人生100年時代ともいわれる中、福井県内で働く高齢者は7万2800人、就業率は31%と3人に1人が働いていて、就業率は全国トップです。一方で課題になっているのが高齢者の労働災害です。高齢者にも安心して働いてもらうための県内企業の取り組みを取材しました。
県内で労災対策に取り組む6つの事業所が、7月に福井労働局で表彰されました。どの事業所も、最も多い労災の原因である「転倒」の対策をしっかりとっていることが評価されました。
受賞した事業所のうちの1社、福井市にある日本ダムは、織ネームやプリントネームなどの開発・製造を手掛け、製造現場にはさまざまな大型機械が並びます。労災対策に力を入れる理由を聞いてみるとー
日本ダム・保田貴子さん:
「製造業なので、長期の欠勤が続くと納期の対応ができなくなるため、対策をしている。高齢の人が増えてきたので、転倒防止のために段差を無くす努力をしている」
日本ダムでは、つまづいたり転倒したりしないよう、段差を解消しバリアフリーに、また、出合い頭の衝突を防ぐため廊下にはカーブミラーを設置。ドアには、向こう側に人がいるとランプで知らせてくれる仕組みを導入しました。
対策はこうしたハード面だけではありません。月に1回、1時間かけて工場内をパトロールしているのです。棚に何が置かれているか、きちんと表示されているか、指定の場所からはみ出しているものがないか、こうした複数の項目をチェックして回ります。
担当者は「通路にはみ出ると、歩いているときに足をぶつけてしまうことがあるので、細かいところまで確認するようにしている」と話します。
床に示されたラインからはみ出した物を見つけると、写真を撮り、すぐにチェック。情報を共有します。こうしたパトロールは、管理職や一般社員、パートなど、立場や所属の異なる4人一組で行っています。
日本ダム・保田貴子さん:
「自分の部署しか知らない人もいるので、工場見学も兼ねて、いろんな視点で点検している。管理職やリーダー、一般社員の視点でいろいろ見方が変わってくるので良いと思う」
また、従業員の体力テストを行い、身体機能を客観的に見てもらう取り組みもしています。こうした取り組みが功を奏し、パトロールを始めてからの10年間「労災ゼロ」を記録し続けています。
福井労働局によりますと、2024年の県内の労災事故を年齢別でみると60代以上が全体の31%で最も多くなっています。
厚労省中央産業安全専門官・澤田京樹さん:
「年を取ると誰しも身体機能が低下してくる。筋力やバランス能力など。それによって転倒や墜落、転落などの労災が増える」
また、高齢者の労災には特徴があるそうです。
厚労省中央産業安全専門官・澤田京樹さん:
「労災が起きた時の休業期間の統計を見ると、年齢が高くなればなるほど、労災で休業する期間も長くなってしまうというデータがある」
本人はもちろん、企業にとっても大きな負担となる労災。2026年4月からは、高齢者の労災防止のための対策が、法改正により企業の努力義務となります。誰もが安全に働ける職場づくりは、これからの時代、企業にとって欠かせないものといえそうです。
人生100年時代、働く高齢者が増える中、長期化する特性もある高齢者労災を防ぐため、安全な環境づくりの重要性が増しそうです。