2019年と2021年の豪雨で内水氾濫による甚大な浸水被害に見舞われた佐賀県の「六角川」流域。その六角川の河川敷に大きなプールが次々に作られている。川の水位を上げていたある植物に目をつけた浸水被害軽減の新たな対策だ。

巨大プールが次々と…何のために?

六角川の河川敷に並ぶ大きなプール。その数約70個、一体何を目的に作られているのだろうか?

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武雄河川事務所 朝日出張所・髙木耕太郎所長:
令和3年(2021年)8月の出水で非常に大きな雨が降りまして、浸水被害を受けたのですけども、そういった同じ規模の雨が降っても浸水被害を軽減することができることを期待している

2019年と2021年、相次いで豪雨による浸水被害に見舞われた武雄市や大町町など六角川の流域。

2021年は約3,700戸が浸水し、うち床上浸水の被害は1,500戸に上った。

水流の障害は生い茂る“ヨシ”

武雄河川事務所 朝日出張所・髙木耕太郎所長:
“ヨシ”を生やさないようにすることで河川の水位を下げるための対策として行っている

ーーこの湛水(たんすい)池というのは、水をためるというのが直接的な目的ではなくて、ヨシが生えないようにするため?

武雄河川事務所 朝日出張所・髙木耕太郎所長:
ヨシを生やさないようにして、水を流れやすくする

そもそも蛇行しているその地形から、上流から下流へ水が流れにくい六角川。それに加え、河川敷に生い茂ったヨシが“水の抵抗”を生んでいたという。

武雄河川事務所 朝日出張所・髙木耕太郎所長:
生えているヨシの抵抗で水が非常に流れにくくなるということで、水位が上がるという現象が起きていました。いま見えているヨシが、池が見えているところにもびっしりと生えているような状態でした

水位を上げない仕組みとは

つまり、仕組みはこうだ。これまでは豪雨などの際、河川敷の上まで水位が上がると、生い茂ったヨシが水の流れをじゃまして、さらに水位が上昇していた。

一方、河川敷にプールを作り常に水をためておくと、その部分にはヨシが生えなくなる。すると抵抗が減り、水が流れやすくなることで河川の水位が上がりにくくなるというわけだ。

武雄河川事務所 朝日出張所・髙木耕太郎所長:
その効果として、令和3年8月と同じ規模の出水が再度来ても、今度は“ポンプの運転調整”をしなくて済む

2019年、そして2021年、六角川流域の甚大な浸水被害は内水氾濫によるもの。その浸水の高さは排水ポンプの運転調整、つまり、ポンプを止めるか止めないかで大きく変わってくる。

被害軽減のカギは排水ポンプ

実際、2021年の豪雨では、これ以上水位が上がると堤防が決壊したり、河川があふれたりしてさらに被害が大きくなるため、武雄市内10カ所ある排水機場のうち、6カ所でポンプが止められた。

そのとき、河川の水位、そして浸水の状況はどのようになっていたのか、当日のデータを見せてもらった。

武雄河川事務所・薄田邦貴副所長:
実際この表ではポンプ(高橋排水機場・武雄市朝日町)を午前3時ごろ停止して、午前3時時点ですと、内水の水位はTP4.84メートル。最大でTP5.99メートルまで上がっておりますので、1.2メートル~1.3メートルほど内水(浸水深)は上昇したという観測結果になっています

ほかの排水機場付近でも、ポンプを止めてから最大1メートル前後内水の水位が上がっていた。ポンプの停止だけが原因ではないにしても、止めずに済んでいたとしたら、浸水被害はもっと軽減されていたと考えられる。

ーーポンプを止めるということは、内水がたまってしまう1つの大きなきっかけに?

武雄河川事務所・薄田邦貴副所長:
そうですね。どうしてもポンプの目的が内水を下げるためにポンプはありますので、それを止めるということは、その効果が当然なくなりますので

100%の被害解消は難しいが…

そこで、ポンプを動かし続けるために期待されるのが70個のプールだ。2023年5月、出水期前までに整備は完了する予定で、国の事業費は約16億円だ。

武雄河川事務所 朝日出張所・髙木耕太郎所長:
ただ、この対策が完成しても浸水被害が100%解消できるかというと、なかなか難しい。ハード面の対策だけじゃなくて、ソフト的な対策も含めて被害がより軽減できるように進めていきたい

(サガテレビ)

サガテレビ
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