“首浮き輪”というグッズをご存知だろうか?

首掛け式の浮き輪のことで、乳幼児が水に親しみ、運動することなどを目的として販売されているものだ。この使い方について、消費者庁がTwitterの公式アカウントで「首浮き輪を入浴中に使用しないで!」とツイートしたところ、話題となっている。そのツイート内容はこうだ。

〈首浮き輪、浮き輪は入浴中に使用しないで!死亡事故も〉
入浴用の「便利グッズ」ではありません。水に入っているということは溺れる危険と隣合せ。子どもの入浴は保護者の手の届く範囲で目を離さずに行ってください。SNS等のアイデアは試す前に危険がないか確認を。

消費者庁によると、首浮き輪(首掛け式乳幼児用浮き輪)を「便利グッズ」として一部で誤って利用されている例があるという。その使い方は、入浴時に子どもに装着させて湯船に浮かせ、その間に保護者の洗髪や他の子どもの世話をするというものだ。保護者の目が離れる時間ができてしまうことから、このような使い方をしないでほしいということだ。

イメージ(画像提供:消費者庁)
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実際、首浮き輪使用中の事故は複数発生していて、消費者庁や国民生活センターが平成24(2012)年と平成26(2014)年に注意喚起をしている。しかし、その後も事故は続いており、令和2年(2020年)には死亡事故も発生。

この事故は「浴槽で0歳の子どもに首浮き輪を使用していたところ、意識を失っていることに気付き、病院に救急搬送したが、死亡が確認された」というものだ。

また、首浮き輪だけでなく、他のタイプの浮き輪でも事故は起きている。今年10月には、生後10カ月の赤ちゃんに浮き輪を装着して浴槽に入れ、保護者がトイレのために離れた。戻ると浮き輪が外れていて、子どもの顔が湯に浸かった状態で、溺水のため3日間入院となった。

こうした事故を防ぐために、消費者庁は、子どもから目が離れてしまう状況では、首浮き輪や浮き輪を使わないことが大切で、浮き輪に頼りたくなる状況を意識して作らないように保護者自身の入浴は別にするなど工夫をすべきだと説明している。

また、子育ての手間や時間を減らせるアイデアやアイテムがSNS等で話題になることがあるが、試す前には子どもにとって安全であるか注意深く確認する必要があると呼び掛けている。

保護者の世代交代で繰り返しの周知が必要

忙しい子育てを手助けする便利グッズもあると思うが、使い方を間違えると最悪の場合、死亡事故につながる恐れもあるということだ。では今回、なぜ消費者庁はSNSなどでのアイデア・アイテムについて言及したのだろうか? また、他に親子で入浴する際どんなことを気を付ければよいのか?

消費者庁消費者安全課の担当者に詳しく話を聞いてみた。


――首浮き輪の事故はここ数年で増えているの?

平成24年と26年に消費者庁・国民生活センターから注意喚起をしておりますが、平成29年と令和2年には死亡事故も発生しています。増減についての一般的な傾向については申し上げられません。


――なぜこのタイミングで注意喚起した?

この注意喚起は「子ども安全メール」というメールマガジンの配信の一つであり、主に0歳から小学校入学前の子どもの思わぬ事故を防ぐための注意点や豆知識を、時節や世の中の動向に合わせて、定期的にお届けしています。先日も、窓やベランダからの転落事故の報道が相次いだことから、テーマとして取り上げています。

首浮き輪についても過去に何度か取り上げていますが、保護者の世代交代もあり、繰り返しの周知をするべく改めて注意喚起しました。


――注意喚起の中で「SNS等のアイデア・アイテム」に触れた理由は?

子育て中の保護者が情報収集するツールとして、現在では、多くの方がSNSや動画投稿サイトなどを使われていると思います。浮き輪に限らず、便利とか可愛いとか様々なアイデアやアイテムが、一般の個人からも日々発信されています。

これらが安全であるか、正しい情報であるかは、情報の受け取り側でも注意深く確認していただく必要があるのではないかと思います。試す前には誤った使い方ではないかなど取扱説明書を確認していただくほか、行政機関等の情報も一度調べてみてください。

必ず保護者の手の届く範囲で!

――首浮き輪の事故で一番に訴えたいことは?

首浮き輪は、入浴時に保護者の洗髪や他の子どものお世話をするための「便利グッズ」ではありません。このような入浴方法では、保護者の目が子どもから離れる時間ができてしまいます。水がある場所は小さな子どもにとって危険な場所の一つです。首浮き輪に限った話ではありませんが、水に入れているときは、必ず手の届く範囲で、目を離さず見守ってください。


――10年以上前から注意喚起しているとのことだが、それでもなくならない理由は?

首浮き輪を入浴時の「便利グッズ」とする誤った利用方法が広がっている可能性もあると考えられます。また乳幼児を育てる保護者は入れ替わっていきますので、過去の注意喚起が届いていない世代の方もいらっしゃるのだと思います。我々としても、繰り返し伝えていく必要があると考えています。

※イメージ わずかでも目が離れる状況では子どもを浴槽から出すこと
※イメージ わずかでも目が離れる状況では子どもを浴槽から出すこと

――他に親子で入浴する際に、気をつけなければならないことはある?

親子の風呂を分けることもご検討いただきたいですが、一緒に入る場合は、わずかでも目が離れる状況では子どもを浴槽から出すこと、子どもだけで浴室にいる状況を作らないことを心掛けてください。入浴後も浴槽に水が溜まっていると、子どもが近づいて転落・溺れることも考えられますので、浴槽の水を抜いたり、浴室の鍵をかけたり、普段から事故防止の環境作りをすることも大切です。

担当者が話しているように、水がある場所は小さな子どもにとって危険な場所の1つだ。首浮き輪を入浴中に使わないのはもちろん、親子で入浴する際には子どもが1人になる状況を作らないことが重要だといえそうだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。