今、ドラッグストアで風邪薬などが品薄になっている。福岡市内の店を取材すると、背景には外国人観光客による「大量買い」があった。また、中国の「春節」でさらなる薬不足が懸念されている。

ドラッグストアから「風邪薬」が消えた

博多駅近くにあるドラッグストアでは、風邪薬や解熱鎮痛薬など医薬品12点が欠品し、品薄の商品も相次いでいる。

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川崎健太キャスター:
福岡市内のドラッグストアです。風邪薬のコーナーですが、完全に欠品になっています。解熱鎮痛薬などは、ごそっと全部欠品になっています

なぜ、一部の薬が品薄の状況なのか?

大賀薬局 博多口店・廉萌店長:
新型コロナの陽性者が増えていますので、よく当店で解熱鎮痛薬を買われています。今、足りない状態になっています

福岡県内の新規感染者数は年末年始も1万人を超える日が続くなど、感染拡大が続いている。この状況に加えてインフルエンザも流行していることから、薬の需要が急激に高まり、解熱鎮痛薬など一部の薬の欠品が相次いでいるという。

福岡県では今も新型コロナの感染拡大が続いている
福岡県では今も新型コロナの感染拡大が続いている

さらに薬の品薄を招いているもう1つ大きな要因が、外国人観光客による「大量買い」だ。
韓国から来た観光客に話を聞いた。

――何を買っている?

韓国人観光客:
風邪薬、胃薬。プレゼント

お土産として風邪薬や胃薬など、日本の医薬品をまとめて購入する外国人が増えているのだ。特に大量に薬を買っていくという外国人が、中国からの観光客だ。

ある中国人女性は、解熱鎮痛薬を5つとせき止めの薬などをまとめ買いしていた。

中国人観光客:
私は普段から頭痛持ちで薬を使っている。日本の薬は効果が高いので買いました

自分用のほかにも、中国の友人に頼まれた分も購入したという。

中国で薬が不足…日本で“爆買い”して転売か

中国人観光客による大量買いの背景にあるのは、新型コロナの感染者が急増したことによる中国本土の薬不足だ。

中国のSNSでは、日本のある風邪薬がコロナに効くという噂から、その薬を“爆買い”する様子がいくつもアップされ、中には「現在、全て日本で購入したものを中国に送ります」と、日本から転売しようとする動きも見られる。

福岡でも中国人観光客が薬を大量購入する現象が起こっていると、中国出身の店長も実感している。

大賀薬局 博多口店・廉萌店長:
中国の人は、多いときは1人同じ商品を5個とか10個とか買われていますね。自分だけのためでなくて、家族とか友だちにも頼まれて

「薬が買いたくても買えない」 “春節”でさらなる欠品の懸念も

このような薬の「大量買い」は、すでに私たちの生活に影響が出始めている。

頭痛薬を買いに来た客:
頭痛がするので買いに来たんですけど、きょうは即効性のものがなくて。いつもは買えています。いつものじゃないと効きにくい

何軒か薬局を探し回っても、普段使う自分に合った薬が入手できないケースも出てきている。
こうした中、厚生労働省は、薬局やドラッグストアの協会に対して、医薬品を販売する際には個数制限などを設けるよう異例の要請をした。

大賀薬局 博多口店・廉萌店長:
多くの方が必要なときに買えるような環境を作りたい

このドラッグストアでも、品薄の商品は個数制限を設けて対策をしている。

そして、さらなる薬不足に陥るのではないかと懸念されているのが、1月21日に迫った中国の春節だ。

大賀薬局 博多口店・廉萌店長:
もうすぐ中国の春節になりますので、春節になると中国の観光客が増えてくると思います。今の状態より薬がさらに欠品になる可能性も出てくるのではと思います

春節は例年、中国人の大移動が繰り広げられる大型連休で、日本の薬を“爆買い”するのではないかと心配されている。

特に2023年の春節は、厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策が事実上終了したことから、中国政府は2022年の約2倍となる、延べ21億人が旅行や帰省で移動すると予測している。
そして中国の大手旅行サイトでは、日本は海外の人気旅行先の3位に入っているのだ。

厚生労働省は、現時点では、製薬会社の在庫も含め一定量は確保できているとしているが、大量購入が相次ぐと供給が滞るおそれもあるとしている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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