日本では、新型コロナウイルスの水際対策が10月から大幅に緩和された。街では外国人観光客の姿も増えつつあり、観光需要の回復も期待される。

出入国在留管理庁によると、10月に新たに日本に入国した外国人の数は約45万4500人で、昨年10月の40倍以上、今年9月の約14万6300人と比較しても3倍以上となった。このうち観光目的の外国人は9月の15倍以上の約28万8900人だった。

こうした状況になって気になるのが、外国人に対応できる人材が不足していないのかということだ。

観光業界からは「人手不足で思うように需要を取り込めないのでは」「人材がおらず旅行者の受け入れ対策に課題がある」といった、悩ましい声も聞かれているとのことだ。

外国人の対応には、語学をはじめとした専門的な知識が求められるはず。その一方で、入国制限がされていた最近までは活用の場がなかったことも想定される。企業はどうしていたのか。そして今後はどう対応するのか。

「はとバス」も外国語ガイドが3割減少

そこで、外国人向けのバスツアーも運行する「はとバス」(本社・東京)に取材。コロナ禍の影響や外国人対応の業務に携わっていた人たちの現状を聞いた。


――外国人にどんなサービスを提供している?

2020年4月以降、コロナの影響で全便運休・廃止していますが、以前は英語のツアーと中国語のツアーを運行していました。東京の名所を回ったり、富士山などを外国語でご案内していました。都内の主要ホテルから乗り場までお迎えする「ピックアップサービス」なども行っていました。

外国人向けツアーのパンフレット(提供:はとバス)
外国人向けツアーのパンフレット(提供:はとバス)
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――外国人対応の仕事にはどんなものがある?

外国語ガイド(通訳案内士)のほか、社内に国際事業部の部署がありました。外国語ガイドの仕事はバスツアーに同乗し、外国語でのご案内などをします。お客様との対話にも応じていました。

国際事業部は、外国語ツアー運行に係る企画・手配・販促業務、予約受付、外国語ガイドの配置などを行います。外国語での電話対応をすることもあるので、話せる者や外国籍の者もいました。

外国人向けのガイドは仕事を失った(画像はイメージ)
外国人向けのガイドは仕事を失った(画像はイメージ)

――コロナ禍でそうした仕事はどうなった?

2020年4月以降は外国語のツアーを全便運休しておりますので、仕事も消失しました。外国語ガイドは臨時社員として契約していた方たちで、人員は数十人いましたが(コロナ禍の間に)約3割減少しました。国際事業部は廃止となり、配属されていた社員は別部署に異動し、他の業務に携わっています。

生活を考えて翻訳の“副業”をする人も

――外国人対応できる人材はどう確保している?

仕事はない状態ですが、外国語のツアーが再開したときにはすぐ戻ってこれるよう、一定数は外国語ガイドとしての雇用自体は継続しております。休止の間は賃金の支払いはありません。

ガイドたちにも生活があるので、今はそれぞれ副業を見つけている形になります。語学力を生かして翻訳の仕事をされる方もいれば、全く別の仕事をされる方もいると伺っています。私たちとしては、ツアーが再開したときに戻ってこられる環境を用意できればと考えています。

翻訳などの副業をするガイドも(画像はイメージ)
翻訳などの副業をするガイドも(画像はイメージ)

――コロナ禍は経営的に厳しい影響を与えている?

2019年には約6万4000人の外国人観光客の利用がありましたが、2020年4月以降はそうした需要が消失しました。来るにも来られない状況なのですが、経営的にも大きな打撃です。苦しい状況が、外国語ガイドや国際事業部の方にも出てきてしまった形になります。(外国人対応の仕事をしていた人たちからは)「このご時世なので仕方ない」という声が多く聞かれました。


――水際対策が緩和された受け止めは?

やっと入国制限が緩和されたことについては、大変うれしく思っており、外国人観光客の戻りに期待しています。

2023年春には外国語ツアーが再開予定

――ツアー再開のめどは?そのとき、外国人対応の業務はどうする?

ツアーは状況を見ながらではございますが、現時点では来春の再開を目指しています。(その際の業務は)雇用を継続している外国語ガイドで対応します。具体的な話はまだ出ていませんが、国際事業部の部署も今後の需要によって、復活する可能性もございます。


――ツアー再開に向けて取り組んでいることは?

バスツアーに参加する価値を生み出すことに力をいれています。2022年6月からは、羽田空港の通常では入れない、飛行機が利用するような区域に行けるツアーも開始しました。


――今後に向けての目標があれば聞かせて。

コロナ禍を経て、お客さまがバスツアーで求めるものが変化してきている印象があります。今後はバスツアーでしか見られない、行くことのできない場所やものを取り入れて特徴を持たせるなど、参加する価値を創出する工夫をして、たくさんの方にご利用いただきたいと考えております。

 

はとバスでは、再開に備えて一定数のガイドたちとの雇用は継続し、国際事業部のメンバーには他部署の業務に関わってもらうなどして、厳しい状況に耐えていた。2023年春に外国語ツアーが再開できるよう、感染状況が悪化しないことを願いたい。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。