約半世紀にわたり行政と住民の対立が続く長崎・川棚町の石木ダム建設計画。

長崎県東彼・川棚町の石木ダム建設予定地
長崎県東彼・川棚町の石木ダム建設予定地
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その予定地に作られた美術館でふるさとを描くイラストレーターがいる。
オープンから1年。小さな美術館がダム問題を考えるきっかけになっている。

住民たちは新たなダムの必要性に疑問

石木ダムの建設予定地の山あいにある小さな美術館。

作ったのは、ダム建設予定地である川棚町川原(こうばる)で生まれ育ち、ふるさとの景色を独特の色使いで描いているイラストレーターの石丸穂澄さんだ。石丸さんは、いまイラストの展示だけでなく、人気の雑貨ショップとの連携など新たな取り組みにも挑戦している。

石丸穂澄さん:
いかにたくさんの知らない生き物がいたか、私自身が勉強させられている

石丸さんがアトリエを作ったきっかけは、すぐそばで進む石木ダム計画だった。石木ダムは、東彼・川棚町の山間部「川原地区」とその周辺が建設予定地で、川棚川の洪水対策や佐世保市の水源確保などを目的に、1975年に事業として採択された。

ダムによって水没する67戸のうち、54戸は移転交渉に応じたが、川原地区の住民たちは、ふるさとで暮らしたいと立ち退きを拒否した。

1982年 長崎県が県警機動隊を導入して行った強制測量
1982年 長崎県が県警機動隊を導入して行った強制測量

住民側が拠点とした「団結小屋」やその周辺では、事業を進めたい県側と住民側が衝突を繰り返してきた。今は石丸さんのアトリエともなっている団結小屋は、ダム計画に反対する住民が1975年に建てたものだ。

地元住民が建てた団結小屋
地元住民が建てた団結小屋

石丸穂澄さん:
石木ダムとか知らなくていいです。知らなくて…絵を見てこれ、なんかちょっと気になるって思ってもらいたい

小屋に通い続ける松本マツさんは、2022年で96歳になる。

松本マツさん:
そうね、嫌ね。今日もやっぱり来とったとね。車の帰りよるけん、どこも行きとうなかもんね。ここが一番よかもんね、川原が一番よかもんね。どこさ出ていくね、今さら

国の事業認定を受け、長崎県は予定地の住民に補償金を払い、土地などの権利を行政側に移した。小屋やその土地の所有権も国に移った。しかし 住民たちは人口減少が続く中での新たなダムの必要性に疑問があるなどとして、補償金を拒み、抗議を続けている。土地の明け渡しを命じた収用裁決などをめぐっては、行政不服審査が続いていて、近く住民たちの意見陳述が行われる。

石丸穂澄さん:
早く問題を解決させてここで暮らし続けたい

ダム問題を考えるきっかけに

石丸さんは、いまイラストの展示だけでなく人気の雑貨ショップとの連携など、新たな取り組みにも挑戦している。波佐見焼の作家が営む人気の雑貨店とのコラボだ。SNSなどで話題の店がやってくると聞きつけ、県内だけでなく福岡や佐賀からも女性を中心に多くの人が駆けつけた。

石丸穂澄さん:
ダムはここに…コンクリートの堰堤(えんてい)になる

アトリエやイラストをきっかけに、川原を知ってもらいたい。この日はダムの建設予定地をまわるツアーも行われた。

佐世保市からのお客:
ここまでに来るまでの間に、ダムの建設反対の看板など、自然の景色と真逆の人工的なコンクリートの塊を見て切ない気分になったので、そのはざ間にこのおばあちゃんが今も実際にいらっしゃると思うと、とても切ない気持ちになってしまいました

石丸穂澄さん:
初めてここに来たという人もいて、やっぱり来てみないと分からないものだと言われて…。そういうふうに言ってくれるお客さんもいて、本当にやってよかった

オープンから1年。小さな美術館がダム問題を考えるきっかけになっている。

(テレビ長崎)