全国で相次ぐ強盗事件について、フィリピンで収容されている指示役とみられる容疑者らに対し、大規模な特殊詐欺に関わった疑いで逮捕状が出ている。こうした犯罪グループの多くは、「闇バイト」と称して実行犯を募っているとみられる。

「闇バイト」について今、知りたい3つのことを特殊詐欺などの組織犯罪を最前線で数多く取材してきたジャーナリスト・石原行雄さんに聞いた。

「闇バイト」3つの知りたいこと

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大きく3つの「知りたいコト」について伺った。   

▼組織は特殊詐欺から強盗へ、なぜ凶悪になったのか?
▼勧誘手口のリアル。一度ハマると泥沼に…。
▼闇バイト組織から身を守るには?

まず、【特殊詐欺から強盗へ、なぜ闇バイトは凶悪化しているのか?】について…

最近、闇バイトがさせられる犯罪が、特殊詐欺から強盗などの凶悪なものに変わっているそうだ。なぜなのか?

前提として、闇バイトを従える大規模な犯罪グループの組織の構図を見ていくと…トップに元締めがいて、そして指示役などの上層部がいて、SNSで闇バイトを募集するリクルーター、そして、闇バイトに応募した実行役が大量にいるという構図になっている。

トカゲの尻尾 “切り捨ててもいい”

 このような犯罪組織が手を染める犯罪は元々は振り込め詐欺のような特殊詐欺などだったが、アポ電強盗(1回電話などで家にいるかどうか確認し、いない場合に強盗に入る)のような犯罪に変わり、最近は相手を傷付けるような強盗というように凶悪化している。

なぜ、凶悪化しているのか?ジャーナリストの石原さんは「幹部の安全が確保できる状況が最近できている。実行役はもう捕まってもいい。切り捨ててもいい…だから強盗なんだ」と話す。

ジャーナリスト・石原行雄さん:
もうこのシステム(闇バイトなどで集める犯罪組織)が完成され円熟期に入っていると上層部は思っている。下がいくら捕まっても、自分たちは捕まらないという自信があって、「そういうことなら、じゃあ、特殊詐欺のようにいろんな人間を動かして調整してという面倒をかけるよりも、もう手っ取り早く強盗すればいいじゃないか…」と。それで強盗のいわゆる“たたき”という事件が増えている

Q)なぜ、現場の実行役が捕まっても、上(上層部)まで足がつかないようになっているんですか? 
ジャーナリスト・石原行雄さん:
「テレグラム」という秘匿性の高い通信アプリを使ってやりとりをしていて、証拠が残りにくいんです

Q)バイトの実行役は、最終的に誰に指示されているかも分からずに、やっている人もいるんですね?
ジャーナリスト・石原行雄さん:
はい、SNSで募集されているので、結局、オンライン上でしかやりとりをしていない。上層部と顔を合わせていないということで、逮捕されても上層部のことを何もしゃべれないということです

続いては、【勧誘手口のリアル。一度ハマると泥沼に…】について… 具体的に、石原さんの取材でわかった犯行手口のリアルについて見ていく。

(石原さんが実際に「闇バイト」リクルーターに覆面取材した際…)
・相手から必ず個人情報(銀行口座、身分証、さらに家族の詳細な情報)を要求された。

ジャーナリスト・石原行雄さん:
だいたい2020年10、11月頃から、このような詳細な個人情報を要求されるようになったんですが、自分の情報だけでなく、家族の、例えば実家の家族構成ですとか、家族の名前や連絡先、そういったものを聞かれることで自分以外の大切な人までも、脅しの材料になるということです

気軽に入れるSNSが“入り口”

Q)具体的なエピソードは?
ジャーナリスト・石原行雄さん:
私が取材した闇バイト経験者の場合ですが、「怖いから辞めたい」と闇バイトのリクルーターに言ったら、リクルーターは「じゃあ、お前が働いて売り上げが上がるはずだった分を実家の家族に相談しに行きますわ」と言ってくる。そうすると自分の犯罪が親にばれるのも怖いですし、犯罪組織に親が何をされるかも怖いので…2度目3度目とやってしまったというケースもありました

Q)闇バイトに応じる若い人は「割に合わない」ということに気づかずに(闇バイトに)入っちゃうんですか? 
ジャーナリスト・石原行雄さん:
やはり入口がSNSなので、そこまで重大なことではなく、気軽になんとなく入っていくうちに…ということなんですね

最後に3つめのテーマが【闇バイト組織から身を守るには?】

自分や周りの方が巻き込まれないために、まず加害者にならないために、何かできることはあるのか。

(石原さんによると…)
・ますは、テレグラムというアプリを入れないこと。子どもにスマホを持たせる場合はアプリを「承認制」にすること

Q)相手からリクエストが来るそうなんですが…石原さん、これはどういうことですか?​
ジャーナリスト・石原行雄さん:
闇バイトをするにあたって、必ずリクルーターからテレグラムをダウンロードするように要求される(指示される)んですが、実際に犯行に及ぶ時、例えば“受け子”とか“出し子”とかも常に「テレグラム」の通話を通じて、耳にブルートゥースのイヤホンマイクを付けて、ずーっと指示が来るわけなんです。逆にテレグラムを入れなければ、上層部としては人材として使えないということになります

被害者にならないために…

続いて、被害者にならないためにできることは…

(石原さんによると…)
・SNSに経済状況が分かるような情報を投稿しない
・訪問業者を家にあげない

 石原さん、これらはどういうことでしょうか?

ジャーナリスト・石原行雄さん:
犯罪組織はまず何らかの形で名簿を入手しますが、その名簿が当たりなのかどうなのか…というのを例えばSNSで「高価な買い物をしました」とか「豪華な旅行をしました」とか、そういう情報で答え合わせをする。そういう意味では自分からそういった情報を与えないことは大切だと思います

ジャーナリスト・石原行雄さん:
(また、家にあげると)部屋に入ると間取りとか、家族構成、貴重品のありかを読み取られてしまうということなんですよね

こういう時代なので「防御」することが、最も大事だと言えそうだ。

(関西テレビ「報道ランナー」2023年1月31日放送)

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