2月17日、鹿児島県の種子島で予定されていた国産の新型主力ロケット「H3」は、結局打ち上げが中断された。「H3」には、東海地方の企業の技術が使われている。配管の加工を手掛けた愛知の町工場も、その様子を見守っていた。

見守った部品工場の社長「残念というよりは胸が痛い」

17日、鹿児島県の種子島宇宙センターで打ち上げ予定だった「H3」の初号機。

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エンジンからは白い煙が上がったが、機体は空に浮かび上がらなかった。

「H2A」の後継機として、宇宙航空開発研究機構=JAXAと三菱重工業が共同開発したH3ロケット。実は愛知県生まれだ。

自動車向けの部品を利用するなどして、三菱重工の飛島工場で組み立てられた。

宇宙ビジネスで日本の競争力を高めるため、大きな衛星を低コストで打ち上げることを目指し開発が進められ、東海地方のモノづくりの技術も結集している。

安城市にあるイセ工業。

イセ工業の社長:
こちらの設備がパイプを曲げる機械になります。ロケットに使われている配管部品のパイプ曲げを行っています

従業員70人ほどの町工場で、普段は自動車の排気管を手掛けているが、今回ロケットの燃料を送るための配管を加工した。

イセ工業の社長:
こちらがロケットで使われているパイプ、こちらが自動車で使われているパイプで、自動車の方が厚くてロケットが薄いという風になります。その分こちらの方が軽量になりますけども、加工としては非常に困難なパイプ加工になります

アルミ製で軽くて薄い配管は曲げるとしわになりやすいため、細かい調整がきくモーター式の機械を新たに導入した。

機械でパイプを曲げた後は熟練の職人が手作業で形を整えるなど、試行錯誤すること2年。試作品の数は50本を超えたという。

待ちに待った17日は、社員たちと打ち上げを固唾を呑んで見守った。

イセ工業の社長:
残念というよりは、関わっている人たちのことを考えると胸が痛いな、という方が強いですね

JAXAの担当者:
見守ってくださっていた方々が大勢いらっしゃいますので、申し訳ないと思っていますし、われわれもものすごく悔しいです

記者会見を開き、悔しさを滲ませたJAXA担当者。

メインエンジンには着火したものの、システムが異常を検知し、固体燃料の補助ロケットに着火信号が送れなかったと経緯を説明した。

今回は打ち上げが中断されたH3ロケットだが、イセ工業は次回以降に期待を寄せている。

イセ工業の社長:
必ず成功させてもらえると思っているので、まずは1号機の打ち上げをしっかりと成功していただいて、そこから2号機3号機とどんどんロケットをたくさん打ち上げていただきたいと思います。今はまだパイプの曲げ加工の部分に特化してロケットの製品に携わっているので、曲げ加工だけではない工程にもロケットの製作に携われるようにしていくことで、社員さんにもっともっとこの熱を広げていけたらなと思っています

(東海テレビ)

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