北陸新幹線の福井延伸まで残り1年余り。今回は石川県の金沢駅の現状を調べた。7年前の開業で観光客が急増し、街並みや雰囲気は一変。新幹線がもたらした変化や官民の対応を聞き、福井開業のヒントを探る。

誘致に求められる“民間のもてなす力”

2015年3月開業当初、JR金沢駅西側では地価上昇率が全国1位になった。開発は加速し、ホテルの建設が相次いだ。

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観光客を呼び込もうと立ち上がったのが、金沢市内7つの都市型ホテルでつくる「金澤八家」だ。「足を引っ張るより、手を引っ張れ」を合言葉に誘客プロジェクトチームとして発足した。

ホテルマンの視点で観光プランやイベントを提案。顧客は国外にも及ぶ。
立ち上げからプロジェクトの実行部隊として活躍する、金沢ニューグランドホテルの三木淳副総支配人に話を聞いた。

――これまでホテル同士で協力したことはあった?

金沢ニューグランドホテル・三木淳副総支配人:
(ホテルの)クラスが違えばライバル視しないが、同じクラスだとライバル。ギラギラの目をしながら

そんな業界が1つになれたのは、金沢ニューグランドホテルの庄田正一社長の人柄にあった。

金沢ニューグランドホテル・三木淳副総支配人:
うちの社長は生粋の金沢人。地元愛の強さに、転勤族の支配人たちが虜になった

開業後、東京からの宿泊客が占める割合は3割から7割に急増した。建設ラッシュで増えたビジネスホテルの影響については「コンセプトが異なり、すみ分けができている」という。

金沢ニューグランドホテル・三木淳副総支配人:
地域の人と一緒に成長していくというのが都市型ホテルの宿命。金沢のブランディングに貢献するというのが一つの柱。行政のホテルへの理解が深まった

プロジェクトを進めるうちに行政との結びつきが強化された。誘客には「官民協働」の姿勢が欠かせないと強調する。

金沢ニューグランドホテル・三木淳副総支配人:
官は「告知力」「組織力」「資金力」、そして民間が「もてなす力」。行政だけでなく民間の力が必要

最後に、福井開業に向けて必要な視点を質問した。

金沢ニューグランドホテル・三木淳副総支配人:
ホテルや旅行会社などの業界で引っ張る人が必要。福井愛をもっている民間の人を上につけて、色んなところのよそ者を入れる

今こそ「地元の人が足を運びやすくなる市場」に

金沢駅から歩いて15分ほどの位置にある近江町市場を訪ねた。約300年の歴史を誇り、市民の生活を支え続けている。

――金沢開業後、お客は増えた?

大口水産・荒木優専務:
新幹線開業後、客は倍以上にはなっているという肌感覚。今までは地元の消費者市場として成り立っていた。観光客が増えて、地元の人が敬遠しているところもある

市安商店・安田恒夫社長:
飲食店関係は潤っているかもしれないが、地元のお客相手に仕事をしている我々としては地元のお客さんが少なくなったので、マイナス面が多い

近江町市場商店街振興組合・石山博之事務長:
地元の人に愛されてこその市場。近江町市場は「金沢市民の台所」をキャッチフレーズにしているので、今こそ原点に立ち返り、地元の人が足を運びやすくなる市場にしなければならない

「もう一度、北陸を認識して」

新幹線開業の利用者数については、在来線特急の頃と比べる約3倍に増加した。それにともない、宿泊客も増加している。

金沢市が観光政策で力を入れていることを聞いた。

金沢市観光政策課・古谷健課長:
当初から広域連携は重視して新幹線の開業を迎えた。金沢だけの力ではリピートや滞在日数を増やすことは難しい。金沢の南には五箇山、白川郷、高山がある。そういう都市と最初から連携してお客に来てもらわないとだめだという認識だった。今度の敦賀延伸でもう一度、北陸を認識してもらう

北陸3県しっかりPRしていかないといけない1年4カ月後の福井開業を、金沢では“第二の開業”ととらえる。そして新型コロナウイルスの影響で停滞する経済の回復を図るため、着々と準備を進めている。

(福井テレビ)

福井テレビ
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