2022年8月、復興拠点で原発事故による避難指示が解除された福島県双葉町。
これからのまちづくりに欠かせない「産業の振興」を牽引しようと岐阜県の企業が新工場を進出させ、この春新たなスタートを切る。

2023年1月7日・双葉町だるま市
2023年1月7日・双葉町だるま市
この記事の画像(11枚)

「ヨーイ、スタート!よいしょ・よいしょ・よいしょ」
2023年1月7日、双葉町の新春恒例行事「双葉町ダルマ市」
原発事故後12年振りに町内で開催され、賑わいをみせた。

復興途上の双葉町に新工場進出

双葉町ダルマ市で 浅野撚糸・浅野雅己さん
双葉町ダルマ市で 浅野撚糸・浅野雅己さん

岐阜県に本社を置く「浅野撚糸」の社長、浅野雅己さん(62)
主力の商品は特許技術を持つ糸を使用したタオル。
2023年4月、双葉町に建設している新たな工場でこのタオルの製造を始める予定だ。

浅野撚糸のタオル
浅野撚糸のタオル

浅野撚糸・浅野雅己さん:「歓迎されるのかな」と不安あったんですけどね。今日ここに来てね、勇気とか、やる気とか元気とか、そうしたモノをもらい・・もらいました。

津波で大きな被害を受けた双葉町の沿岸部。
浅野さんは欠かさず、この地区に足を運ぶ。

浅野撚糸・浅野雅己さん:ずっと、この辺り集落で20人近い方がね、この辺りで亡くなられて。ここは必ず、あの・・ご挨拶にというのか「お世話になります」という感じですかね。

双葉町の沿岸部を訪れた浅野さん
双葉町の沿岸部を訪れた浅野さん

学生時代を過ごした福島県への恩返し

「業務の拡大」、そして災害に備えて新たな製造拠点を探していた浅野さん。
大学時代を過ごした福島県に恩返しをしたいと進出を決めた。
そして4年前、数ある候補地の一つだった双葉町に初めて訪れ、衝撃を受けた。

福島大学時代の浅野さん
福島大学時代の浅野さん

浅野撚糸・浅野雅己さん:もうどう見ても何も無い、ただ人がいない。もし原発事故が無かったら、大勢の人がこの道を歩いてね。何か私も自然と涙が出てきたし、「ここで前に進みたい」と、衝き動かされました。全部周ってここが一番条件が悪かった、一番厳しいという。ただ一番左に振った振り子は右に振ります。この振り子が左にいった振り子が右に振る勢いで、まあ我々を乗せて頂こうかなっていう。

浅野撚糸・浅野雅己さん
浅野撚糸・浅野雅己さん

その日に双葉町で新たな工場を作ることを決めた。

双葉町・伊澤史朗町長:(誘致活動をしていた)当時の副町長の感触は、5つの自治体の中で3番手位だと(の感触)。後で浅野社長にお聞きしたら、3番手からかなり離れた4番手だったと。正に双葉町に工場を決めるっていうのは、私からすれば「サヨナラ逆転満塁ホームラン」ですよ。せっかく双葉に進出してくるんですから、双葉ブランドを立ち上げてほしいと、そういうお願いをしました。

双葉町・伊澤町長と浅野撚糸・浅野社長
双葉町・伊澤町長と浅野撚糸・浅野社長

その要望に応え、新たなシリーズ「ダキシメテフタバ」を共同で開発した。

双葉町・伊澤史朗町長:早いですよね。判断・行動が、そこは本当に我々行政はこれは見習わなくちゃなんないな、といつも思ってます。

「ダキシメテフタバ」を故安倍元首相に
「ダキシメテフタバ」を故安倍元首相に

新工場は本社の3倍の広さ

浅野撚糸・浅野雅己社長:建物が6800平米なので本社の3倍あります、ハイ。

新工場の総工費は約30億円。
製造した商品の販売やカフェなども併設する。
大きな決断をした矢先、会社の存続に関わる苦境に直面した。

建設進む浅野撚糸の新工場
建設進む浅野撚糸の新工場

コロナで迷った末の決断

浅野撚糸・浅野雅己さん:まさかのコロナです。迷いました。町長にも「今、銀行さんからストップかかった、(考える)時間くれと」

コロナ禍で年間の売上げは約2割減。
しかし、双葉町への思いから決断を変えることはなかった。

浅野撚糸・浅野雅己さん:双葉町長からは「この今のタイミングでないと、2022年の8月には住民が戻ってくる」と「働き場所が無いんや」と

新工場は地元採用で2023年春スタート

地域の活力となるよう新工場では、30人ほどの従業員のうち大学生や高校生など12人を地元で採用する。

浅野撚糸・浅野雅己さん:ドキドキハラハラ、でもワクワクかな、フフフ。(2023年は)史上最大の借金を背負って、債務超過になると思いますので、沈むだけ双葉と一緒にウチの会社も沈みましたので、今度はその分(ウサギのように)ハネます。必ずハネますので見てて下さい

復興から発展へ。この場所で浅野さんは新たな双葉町とともに歩んでいく。

(福島テレビ)

福島テレビ
福島テレビ

福島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。