ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって1年がたった。終結への道筋が見えない中、避難者の受け入れなど、山陰でも支援が続いている。避難生活を続ける留学生の今の思い、そしてウクライナ支援の現状を取材した。

「戦争の時間がとても長い」

島根・江津市のはなまる日本語学校島根校。2021年4月に開校し、現在は約60人の外国人留学生を受け入れている。ここで、2人のウクライナ人が日本語を学んでいた。

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アンナ・クリスティーナ・ロシュコさん(21)とナタリーア・スポダさん(28)。ウクライナの大学で日本語を学び、将来は日本を訪れたいと考えていた。そこで起きたロシアによる軍事侵攻。2人は避難先として、日本を選んだ。

アンナさん:
俳句や短歌を読むのが好き。私は美術が好きなので、フォトグラファーになりたい

ナタリーアさん:
「スパイファミリー」と「文豪ストレイドッグス」、一番好きなアニメです。アニメクリエイターになりたいので、日本で働きたいです

ともに卒業後は、日本で働くことを希望している。2人は2022年、この学校に入学した。ロシアによる軍事侵攻を受け、全国40以上の専門学校が共同で始めたプロジェクトの支援を受けた。

2人は日本での生活にもなじみ、日本語も上達しているが、侵攻開始から1年がたち、不安が心を覆っているという。

ナタリーアさん:
戦争の時間がとても長いです。いつも家族や友達を心配しています。時々、ウクライナで停電が起き、(家族と)連絡ができないことがある

アンナさんはウクライナ西部のリビウ、ナタリーアさんは北部・チェルニヒウの出身で、ともに故郷はロシア軍の攻撃を受けた。

現地で撮影された写真を見ると、その被害の大きさがまざまざと伝わってくる。

アンナさん:
家族やウクライナについては少し心配しているけれど、ウクライナの勝利を待っています

2人を受け入れた「はなまる日本語学校」島根校の柳原大作校長は、「日本語教育という部分でしか支援できないが、彼女たちは自分たちの夢がはっきりしている。専門的な勉強ができる進学先に行ってくれることを願う」とエールを送る。

取材中、2人に「好きな日本語」を教えてもらった。

ナタリーアさんが挙げたのは「がんばって」という言葉。ナタリーアさんは「これは一番好きな言葉。『がんばって!』と聞くといつも、とてもいい気持ちになります」と教えてくれた。

そして、アンナさんがホワイトボードに記したのは「夢」という文字。アンナさんは「生活するうえで『夢』はとても大切なものだと思う。これから、日本のたくさんの場所を見て、富士山の写真を撮りたい」と元気を見せてくれた。

募金箱には絶え間なく…

このほかにも、ウクライナへの支援の輪は山陰両県で広がっている。鳥取・北栄町の「北条ワイン醸造所」を訪ねた。

北条ワイン醸造所・山田和弘さん:
おかげさまで、想像以上の支援を賜りました。本当に感謝しています

代表の山田和弘さんの妻・マリーナさんは、ウクライナ出身だ。

侵攻開始直後の2022年3月から、ウクライナ支援のため、「義援金ワイン」を販売している。1本3,000円で販売し、1本あたり1,000円が支援に充てられる。この1年で約9,700本を販売し、1,000万円近い義援金が集まった。

北条ワイン醸造所・山田和弘さん:
支援をどういった形ですればよいか、支援をしたいがどうしたらいいか分からないというお客さまが多かった。(義援金ワインを購入した)お客さまの方から、逆に「ありがとう」という声をいただくことが多かった

侵攻開始から1年の節目に、妻・ピロゴバ・マリーナさんは「昨年より戦況は悪化し、今後も全く先が見えません。義援金ワインも継続し、少しでも多くの皆さんにウクライナという国を知っていただけるよう、活動をしていきたい」とメッセージを寄せた。

また、鳥取県も2022年3月、募金箱を設置し、2022年の年末までに387万円余りが寄せられた。

募金した人は「日本も大変なときに助けていただいているので、多くの方のお役に立てればという思いで募金した」と話した。

また、鳥取県福祉保健課・城ヶ原奈波さんは「1年間、絶え間なく募金があった。一刻も早い事態の収束を願い、支援したいという形が表れたのではないか」と振り返った。

支援を続け 雇用を守る

一方、軍事侵攻で仕事を失った技術者を支援する取り組みも続いている。倉吉市の「倉繁歯科技工所」では、入れ歯や歯のかぶせ物などを作っている。

SNSを通じてつながりがあった、リビウの歯科技工所にデザインを発注するプロジェクトを国内の同業者と共同で2022年4月に始めた。

1回の発注につき1,000円を支払って支援し、これまでにその総額は70万円余りに達した。しかし…。

倉繁歯科技工所・倉繁竜士さん:
ロシアからロケットが飛んできて、3発のロケットが着弾して爆発したと。なかなかショッキングでした

現地から生々しい画像が届いた。決して安全な状況ではないが、それでもこうした日本からの支援に、発注先のウクライナのスタッフも勇気づけられているという。「軍事侵攻が始まって、私たちの生活が一変した。そんななか、このプロジェクトを立ち上げていただき、深く感謝しています。どうもありがとう、日本」と感謝の声も届いている。

倉繁歯科技工所・倉繁竜士さん:
ここまで(侵攻が)長期化するとは誰も思っていなかった。支援を切れ目なく続けることが、雇用を守ることにつながる

ロシアによる軍事侵攻が始まって1年。終わりの見えない不安な日々が続くなか、山陰からの支援もウクライナの人々に届いている。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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