東京都の新型コロナウイルス後遺症研修会が20日、オンラインで開かれ、医療従事者など約870人が参加した。
「後遺症」理解されず児相が保護したケースも
研修会では、後遺症治療で知られるヒラハタクリニックの平畑光一院長が登壇し、「病気の症状だけでなく、周囲の無理解が苦しめる」と訴えた。

例えば、後遺症を抱える患者が、職場で「甘えるな」「倦怠感くらいなら会社に来い」「病院に行けているのだから動けないというのはウソ」といった言葉を投げかけられたり、後遺症を認めたくない家族から「その症状はウソだろう」などと言われることがあったという。子供の患者の中には、後遺症を家族に理解されず、児童相談所に保護されたケースもあったそうだ。
「コロナに後遺症がある」ということは一定程度知られていても、実際に目の当たりにすると理解しがたいものなのかもしれない。
感染者の半数が「少しだるい」 10%が外来治療必要
平畑院長は、5000人以上を診察してきた感覚として、感染者の半数程度に「少しだるい」など軽微な後遺症があり、外来治療が必要な患者が10%程度がいると明らかにした。仕事をしていた患者は2781人で、そのうち約200人が失業など職を失い、休職や時短など合わせると68.5%にあたる1904人が仕事に影響が出たという。
また、参加者から「コロナ後遺症」と「うつ病」の見分け方を問われた平畑院長は 、「コロナ後遺症はやりたいことがいっぱいあるが疲れてできない、うつ病はやりたいことがない」とその違いについて説明した。
発症から2カ月が非常に大切
平畑院長は「2カ月無理しないというのが非常に大切」だと強調する。

従来株もオミクロン株も「準ねたきり」以上の重い後遺症が確認されるのは発症から2カ月以内とのことで、「絶対に無理をしない、させない事を意識してほしい」と話した。
一方で、後遺症は91%が収まることなく持続するので「感染後、一旦すべての症状が消えたら少し安心」としている。
子供の後遺症「自然に良くなっていくことが多い」
また、子供の後遺症治療にあたる東京都立小児総合医療センター感染症科・堀越裕歩医長は、後遺症について、年代は高校生以上が多く、男子より女子が多く、もともと身体・メンタルの健康が低いと発症しやすいという。

ただ、小児の場合は自然に良くなっていくことが多く、症状を尋ねる場合も「何が困っているか」をまず聞いて“本人が感じていないもの”は深掘りしない、という。
問題は「診療報酬の安さ」
後遺症患者は、ヒラハタクリニックでは2月以降は減ることなく「積み重なっている」といい、東京都立小児総合医療センターでも第7波の後遺症患者の診察が続いているという。
その一方で、後遺症を診る医療機関が増えないというが、平畑院長はその理由は「診療報酬の安さ」だと指摘する。「(後遺症は)手間がかかるのに、血圧や糖尿よりはるかに低い診療報酬で診療報酬としては軽視されていて、自分のところも赤字だ」と現状を明かした。
第8波に入りつつある中、感染予防対策も重要だが、後遺症に対する対応も“待ったなし”なのではないか。
(フジテレビ社会部 都庁担当・小川美那)