自民党の萩生田光一政調会長は25日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、防衛力強化に向けた防衛費増額の財源をめぐり、最終的に増税をすると決めた場合には、岸田文雄首相が衆議院を解散し、国民に信を問うのが筋だとの認識を示した。

萩生田氏は「7月の参議院選挙でNATO(北大西洋条約機構)並の対GDP(国内総生産)比2%の防衛費を積み増すことを(国民に)約束したが、その財源を増税で賄うことは約束していない」と指摘。「(増税という)大きな判断をする時に国民の判断を求めるのは、歴史的にも今までの党としての判断だ」と述べた。

萩生田氏は「総理が先頭でお願いしている以上、増税がなくなるかもしれないという淡い期待を与えるのは間違ったメッセージになる」と言及しつつ、「歳出改革の努力、特別会計など、まだまだしっかり見れば使える金はあるのではないか。来年深掘りしていく」と話し、国民負担の軽減に向け、引き続き増税以外の財源を探る姿勢を強調した。

萩生田氏はまた、国債の「60年償還ルール」を見直して償還費の一部を財源に充てる案に改めて言及し、「(償還期間を)60年から80年に延ばせば、年間4兆円を生み出すことができる。こういったものを上手に使うことはできないか考えてみたい」と語った。

さらに岸田首相が、将来的に倍増を目指している子ども政策関連予算について、来年6月ごろにまとめる「骨太の方針(経済財政運営の指針)」で当面の道筋を示す考えを示していることを踏まえ、萩生田氏は、防衛費増額の財源についても、子ども政策の財源などとあわせて「骨太の方針」の取りまとめまでに党内議論の結論を得る考えを示した。

以下、番組での主なやりとり。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
岸田総理は23日、経済界の関係者らを前に行った講演で、防衛費増額の財源の不足分を増税でまかなう方針について「安定財源は将来世代に先送りすることなく、われわれの責任として対応すべきだ」と述べ、法人税等の増税に理解を求めた。一方、萩生田さんは「税以外の財源についても政調会長の下で来年早々から精力的に議論を進めていきたい」と話している。

萩生田光一氏(自民党政調会長、前経産相):
岸田総理が防衛費を増額するにあたり、将来の安定的な財源を税に求めることを国民に率直に訴えたことは評価したい。他方、増税は来年から行われるわけではない。どういう負担をしてもらうのか、そもそも防衛の構えとはどのようなものかを国民にしっかり説明していただき、そのうえで、なるほどこれなら国民も少しずつ負担しないといけないよねと段階的に理解をしてもらう必要があるのではないかと私は思っていた。だから、この年末に税の議論はせず、来年1年かけて与党として方向性と結論を出そうという提案をした。しかし、総理はスタートの段階で一定の税を確保することを国民に知ってもらい、そのうえで、できるだけ(国民の)負担を少なくできるようなことを同時に考えてほしいということだったので、年明けに議論を始める。令和9年(2027年)以降にNATO並みのGDP比2%の防衛費を維持するためのスキームができ、約1兆円を税でまかなおうということを政府は決めたが、必ずしも1兆円でなくてもいいはずだ。歳出改革の努力や特別会計などまだまだしっかり見れば使える金はあるのではないか。来年この深掘りをする。だからといって、税がなくなるのではないかという期待を与えるのは逆に間違ったメッセージになる。負担額をどうするかということを、制度をしっかり見直していきたい。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
増税ありきで議論するのではなく、来年のどこかの時点で増税の時期を決めるということか。

萩生田氏:
安定した財源確保ということでは、将来的に税をお願いするということはわれわれも考えていた。それをいつ言うか、いつどういう形で説明するかというアプローチの違いが政府と自民党の間にはあったのかもしれない。今はこうして公になっているわけだから、企業の皆さんにも一定の負担をお願いしますねということを総理が先頭でお願いしている以上、それがなくなるかもしれないという淡い期待を持たせるのは間違ったメッセージになる。ただ、負担率をどうするか、この4分の3をどう埋めていくか、4分の3なのか5分の4なのか、そういうことはしっかり見ていきたい。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
政治だから多数派が勝っていく話になる。増税の話は国民にとってものすごくシビアな話だから、場合によっては、岸田さんが(政治的に)負けてしまうこともあるのか。増税反対派の萩生田さんは...。

萩生田氏:
僕は(増税)反対派ではない。

橋下氏:
でも、基本的には反対ですよね、いきなりの増税なんて。

萩生田氏:
いきなりの増税は反対だ。もし増税を決めるということであれば、過去の政権もいずれもそうだったように、やはり国民に信を問うということをわれわれ国会議員は国民に約束しなければいけない。今回少し違和感を覚えたのは、7月の参議院選挙でNATO並みのGDP比2%の防衛費を積み増すということを約束したが、その財源を増税でまかなうことは約束していない。今まさにそういう議論が始まったところなので明確な方向性が出た時には、いずれ国民に判断をいただく必要は当然あると思う。

橋下氏:
増税するなら衆議院の解散総選挙で国民の信を問うのが筋だというのが党の考え方か。

萩生田氏:
党としては基本的にはそう考えている。

橋下氏:
萩生田さんは1年かけて議論すると言っているが、子育て政策、教育政策などに関する大きな方針が来年6月ごろの「骨太の方針」でまとまるというスケジュールになっている。そこまでに財源の話はまとまるか。

萩生田氏:
そうですね。1年(かけて議論)というのはのんびりしすぎだ。

橋下氏:
6月までに(まとめるか)。

萩生田氏:
「骨太の方針」までには方向性を決める必要がある。

橋下氏:
(防衛費増額と子ども政策関連予算倍増を合わせると)年間15~20兆円(になると思うが)の金を全部国債でというのは非現実的だ。仮に防衛費の増税だけでなく、子育て関連費も増税でということになれば、国民に1回、信を問う、選挙で信を問うというプロセスが必要だと、自民党として考えるか。

萩生田氏:
年明けに歳出改革、特別会計余剰金、こういったものにしっかり目配りして金を生み出すことができないかという作業がある。その中で防衛費のみならず、子育て支援、GX(グリーントランスフォーメーション)、こういったものも含めて考えていく必要がある。国債イコール借金だと解説する人がいるが、すべてがそうではない。国債の上手な運用もしながら、それでも足りないところにはやはり税をお願いするということは当然出てくると思う。そういう大きな判断をする時に、国民に判断を求めるのは、今回のみならず、歴史的にも今までの自民党の判断だ。

松山キャスター:
萩生田さんは国債発行から60年間で完済するルールについても見直しを行ってもいいのではないかとの考えを示している。償還期間が延びれば延びるほど利息は増える。元本をどんどん返済していくという概念を含んで言っているのか、あるいは利払い分だけを当面払っていって先延ばしすると考えているのか。

萩生田氏:
利率がどうなるかも含めて都度考えていかなければいけないことだ。ただし、そもそも国債の剰余金を積み立てているのは、日本の国債の信用が低かった時代にセーフティーネットで始めた制度だ。先進国でこういう基金を持っている国は全くない。党内の若い人たちから「これは使えるのではないか」と提案があり、私は「それは検討に値する」と申し上げている。今、松山さんがおっしゃったメリット・デメリットもあると思う。来年以降の会議の中で議論する。それから、ただ単にそのすべてを転用できるということではなく、(償還期間)60年を80年に延ばせば、今の試算では年間4兆円を生み出すことができる。こういったものを上手に使うことはできないかということも同時に考えてみたい。

松山キャスター:
それは令和9年(2027年)以降でも、そうしたことも含めて検討していくべきだということか。

萩生田氏:
最初から何か予見性をもって私が「これとこれやります」と言うと、党内の民主主義に反する。さまざまな考えを聞きながら検討してみたい。

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