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今回は泌尿器科の名医、くぼたクリニック松戸五香 泌尿器科の窪田徹矢医師が、コロナ禍で若い人にも増えている「頻尿」について徹底解説。

膀胱容量の低下、多尿、糖尿病、心因性など、原因により変わる治療法や、日常生活で気をつけるべきことについて解説する。

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頻尿とは

「頻尿」とは一般的に、排尿の回数が1日に8回以上、あるいは、就寝して寝ている間に1回以上お小水に行くことです。就寝中にお小水に行く場合は「夜間頻尿」と言います。

けれども一概に回数だけでは決められない部分もあって、排尿が1日8回以下でも、ご自身で排尿の回数が多いと感じている場合もありますので、そういう場合も頻尿というふうには言えます。

泌尿器科に来られる方で一番多いのは夜間頻尿なんですけれども、これは年齢を重ねていくうちに頻度が高くなって、それによって睡眠障害などが起きてしまうということで、日常生活に支障を来すことが多いです。

また、寒い時期は、寒さで膀胱が収縮したり、汗をかかないのでその分尿の量自体が増えていったりします。それによってトイレが近くなることがあります。

頻尿の原因

頻尿の原因は、大きく分けて3つあります。

まず1つ目は、膀胱容量の低下です。

膀胱の容量は、一般の方だと大体約250~300cc溜まるとトイレに行きたいと感じます。しかし、150~200cc以下程度しか溜まっていないのに、トイレに行きたくなることがあります。こうなると、1日の尿量は変わらなくても、膀胱の容量が少なくなった分、トイレの回数が必然的に多くなる。こうして、膀胱容量の低下が頻尿の原因になります。

年齢を重ねていくと「過活動膀胱」「間質性膀胱炎」、男性では「前立腺肥大症」、さらに「神経因性膀胱」も頻尿の原因になります。

2つ目の大きな原因は、尿量の増加、多尿の状態です。

その状態では尿が多くなるわけですから、その分頻尿になります。だいたい1回の排尿量は正常、150~200ccと言われているのですが、それでも何回もトイレに行くということは、いわゆる尿自体が多くなってる可能性があります。

この尿量が多くなる原因としては、糖尿病や腎機能低下などがあります。もちろん水分を多くとりすぎたり、利尿剤のように尿を出しやすくするようなお薬を飲んでいることによって尿が増えてしまう時もあります。

あと、カフェインなどをたくさん含んでいるコーヒーや緑茶・ウーロン茶なども頻尿の原因になります。

3つ目は、心因性ですね。

いわゆる精神的なことなんですけれども、これは若年者に多いです。膀胱とか尿道の病気が全くない、尿量も問題ないにも関わらず、自律神経が乱れることによって何回もトイレに行ってしまうという状態です。

皆さんも経験があるかもしれませんが、面接とか会議とか、何か緊張する勝負や本番となると、いざ緊張してトイレが近くなるという状態。

皆さん誰もが経験したことがあると思うんですけれども、このような状態が続くと頻尿になります。この状態が一過性の現象として終わらずに、その後も排尿回数が多くなったり常に緊張しているような状態が長く続く場合は、日常生活にも支障を来すほど頻尿になってしまう場合があります。

頻尿の検査方法

頻尿の検査方法は、泌尿器科に来られた場合、まず一般的な尿検査をやります。

膀胱炎などもそうですが、尿の中にばい菌や細菌がいないか、がんなどではないか、尿潜血みたいな血が混じっていないかといったことを調べるために尿検査をやります。これは必ずやっていただく検査です。

水分をすごくたくさんとっていて尿が近いという方も非常にいらっしゃいます。そうするとそれは病気というよりも、飲水が多いだけということも非常によくあります。

そういう場合は、“排尿日誌”をつけていただく。1日にどれぐらいご自身が水分をとって、どれぐらい尿が出ているかを記録していただく用紙があります。

そういうものでご自身で記録をつけていただくと、これぐらい水分をとってるんだから、これぐらいの量が出ても当たり前かなっていうのもだんだん分かってきます。この排尿日誌をつけていただくというのが大事です。

排尿時に、計量カップのようなものにとって、ご自身でどれぐらい尿が出たかっていうのをちゃんと調べてみるっていうのも非常に大事です。

あとはエコーの検査、超音波検査で、結石がないか、膀胱の中に腫瘍はないか、腎臓が腫れていないか、男性の場合は前立腺が肥大していないかなどを見る場合もあります。

このような検査をしながら、その頻尿の原因が何かを探る。もちろん心因性の場合はそれで何もないという場合もありますが、その原因を見ながら、それに対して適切な治療をするということが非常に大事になってきます。

頻尿の治療法

頻尿の治療方法ですが、病院に来て一番最初にやることは、いわゆる薬物治療。これは頻尿の原因がどういうものか、どういう病気かによって使う薬は変わってきます。

例えば男性であれば、前立腺肥大症で頻尿になっている場合は、前立腺肥大症の薬を飲んでいただく。

男性でも女性でも過活動膀胱という膀胱に尿がちょっとしか溜まらない病気がありますが、その場合は膀胱を膨らませるようなお薬を飲んでいただく。

神経因性膀胱の場合は、膀胱の“出す力”が弱くなっているので、出す力を強くするようなお薬を使う。

薬物療法の中でも、お薬は様々に変わってくるということですね。診察して、その時の診断の
疾患によってお薬を決めていくような形になります。

あとは頻尿と言っても、ほかに内科的な疾患、つまり糖尿病で口が乾いて尿が近くなる方とか、尿が多くなる方もいらっしゃいますから、糖尿病が悪くなっている場合は、糖尿病の治療をする可能性もあります。

日常生活で気をつけること

日常生活で頻尿にならないように気をつけるべきことについて、お話しさせていただきます。

寝る前3時間ぐらい前までには、やはりカフェインなどの取り過ぎは良くないです。お酒を飲むのは、最低寝る1時間ぐらい前までにしていただいて、利尿作用が多いものはなるべく控えていただくことが大事です。

あと、お腹のおへその下側辺りに膀胱があるんですけども、膀胱を温めてあげる。やはり“冷え”は血流が悪くなったり、膀胱が収縮して過敏になったりして、頻尿になりやすいですから、体を温めてあげることが非常に大事です。

また、きついような服を着過ぎない、というのもあります。お腹が圧迫されると尿が過敏になりやすいので、あまりにもお小水が近いという方は、少しゆったりめな服を着ていただくことも大事です。

心因性の場合に関しては、トイレが近くにない場合などにトイレに行きたくなってしまうということがあるので、トイレに行きやすい環境を作ってあげることも大事です。

最後に、心因性の場合、特に若い方の頻尿が今非常に増えています。

これはコロナ禍でリモートワークが増えたというのもあり、自律神経が乱れている方が非常に多いということです。

長時間のスマホとか、就寝時間が短くなってしまったりして、どうしても交感神経が過敏になる。自律神経の中でも刺激が強いものをどんどん浴びてしまうと、それによってお小水が近くなりやすい。

特に、夜になって寝る2~3時ぐらい前からは、できればスマホなどを長く見ないようにして、リラックスした状態を作る。アロマを炊くのもいいと思いますし、そういうことをしていただいて、体をゆったりさせることで、頻尿にならないようになってくるかと思います。

名医のいる相談室
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窪田徹矢
窪田徹矢

くぼたクリニック松戸五香 院長 平成15年 獨協医科大学卒業 その後千葉医療センター、成田赤十字病院で研修 平成20年 国保松戸市立病院 泌尿器科 医員 平成21年 千葉西総合病院 泌尿器科 医員 平成23年 同上医長 平成27年 同上部長(その後現在も非常勤勤務) 平成29年 くぼたクリニック松戸五香 開設