2020年6月、福井市内の学習塾に勤務していた元同僚の男性を殺害し、遺体をダム湖に遺棄したなどとして強盗殺人や死体遺棄などの罪に問われている被告の男の裁判員裁判が、1月12日に福井地方裁判所で始まった。

弁護人は殺人については認めたものの、強盗殺人は否定し争う姿勢を示した。
裁判のポイントを解説する。

「ダム湖死体遺棄事件」 1月12日に初公判

強盗殺人と死体遺棄、銃刀法違反の罪に問われているのは、福井市の無職、丹羽祐一被告(48)だ。

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起訴状などによると、丹羽被告は2020年6月28日未明、勤務していた学習塾の同僚、青柳卓宏さん(当時40)から借金の返済を求められ、返済を免れようと青柳さんの自宅駐車場で包丁を使って背中を刺した。

その後、車に押し込み錐(きり)で首などを何度も刺し殺害。青柳さんの部屋から現金約308万円を奪った。29日未明、遺体をスーツケースに詰め込み、坂井市内のダム湖に遺棄したとされる。

1月12日から始まった裁判員裁判。黒のスーツに青のネクタイ姿の丹羽被告は、自分の名前をはっきりした口調で答えた。

検察側は冒頭陳述で、丹羽被告は犯行当時、青柳さんに1,160万円の借金があり、青柳さんから「法的措置を取る」と言われ、返済を免れるため殺害したとして強盗殺人罪が成立すると主張した。丹羽被告は「起訴された内容についての考えや思いは弁護人に伝えてあるので、弁護人に聞いてください」と述べた。

弁護人は殺害については争わないとしたが、殺害の動機は「青柳さんに対する借金を完済したとのうそが家族にばれるのを恐れたためで、返済を免れる目的ではない」などとして、強盗殺人罪を否定した。

“強盗殺人罪”か“殺人罪”か…裁判で新たな事実も

裁判の最大の争点は、強盗殺人罪か殺人罪のどちらが成立するかだ。弁護側は、丹羽被告はもともと自分の親に青柳さんからの借金の額は300万円と嘘を言い、親の援助で300万円を返済した。事件当日、青柳さんから「法的措置を取る」と言われ、「親についていた嘘がばれる」、「家族の信頼を失いたくない」と思い殺害したと主張した。

また、殺害後に青柳さんの部屋から持ち出した現金300万円余りについては、弁護側は「青柳さんが死亡したため現金の占有者でなくなった、もともと奪うつもりもなく窃盗罪も成立しないのではないか」と主張した。

このほか、裁判で明らかになった事実もあった。
検察側は、丹羽被告の犯行後の行動について、殺害後にいったん福井市内の山中に遺体を埋めようとしたが失敗に終わった。その後、福井市内の量販店で遺体を入れるスーツケースと重りにするダンベルなどを購入し、翌日にダム湖に遺棄したという。

遺体の発見が報道された2020年6月30日、丹羽被告は大阪で麻雀をしていた。翌7月1日に福井警察署へ出頭した。弁護側は「気を紛らわせるために麻雀をした」と話している。

約2カ月間続く裁判では、市民から選ばれた裁判員が犯罪の経緯や、被告の態度、青柳さんの遺族の思いなどを聞き、審理を進めることになる。早ければ3月10日にも判決が言い渡される。

(福井テレビ)

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