イタリアを拠点に活躍する南風原出身のピアニスト、名前は下里豪志さん。
心は女性で体が男性というトランスジェンダーの下里さん。コロナ禍での苦難を乗り越え4年ぶりとなるソロリサイタルに密着した。
時に繊細に、時に力強く
優雅さとダイナミックさを併せ持つピアニスト下里豪志さん。
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下里豪志さん:
体が応えてくれる能力の可能性と自分の内側にあるものの少しのギャップが、おそらく音楽にちょっと特別なものを出しているんじゃないかなと思います
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トランスジェンダーという個性を活かし、唯一無二の演奏で観客を魅了する下里さんは2022年、若手ピアニストの登竜門と言われる国際コンクールで2位に輝くなど、世界で注目されている。
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下里豪志さん:
すごいハイレベルなコンクールだったので、そこで上手くいったことがすごく嬉しかったです
演奏で振り向かせたい
Q.見た目と名前のギャップに驚かれることは多い?
下里豪志さん:
多いです
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下里豪志さん:
小さい時とか皆さんビックリされている様子は会場みたらわかるので、だからこそ演奏で振り向いてもらおうというエネルギーになっていた
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下里さんがピアノを始めたのは、プロのピアニストとしては遅い小学4年生の時。
1日5時間も練習するほど虜になり2年後にはコンクールで金賞を受賞するほど才能が開花。
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こうした努力が自信となり周囲の理解にも繋がった。
下里豪志さん:
打ち込めるものが何かあるというのは、今になってみると強いなと思いますし。
違う学年の男の子たちから、からかわれるような言葉が飛び交ったりとかも、もちろんありましたけど自分の中で生きがいというものがあったから、そこでいちいち(悩む)時間にとらわれないで済んだというのはあると思います
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母の倫子さんも息子の心が女の子だという事を否定せずに個性を尊重してくれた。
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母・倫子さん:
「なんで男の子なのにこんな格好させているの」とか、言われるんですけど、本人が好きだから仕方ないさ、という風に私も言っていました。
本人にも、そういわれるのは当たり前だからこっちから聞いてこっちから流す自信があるんだったら、女の子の恰好をしてもいいよってことで言っていました
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「初めてピアノが嫌いに」人生最大の挫折
自らの努力と周囲のサポートもあり、東京の大学を主席で卒業するなど常に前向きに音楽の道を歩んできた下里さん。
2018年には国際的なピアニストを目指しイタリアに拠点を移したが、待っていたのは人生最大の挫折だった。
下里豪志さん:
はじめてピアノが嫌いになったので
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新型コロナの影響で、コンクールやコンサートが軒並み中止となったことでモチベーションを保つのが難しくなり、自分らしい演奏を見失ってしまったと言う。
下里豪志さん:
初めて、音を出すということ自体が受け付けなくなっていたので。
でも、音楽するためにイタリアにいるから、じゃあどうしたらいいという感じで、すごくやりようのない時期が長く続きました
音楽の素晴らしさをもう一度教えてくれた曲
出口の見えないトンネルから救い出してくれたのはある曲との出会いだった。
下里豪志さん:
スペインの作曲家、グラナドスの「ゴイェスカス」という曲です
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情熱的な男女の恋模様を描いたゴイェスカスの楽譜を紐解く中で、徐々に表現する楽しさを取り戻していった。
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下里豪志さん:
人というものを音で表現していく作業がすごく楽しくて、やっぱり私は音楽で何かを表現したいと思う人だったなというのを取り戻すきっかけになったので、ゴイェスカスには感謝しています
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聞いた人の心を明るい未来へ連れていけるように
音楽の素晴らしさをもう一度教えてくれた楽曲を、沖縄の人にも聞いてもらいたいと県内での4年ぶりとなる大規模なソロリサイタルで初めて披露する事にした。
下里豪志さん:
私がこの曲に救われたように沖縄で聞いてくださる方が、どこかでこの曲に救われてくれたらいいなと思っています
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ゴイェスカス美しい旋律で会場を包み込んだ下里さん。
来場者:
何とも言えない最高でした
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来場者:
最後は涙が止まらなくて、久しぶりに豪志さんからのプレゼントをいっぱいもらって、いっぱい私もエネルギーになったし、たくさん愛がもらえたなと思います
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母・倫子さん:
たくさんのお客さんが来てくれてとても感激しました。みんなから愛される下里豪志として、私の手を離れたような気がしました
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下里豪志さん:
強い意志をもって演奏できたというのは自分自身感じたので、これからも心を大事にしていつでも人の心に寄り添って、そして誰かの心を明るい未来に連れていけるような演奏ができるようにこれからも頑張っていきたいと思います
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異国での苦難を乗り越えさらに表現力に磨きをかけた下里さん。
これからも唯一無二の演奏で人々を魅了する。
(沖縄テレビ)