今年7月、神奈川県厚木市の駐車場で、車内に放置された幼い姉弟が死亡した事件。逮捕された母親は、真夏の暑い日に、2人を車内に放置し、熱中症により死亡させたとされる。さらに、逮捕を免れたかったのか、母親は、警察などに対してウソの説明をしていたのだった。
2歳の姉と1歳の弟 死因は熱中症
長沢麗奈被告(22)は、今年7月29日午後5時ごろ、厚木市にある公園の駐車場から、「子ども2人の意識はない」と119番通報した。通報を受け、救急隊員と警察官が駆けつけると、車の後部座席から意識不明の状態で、幼い姉弟が見つかった。

姉の姫梛ちゃん2歳と、弟の煌翔(こうが)ちゃん1歳だ。2人は、病院に搬送されたが、その後死亡が確認された。長沢被告は、当初、警察官らに対して、「公園で遊んだ後、子どもが寝たので、30分ほどクーラーをつけず窓を開けて、後部座席で寝かせていた。自分は前の席に座ってスマートフォンを触っていた」と説明したという。
当初、神奈川県警は、現場の状況などを調べる中で、すぐに、長沢被告を逮捕せず、任意での事情聴取を重ねていた。そして、発生から4日後の8月2日、煌翔ちゃんの死因が熱中症だったことが判明したことで、「保護責任者遺棄」での逮捕に踏み切った。

さらに翌日、姫梛ちゃんの死因についても「熱中症を伴う多臓器不全」と明らかになった。逮捕された長沢被告は、調べに対して、「放置したことは間違いない」と容疑を認め、「子どもに申し訳ない」と話していたという。
幼い姉弟を車内に残して 知人のもとへ
公園に親子三人で訪れ、遊び疲れた子どもを車で寝かせていた際に起きた、悲しい事故なのか。母親は、突然の不幸に見舞われたのだろうか・・・。しかし、取材を進めるうちに、驚きの真相が明らかになっていた。

長沢被告は、そもそも2人を公園で遊ばせてなどいなかったのだ。長沢被告は事件直前、公園の近くにある知人の家に遊びに来ていた。この時、知人宅の駐車場に止めていて、子ども2人は車の中に放置したままだった。
知人は、長沢被告に「子どもは大丈夫?」と尋ねていたという。そして、1時間ほど、知人宅で過ごした長沢被告が、車に戻ると、幼い2人が、後部座席で、ぐったりしているのを見つけたという。
体温40度 ぐったりした2人
ところが、その後、長沢被告は、信じられない行動に出る。すぐに119番をすることなく、車に乗って、500メートルほど離れた公園の駐車場まで移動。そこに着いてから、やっとスマホを手にして、通報していたのだ。

救急隊員が駆けつけた際、長沢被告は、幼い2人に、それぞれ片手で、心臓マッサージをしている最中だったという。この日は、周辺の気温が30度を超えていて、2人の体温は40度を超えていたそうだ。
長沢被告は、当初、「窓を開けて後部座席で寝かせていた」と説明していた。しかし、救急隊員は、車の窓が閉まっていたことを確認していた。エアコンの吹き出し口からは、微量の風が出ている程度。チャイルドシートも設置されておらず、2人は後部座席に仰向けで寝かされていたという。
数週間前にも"車内放置”
その後、県警や行政に対する取材で、長沢被告が、事件が起こる数週間前にも、県内の別の場所で、店の駐車場に止めた車の中に、煌翔ちゃんを放置したまま、買い物に出かけていたことも判明した。

児童相談所に通告された長沢被告は、「虐待だと理解している、二度としない」と述べたという。ただ、反省の言葉をむなしく、再び、車内に放置。幼い2人の命が奪われる事件が起きてしまう。
なぜ、長沢被告は、「公園で子どもを遊ばせていた」とウソをついたのか。なぜ、「車の窓は開けていた」と虚偽の説明をしたのか。なぜ、「二度としない」とざんげしたのに、同じ過ちを繰り返したのか。

助けを呼べず、自力では、車の外に出ることができなかった、2歳の姉と1歳の弟。猛烈の暑さの車内で、母親が戻るのを待つしかなかっただろう。なぜ、長沢被告は、ウソを重ねたのか。その”理由”は、今後、法廷で明らかにされる。
(フジテレビ社会部・神奈川県警担当 魚住菫)