厳しい「ゼロコロナ政策」に対する抗議デモが広がる中国。「敵対勢力を断固取り締まる」とする当局側が、締め付けを強化する事態となっている。

中国各地に広がる抗議

抗議活動のきっかけとなったのは、11月24日の新疆ウイグル自治区ウルムチの火災だ。犠牲者が出たのは「ゼロコロナ政策」の厳しい行動制限で救助が遅れたからではないかと抗議の声が上がり、上海では集まった市民と警察官が衝突する事態になった。

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「表現の自由」を象徴する白い紙を掲げる抗議活動は、北京・浙江省杭州・香港など中国各地に広がり、山東省では「封鎖を解除しろ」と抗議する住民と治安当局がもみ合いになる事態にも。住民が訴えているのは、厳しすぎるコロナ対策への不満だ。

しかし、国営の新華社通信は、司法・警察を統括する部門が「敵対勢力の浸透と破壊活動、社会秩序を乱す犯罪行為を断固取り締まる」との方針を、28日の会議で確認したと伝えた。当局は締め付けを強化し、政権批判につながる動きを抑え込んでいく姿勢だ。

現在の上海は

ゼロコロナ対策への抗議が相次ぐ中国。警戒が強まっている現地の様子を、関西テレビの特派員に聞く。

(Q:現在の中国国内の様子は?)
森雅章 上海支局長:
中国各地で散発的に抗議活動が起きているので、全土という意味では依然、緊張が高い状況が続いています。先週末の26、27日に抗議活動が行われた上海の現場へ、今日30日の朝にもう一度行きましたが、周辺には柵やフェンス、壁が設置されていて、高い警戒感を感じました

(Q:上海のデモは、なぜ毎日行われない?)
森雅章 上海支局長:

中国市民は、気持ちの部分では、ゼロコロナ政策に対する不満や不安はある程度共通で持っていると思います。その中で、実際に行動に移せる勇気がある人、かたちにできる人というのが、あのような抗議に出ました。一方、「今の生活を守りたい」という思いが強いのも中国市民の特徴です。敏感な活動に関わったことによって、自分の人生が狂ってしまうのではないかという不安が、常に付きまとっているのではないかと思います。平日でもありますし、生活を守るという意味で、今は若干落ち着いているのではないかなという印象です

(Q:中国のコロナの感染状況は?)
森雅章 上海支局長:
中国政府の発表によると、昨日29日の国内の新規感染者数は3万7000人を超えました。過去最多ではありませんが、依然高い水準を保っています。上海でも同様に感染者数が日々増加傾向にあり、昨日からは上海ディズニーランドが再び、一時休園になっています。また、上海で飲食店やスーパーに入るためには、これまでは「72時間以内」のPCRの陰性証明が必要でしたが、昨日からは「48時間以内のもの」に有効期間が短縮される措置がとられています。支局スタッフの1人も、コロナの感染対策という理由で、外出できない状況になっています。厳格なコロナ対策が引き続き取られているので、市民の不満・不安は依然くすぶっている状況です

デモの抑え込みを強化した中国

デモを抑えるため、バリケード設置や警察増員、スマホ検閲などの対策が取られている中国。

報道ランナーに出演する菊地弁護士は、天安門事件との関連を指摘する。

菊地幸夫弁護士:
思い出すのは天安門事件ですね。当時も学生が民主化や自由を求める声を上げましたが、力で抑え込まれました。今回、東京の中国大使館など外国でも抗議行動が行われています。天安門事件のときも、中国大使館などへ抗議を行った人たちがいましたが、祖国に帰ると処罰されるということで、われわれ弁護士がサポートに回ることがありました。今回も同じような危険があるんじゃないでしょうか。経済が豊かになると、国民も「まあいいか」と、豊かさと自由をどう天秤にかけるかという課題が、ずっと付きまとっていくのかなという気がします

今後の展開について、中国政治に詳しいジャーナリストの近藤大介氏は、「中国は厳しく取り締まる方向にかじを切ったので、週末など大規模デモは起こりにくくなる。ただ今後、状況によってはゼロコロナ政策を緩和する可能性もあるのでは」という見解だ。

さらに近藤氏は、今回の抗議は新疆ウイグル自治区で起きた火災がきっかけだが、中国国民がウイグル自治区の人権状況に心を寄せ始めたというわけではなく、対象はあくまでゼロコロナ政策。政策が緩和されれば抗議の盛り上がりも収まる可能性が高いとして、体制転換にはならないのでは、という見方をしている。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月30日放送)

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