリットを聞いた。

デザイン会社が始めた「企業主導型保育園」

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金沢市内のこちらの建物。実は…

保育園だ。

BABY TALE松村 横山佐織主任:
ここは「デザイン会社」がやっている保育園になります。

園内の内装は、デザイン会社が手がけたとあってかわいらしい雰囲気だ。

部屋を案内してもらうと…

横山主任:
ここは0歳児4人が保育中です。あそこは調乳室、ちょっとおうちの雰囲気、あたたかい感じで
家のキッチンみたいな感じになっています。

こだわりはほかにも…

横山主任:
写真の撮り方も教えてもらって、こういう構成で撮ったらいいよとか、こういう時の表情はこうしたらいいよとか、背景なども全部教えてもらった上でみんなで頑張って撮っています。

年に一度配られるまるで絵本のようなアルバム。

保育士が毎日、子どもたちの写真を撮り溜め、ひとりひとり違うオリジナルの一冊にまとめている。

低予算で保育園を開設できる仕組み

どうしてデザイン会社が保育園を運営しているのだろうか。

その企業を訪ねた。

「CNARIO(シナリオ)」の下代詠司社長だ。

ホームページの制作やロゴなどのデザインを手掛けるこちらの会社。保育事業をはじめた理由を聞くと。

CNARIO 下代詠司社長:
働くスタッフが増えていくにあたって、働きやすい環境を作りたいと常々思っていた。子どもを保育園に預けたいけれど預けられないという問題もあったので、そこも解消したいなという思いがありました。

金沢市の待機児童はゼロと言われている。

しかし…SNSなどで検索してみると、「保育園落ちた!」「同じく金沢で保育園落ちました。」「遠いところなら入れるかもしれないけど、通勤ラッシュ時は1時間はかかりそう…。」と言った声が。共働きの家庭では、出社時間や帰宅時間を考えた時に希望する保育施設に入所できない人が多くいると言う。

下代社長:
女性が多い分だけ、かなり課題に直面している感じはあります。スタッフの9割くらいが女性なので。

そこでこの企業が活用したのが、国の「企業主導型保育事業」だ。

中小企業の場合、年間の運営費が4000万円かかっても自己負担は最大120万円で保育園を開設できると言うのだ。

保育士などのスタッフは自社で揃える必要があるが、大きなメリットがあると判断した。

下代社長:
代わりのスタッフを入れても仕事内容をうまく引き継げるのかという心配もあったので、それなら分かっている育児中のスタッフにやってもらったほうがお互いのためになるんじゃないかな。

「働けるし預けられる」…働きやすい環境づくり

保育士の土田さん。この保育園に勤めながら息子の唯斗くん(2)を預けている。

保育士 土田さん:
朝の忙しい時間はバタバタしちゃうので、一緒に来られるというのは出勤時間がなくなっていい。保育園探しも大変と聞くので、一緒に私も働けるし子どもも預けられるしというのですごく感謝しています。

さらに、この会社が運営する保育園。今では自社の社員だけでなく、契約した60以上の企業で働く従業員の子どもを優先的に受け入れている。

2人の子どもを預ける母親は…

母親:
認可保育園だと枠がなかなか2人同時に空くことがないので、すごくよかったです。仕事は続けていきたいと思っているので、朝早くからも預かっていただけるので助かっています。

下代社長:
働きやすいというところが大前提になりますので、うちの会社も、利用していただける会社もスタッフが働きやすい環境を作れる手助けができたらいいなと思います。

国内で生まれた子どもの数が2022年、初めて80万人を下回るなど急速に進む少子化。仕事をしながら安心して子育てできる環境を作ることが重要だ。

県内には「企業主導型保育事業」を活用した保育所が19カ所設置されている。しかし国は1月、待機児童数が減少したとして新規事業者の募集を終了すると発表した。

岸田総理は「異次元の少子化対策」を打ち出しているが、言葉だけにならない政策を期待したい。

(石川テレビ)

石川テレビ
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