2022年9月23日、西九州新幹線が開業した。区間は、武雄温泉から長崎の約66km。開業効果や在来線への影響など、“日本一短い新幹線”のその後を取材した。

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悲願の開業で全国から“新たな客”

佐賀県南西部に位置する嬉野市。これまで、県内の市で唯一鉄道が通っておらず、新幹線は長年の悲願だった。

温泉や旅館が立ち並び、県内有数の観光地である嬉野市。西九州新幹線の開業は、これまでなかった“鉄道で来る客”が取り込めると期待されている。

長崎からの利用者:
気軽に短時間で佐賀まで来られるという感覚が、今回はすごく楽しかった

大阪からの利用者:
新幹線ができたから、ちょっと乗ってみたいと思って。そうじゃないと嬉野温泉はなかなかアクセスが、車がない身はつらいので

西九州新幹線と同時に開業した嬉野温泉駅は、在来線は通らない新幹線単独の駅。駅前には、自慢の温泉を生かした足湯などの施設や市内の観光情報を集約した道の駅もできたが、開発はまだ途中。アメリカ大手のホテルなど、民間の投資も進む。

嬉野温泉観光協会・旅館組合 山口剛代表:
(嬉野全体でも)大体120%くらい、前年比で。ほとんど満室状態です。嬉野は

嬉野温泉の観光協会と旅館組合、いずれも代表を務める山口剛さんは、新幹線の開業で“新たな客”が生まれていると話す。

嬉野温泉観光協会・旅館組合 山口剛代表:
もともと佐賀・長崎・福岡が多いが、パーセンテージにしたら、関東・北陸とかも。もう全国各地

これまで、全体の8割は北部九州から車で訪れる客だったという嬉野温泉。一方、新幹線開業後は全国各地までターゲットが広がった。

山口さんが副社長を務める、1925年創業の老舗旅館・大正屋では予約が多く入っている。

大正屋 山口剛副社長:
10月が3,401人、11月が4,321人。だいたい、月3,000人超えるか超えないかが今までの平均だった。平日でも8割から9割くらいは部屋が埋まっている

課題は観光客の“リピーター”

前年と比べた売り上げは、10月が174.9%、11月は133.1%と想像以上。ただ、この開業効果を継続的に生かしていけるかが課題。そのためにも各旅館はリピーターの獲得に力を注ぐ。

大正屋 山口剛副社長:
嬉野温泉の泉質の良さ。自信を持って、良い商品があるので、どんどん積極的にアピールしていきたい

特急激減で通学困難な学生も…

新幹線の沿線地域が盛り上がる一方、利便性が低下した地域もある。並行在来線となった江北 - 諫早間では、1日に上下45本あった特急列車が14本に減った。

肥前鹿島駅から佐賀市の大学に通う大学生:
大学の時間に合わせて特急がないとかも、けっこうあったりする

肥前鹿島駅から福岡県の大学に通う大学生:
江北まで行って、江北から特急に乗っている。学校に合う時間が1つしかない

西九州新幹線の開業で並行在来線となった、長崎本線の江北 - 諫早間。特急が大幅に減っただけでなく、長崎まで行かずに肥前鹿島までになった。

長崎市内の大学に通う、中村弘一郎さん、18歳。以前は、特急列車とバスを使い2時間ほどで通学できていたが、長崎行きの特急がなくなり、状況が一変。普通列車とバスを使うと約3時間、さらに最寄り駅・肥前鹿島から1限目に間に合うのは、早朝5時台の列車。

長崎市内の大学に通う 中村弘一郎さん:
水曜日だけは1時間目があるので、午前9時にどうしても大学に行かないといけなくて、しかもそれが必修単位なので、落とすことができない。きょう試しているのが、小長井という長崎県の駅まで父に送ってもらっている

父の安弘さんとともに、自宅からの通学方法を模索し続けている。

父・中村安弘さん:
やっぱり後押ししたい。毎日申し訳ないみたいな感じで子どもは言っているけど、親としては当然だし

11月には、父・安弘さんの声掛けで、同じ課題を抱える鹿島市民が集まった。

父・中村安弘さん:
並行在来線となったことによって、長崎方面とか、いま使っているみなさんで結構いろんな課題とか、利便性の問題とか出ているので…

鹿島市から長崎市へ通勤する男性:
できる限り乗り換えがない、少ないというのが、通勤通学している人の1番のおもいなんじゃないかなと

行政に任せるだけではなく、実際に利用する自分たちだからこそ言えることがある。利便性の向上を求め、動き出している。

(サガテレビ)

サガテレビ
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