全国で相次ぐ強盗事件や特殊詐欺事件。犯行の実行役は「闇バイト」という形で募集された人たち。今回、「闇バイト」を経験した人物への取材から、一度はまったら抜け出せない、巧妙な手口を読み解く。

“闇バイト”応募のキッカケは高額の治療費 高額報酬に魅力を感じ飛びつく

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闇バイトをしたAさん(20代):
持病があって、その合併症で治療費が保険が効かないって言われてて、高額になってしまって。(闇バイトの)「1日5万円から」っていう投稿をみて、やりとりし始めたのがきっかけでした

20代前半(当時)のAさんは、3年前に闇バイトに応募した。自分の治療費を借金していたAさんには、高額な報酬は魅力的。雇い主が「犯罪グループ」とは知らずに、思わず飛びついたAさん。託された仕事は“特殊詐欺”の“受け子”だった。

闇バイトをしたAさん(20代):
(犯行時の実際のやり取りをしたスマホ画面を見ながら)“板”っていうのがキャッシュカードなんです。キャッシュカードが3枚ある。“メモ”っていうのが暗証番号が書かれた紙。紙1枚、キャッシュカード3枚受け取ってください、ということですね

指示役などとのやりとりはすべてSNSで行われ、「テレグラム」という通信アプリを使うよう、雇い主から指示された。このアプリは、メッセージのやり取りや、送信元までも一定時間が経つと自動で消すことができるため、“証拠を隠蔽”したい犯罪組織の多くが悪用しているのだ。

犯罪組織に個人情報を握られ、やめたくてもやめられない泥沼に

Aさんは、SNSで指示された通りにキャッシュカードをだまし取り、ATMで現金を引き出した。報酬としてだまし取った金額の5%を受け取ったが、罪の意識にさいなまれ、やめたいと申し出た。しかし…

闇バイトをしたAさん(20代):
もし裏切ったりしたら、家族に危害を加えたりとか、私の情報を公表するとか、(犯行を)通報するとか。もうどうしたらいいのかも分からなくなっていて

実は、「闇バイト」を始めるにあたり、Aさんは雇い主である犯罪グループに“あらゆる個人情報”を渡してしまっていたのだ。

闇バイトをしたAさん(20代):
私の親・身内、同居している人の個人情報、家の外観、私のマイナンバーカード。「私自身だけなら分かるんですけど、親とか同居人まで必要あるんですか?教えるのは気が引けます」と言ったら、「こちらは大金を扱う仕事だから、教えてもらわないと絶対に困ります。(働くことが)できません」と言われて、仕方ないんかなと思ってしまって…

半ば脅される形で、やめることができなくなったAさんは、その後も指示されるがままに犯行を重ねた。そして6件目の犯行に向かう途中、警察の職務質問を受け、逮捕されたのだ。

闇バイトをしたAさん(20代):
「やっと終わる。指示役との関係も断ち切れる。もうこれ以上、自分の手で被害者を出さなくて済む」というほっとした気持ち

一方で、Aさんを陥れた犯罪グループはいまだに捕まっていない。

なぜ若者は簡単に犯罪に手を染めてしまうのか

なぜ若者が簡単に犯罪に手を染めてしまうのか。犯罪グループがSNSなどを使って、巧みに誘導する現状について、犯罪ジャーナリストの多田さんはこう指摘する。

犯罪ジャーナリスト 多田文明さん:
「お金をあげます」とか「もうかります」とか、そういった情報が非常に氾濫している、それに若者がそういう情報に飛びついていく現状。(闇バイトは)ほとんど“受け子” “出し子”で、国内の実行犯。特に指示をしていた人間を捕まえることで、1グループは消えるかもしれないが、頭が変わっただけで別のグループが似たようなことを今後していく可能性も十分あります

■前科もつく。マイナスしかないし、いいこと絶対にない」

Aさんがだまし取った金額は1千万円にのぼり、被害者へ一部返済しましたが、「実行犯」として実刑判決を受けることになった。

闇バイトをしたAさん(20代):
お金が必要でしたことなのに、必要だった以上にお金が絶対に出ていく。前科もつく。マイナスしかないし、いいこと絶対にないから。犯罪するぐらいなら他にもなんでもできる。信じる人を絶対に間違わないで欲しい

(関西テレビ「報道ランナー」2023年1月31日放送)

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