北陸新幹線の福井延伸まで残り1年余りとなった。北陸新幹線に関連する他県の先行事例などを取材し、福井県内の課題を考える。今回は富山県の「宇奈月(うなづき)温泉」を取材した。

「黒部宇奈月温泉駅」新設で観光客が増加

富山は「北陸新幹線」開業後に首都圏からのアクセスが向上した。観光地にはどのような効果が現れ、現在はどのような姿になっているのか。

福井テレビ・大久保直輝記者:
富山の宇奈月温泉に来ました。こちらの噴水も温泉が使われていて、いや~温かいです!

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富山県の東部、黒部市の大自然の中に宇奈月温泉はある。大正時代に温泉が見つかり、約100年の歴史を持つ富山最大規模の温泉地だ。

2015年の北陸新幹線金沢開業に合わせ、近くに「黒部宇奈月温泉駅」が新設された。東京から乗り換えなしで駅まで約2時間20分。温泉地までは3時間もあれば到着できる。
地元の観光局によると、これまでは特急などを乗り継ぎ5時間ほどかかっており、「約2時間の短縮効果があった」と話す。

地元の友人グループ:
いろんな設備も新しくなって、近くに住んでいるけど来たいと思える場所になった

市内で飲食店を経営:
東京や長野から来たというお客さんが多いので、地元のおいしいお酒や料理を紹介して「また来ます」と言われたらうれしい

東京の観光客:
東京からきた。新幹線で。乗り換えなしは大きい、楽って感じです

新幹線が開業するまで温泉地全体の観光客は減少を続けていたが、開業の年は前年比で30%増加した。いわゆる“開業効果”が顕著に表れた。

宇奈月温泉旅館協同組合・濱田政利理事長:
お客さんの数はものすごく増えた。非常にいい効果が出ている。首都圏からここまで2時間20分なので滞在時間が長くなった。リピーターになってもらうために質を高めなければならない

コロナの影響も…温泉旅館で続く試行錯誤

温泉旅館の1つ「桃源」で話を聞いた。

桃源(温泉旅館)石田有紀おかみ:
この客室は部屋が3つあり、こちらは本間でございます

この旅館では、新たなニーズに対応しようと露天風呂付きの客室を複数整備した。
その背景には「新型コロナウイルス」の存在がある。

桃源(温泉旅館)石田有紀おかみ:
コロナは大きな要因。大浴場へ行くのが心配というお客さんも多い。また、外国のお客様から選んでいただける基準にもなる

さらに、旅行の形態が「団体から個人にシフト」していることを踏まえ、宴会場を個室の食事スペースとダイニングに改装したり、貸し切りの温泉を増設したり、魅力を高める取り組みを続けている。

桃源(温泉旅館)石田有紀おかみ:
関東圏のお客様が圧倒的に増えたけれど、関東圏から新幹線で行ける温泉地はたくさんある。選んでもらう旅館になるには、新幹線がつながったことで、よりハードルが上がったと考えている

実際、開業効果は徐々に小さくなった。新幹線開業後の宇奈月温泉全体の観光客は、開業の年がピークとなっている。

“北陸新幹線の延伸”に膨らむ期待

宇奈月温泉の観光の目玉といえば「トロッコ電車」だ。紅葉の時期には1日5,000人が利用するという。
山あいを黒部川に沿って走る黒部峡谷鉄道。北陸新幹線の開業効果は一定程度あった。ただ、それほど長くは続かなかった。観光客は、開業の年に前年比で1.2倍に増加したが、2年後には元の数字に戻った。

黒部峡谷鉄道・浦島孝之営業部長:
ブームというのは仕方ない。東京のお客様に喜んでもらって、口コミが広がっていけばいいと思っていた

ただ、北陸新幹線が福井に延伸する2024年には「黒部ダム」などとつながる工事用ルートが一般開放される予定だ。観光客を新たに呼び込む好機として期待をかける。

黒部峡谷鉄道・浦島孝之営業部長:
もう一度、北陸地方に注目が集まる。富山、石川、福井の3県で連携して長く滞在してもらい、北陸を堪能してもらえたらと思っています

黒部・宇奈月温泉エリアでは、新幹線の福井延伸を“第二の開業”ととらえ、再び期待を寄せている。

(福井テレビ)

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