個性的なキャラクターやユニークな演出のテレビコマーシャルで知られる愛媛県松山市の引っ越し会社。先日、新しいCMが撮影された。そこには、「15秒」に込められた思いとこだわりがあった。

「見たことあると思います」「見たことある気がする」と話す街の人たち。
たくさんのロッドを髪に付けたままの「おばちゃん」が、画面狭しと一方的にまくしたてる動画は、松山市にある「たかだ引越センター」のテレビCMだ。

バラエティー豊かな「たかだ引越センター」のテレビCM
バラエティー豊かな「たかだ引越センター」のテレビCM
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松山市内では、「この会社、いつも面白いCMをされているなってありますね」「インパクトが結構強い」などの声が聞かれた。

ユーモアたっぷりのものから、セクシーな内容も。バラエティーに富んだCMは、たかだ引越センターの代名詞ともなっている。
これまでのCMを公開しているYouTubeの公式チャンネルは、総再生回数が何と1,600万超。

愛媛ローカルのCMでありながら、全国的な知名度を誇っている。

新CMのテーマは? 撮影スタート

2022年8月、たかだ引越センターの新しいCMが、テレビ愛媛のスタジオで撮影された。

撮影前日、いつも置かれている番組のセットを移動させ、CM用のセットを組み立てていく。スタジオの中央に置かれたのは大きなテーブル。会議室のようなセットが姿を現した。

たかだ引越センター・髙田政信社長(当時):
だいぶできましたね

スタジオにやってきたのは、たかだ引越センターの髙田政信さん。

髙田さんは自社のCM作りに20年以上携わっていて、企画を立てるだけでなく、撮影や編集にまで立ち会うこだわりの持ち主だ。

新しいCMは、いったいどんなテーマなのか?

たかだ引越センター・髙田政信社長(当時):
司会者を立てて、たかだのCMについての激論会っていうCMを今回作ろうと

新CMのテーマについて語る髙田社長(当時)
新CMのテーマについて語る髙田社長(当時)

CMで自社のCMを討論とは? 今回も、たかだらしいユーモラスなCMになりそうだ。

撮影当日の朝、出演者たちがスタジオに入ってきた。
討論会の「司会者」役はスーツ姿の男性。ピンクのど派手な衣装を着た女性は「おばちゃん」役で、帽子をかぶった男性は、たかだ引越センターの「社員」役だ。そして、着ぐるみ姿の男性は「タカ」役。

皆さんも見覚えがあるキャラクターがたくさんいる? 今回の設定は、これまでのCMに出演してきたキャラクターたちによる討論会で、このキャラたちが激論を交わすという内容だ。

リハーサルが始まった。

「たかだと言えば、引っ越しプラス何!」
「そりゃユーモアやろ」
「ちょいエロでしょ」
「イリュージョンな広告戦略でしょ」
「安さ決まっとるやろ! 安さ!」
「エアコン取り外し無料です!」
「はい! いったんCM!」

それを見守っていた髙田さんが、何かに気付いた。

たかだ引越センター・髙田政信社長(当時):
取った方がいいかもしれないですね

ディレクター:
その方が頭まで黄色いので良いかも。のけましょうかね。“モジャモジャ”なしでいきます

「芸人」役の男性がかぶっていたカツラを急きょ外すことになった。

たかだ引越センター・髙田政信社長(当時):
(キャラクターが)ギュッと狭い中に詰まっているのと、言葉が絡みあってかぶさっているから、逆にあっさりした方が目立つんじゃないかなという感じで

画面に映っているものを少しシンプルにすることで、キャラクターをより生かそうという狙いだ。

たかだ引越センター・髙田政信社長(当時):
私ども引っ越し業者っていうのは、結婚、卒業、就職という時に発生する業種になりますので、その時にいかに思い出してもらえるか。インパクトのあるCMに携わってきているつもりです

撮影は7時間にも…“15秒”に込める思い

そして本番が始まる。

「はい! たかだと言えば、引っ越しプラス何!」

撮影は、セリフやカメラに撮るものなどが映像の流れの順に書かれた「絵コンテ」と呼ばれる表に沿って、1カットごとに進められる。

その1カットも、視聴者により分かりやすく、面白く伝えるために、しゃべり方や動きなどを調整しながら、何度も撮影を重ねていく。

「グラビア」役:
え~、ちょいエロでしょ

ディレクター:
今くらいのウェットなしゃべり方で、ちょっと間を詰められたら

「おばちゃん」役:
安さ決まってるやろ!安さ!

1カットの収録が20テイクを超えることもある。

そして撮影が始まって7時間、いよいよラストカットの撮影だ。
キャラクターたちが一斉に振り返り、それぞれがポーズを決めるシーン。ここで再び、髙田さんが何かに気付いた。

たかだ引越センター・髙田政信社長(当時):
あれは、あまり良くないと思う

いったい、何が良くないのか?

ラストカットで髙田さんが気付いたこととは…
ラストカットで髙田さんが気付いたこととは…

ディレクター:
そんな気もしますよね。「真っすぐ」の方が

たかだ引越センター・髙田政信社長(当時):
その方がいいです

ディレクター:
了解です。「社員」君ね、斜めにこうやっていたのをできるだけ真っすぐの方が。真っすぐ「これ! これ!」っていう方が

たかだ引越センター・髙田政信社長(当時):
お客さんの品物やから、大切に扱うっていう気概ね

髙田さんが指摘したのは、「社員」役の男性のエアコンの持ち方だった。斜めに持つのではなく、真っすぐ丁寧に抱えるように直した。

「お客さんの荷物は大切に扱う」。引っ越し会社としての基本とプライドを、このラストカットに込めたのだった。

そして、新作の15秒CMが完成した。

完成した「たかだ引越センター」の新CM
完成した「たかだ引越センター」の新CM

髙田さんに「テレビCMとは何か?」を尋ねた。

たかだ引越センター・髙田政信社長(当時):
15秒の中に親切であったり、丁寧であったりというのは、入れておいた状態。それでいかに視聴者さん受けするか。私にとっては大切な宝物

わずか15秒という時間で商品やサービスの良さ、さらには企業の思いを見ている人に伝えるテレビCM。たかだ引越センターのCMには、ユーモアの裏側に揺らぐことのない企業精神が込められていた。

(テレビ愛媛)

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