群馬県伊勢崎市で、去年3月、暴力団同士が乱闘となり、拳銃が発砲されるなどして、ケガ人が出た事件で、先月28日、暴力団幹部の男が逮捕された。その後の調べで、乱闘のキッカケが、「キャバクラ店の引き抜き」をめぐるトラブルとみられることが分かった。
逮捕された幹部 警察車両で大暴れ
逮捕されたのは、指定暴力団・稲川会系幹部の上原淳容疑者(54)。逮捕翌日の先月29日、送検された際、警察車両の後部座席の真ん中に座る上原容疑者。カメラをにらみつけて、大声をあげ、座席を足蹴りして、両サイドの警察官に制止される場面も見られた。

上原容疑者は、去年3月4日午前3時半ごろ、伊勢崎市本町の路上で、特定抗争指定暴力団・山口組系の組長(50)と組関係者(28)に向けて、拳銃を数発、発砲するなどした疑いがもたれている。
110番通報を受けて、警察官が現場に駆け付けたが、金属バットや血痕、割れた車の窓ガラスなどが散乱しているだけで、双方の組員らは立ち去った後だった。未明の繁華街で発生した乱闘・発砲事件とは言え、現場は駅の近く。商業施設や複数の学校も点在するエリアだ。
延べ5万8000人を投入した”執念の捜査”
発生直後、群馬県警は、拳銃で撃たれた組長の男ら2人が、太田市の病院で治療を受けていることを察知。この病院では、乱闘の際に、車で轢かれた別の関係者も治療を受けていたという。拳銃や金属バットだけではなく、車でも、”ひき殺そう”とした可能性がある。



事態を重く見た県警は、刑事部長をトップとする捜査本部を設置。今年2月、捜査線上に浮上していた上原容疑者を、別の銃刀法違反事件で逮捕した。容疑は拳銃の単純所持。この拳銃が、発砲事件で使われたものかどうかは分かっていない。
翌3月に、上原容疑者は、処分保留で釈放されたが、県警は、周辺の防犯カメラや、ドライブレコーダーの映像解析、関係者の事情聴取を重ねた。延べ5万8000人の捜査員を投入した”執念”の捜査の結果、上原容疑者が、発砲事件に関与した疑いが強まったという。
キッカケは「キャバクラの引き抜き」か
県警は、先月28日、上原容疑者を、前橋市内の立ち回り先で、逮捕した。容疑は、殺人未遂と銃刀法違反。今回の銃刀法は、拳銃の”発射”容疑だ。県警は、当初から、双方の組による対立抗争ではなく、「もめ事」がキッカケで、乱闘・発砲に至ったとの”見立て”で捜査を進めてきた。
その後の調べで、その「もめ事」が、「キャバクラ店の引き抜き」をめぐるトラブルとみられることが明らかになったという。捜査関係者によると、乱闘に関わった組の関係者が、あるキャバクラ店の女性従業員を引き抜こうとしたとのこと。

ところが、その店には、別の組の関係者の息がかかっていて、トラブルに発展。双方の間で、話し合いの機会が持たれたものの、結局、決裂し、乱闘になったとみられている。その挙げ句に、拳銃まで発砲されたというのだ。
稲川会系、山口組系が、組織として、どこまで”引き抜き”トラブルに関わっていたのかは分かっていないが、幹部が発砲し、組長が撃たれる事態となったのだった。県警は、今月2日、共犯の21歳の男を新たに逮捕。乱闘・発砲に関わった他の組員らについても追及する方針だ。