9年前の2013年、「餃子の王将」の社長が何者かに射殺された未解決事件は、急転直下の逮捕を迎えた。

タバコの吸い殻のDNA型が容疑者のものと一致

2022年10月28日午後1時半―。報道陣が詰めかけた福岡刑務所に列をなして入っていくのは「京都ナンバー」の警察車両。周囲には張りつめた雰囲気が漂っていた。

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警察車両に乗る人物は、工藤会系組幹部の田中幸雄容疑者(56)だ。

田中容疑者の関与が浮上したのは、全国が注目する“未解決事件”だった―。

事件が発生したのは2013年12月。「王将フードサービス」の当時の社長、大東隆行さん(当時72)が、京都市内の本社に出勤した直後、何者かに銃撃され死亡した。

放たれた銃弾は4発。その全てが大東さんの胸や腹など急所に命中していたことから、警察は「殺しのプロ」による犯行とみて、ヒットマンの行方について長年、捜査を続けてきた。

わずかな手がかりとなったのは、現場付近に落ちていたタバコの吸い殻。この吸い殻から採取されたDNAの型が、田中容疑者のものと一致したという。

火災の専門家がタバコの吸い殻をくわしく鑑定したところ、吸い殻の消え方などから「当時、小雨だった現場で消したことに矛盾ない」との結果が出た。これにより「田中容疑者がその場にいた」という状況証拠を強めることになったという。

警察はこれまでの捜査で、第三者が捨てた可能性などを排除し、殺人と銃刀法違反の疑いで逮捕に踏み切った。

王将フードサービス・渡邊直人社長:
(ニュースを)見た瞬間、やっとここまできたのかという思いでした。前社長の意志をついで、これからの王将の社員のために、そしてお客様のために力を合わせてやって参りました。これからも早期解決を願って警察の捜査に全面協力していきたいと思います

逮捕された田中容疑者は、福岡・春日市に拠点を構える工藤会石田組の幹部。いったい、どんな人物なのか―。

石田組は「金のためなら手段を選ばない」

【大林組幹部襲撃事件】(2008年1月17日)
記者:

白昼オフィス街に響いた銃声現場は一時騒然となりました

2008年に起きた「大林組幹部襲撃事件」
2008年に起きた「大林組幹部襲撃事件」

大東さん射殺事件の5年前には、福岡市博多区の路上で、大手ゼネコン「大林組」の社員が乗った車に向かって拳銃を発砲し、バンパーを破壊するなどの事件を起こしていた。このときも発射された銃弾は「王将社長銃撃事件」と同様4発だった。

元福岡県警・藪正孝さん:
石田組というのは、当時から金のためには手段を選ばないというのがありましたね

金のためなら暴力をいとわない―。田中容疑者が所属する組をそう分析するのは、工藤会捜査に長年従事してきた元福岡県警の藪正孝さんだ。

元福岡県警・藪正孝さん:
大林組の関係で逮捕された当時は、石田組の若頭だった。組長の信頼は厚かったと思っております

この大林組銃撃事件から10年後の2018年6月、田中容疑者は殺人未遂などの疑いで逮捕、その後、起訴された。

そして2019年11月、福岡地裁は「動機は不明だが、工藤会ないし組の利益のために大林組を威迫する意図があったことがうかがわれる」として懲役10年の判決を言い渡し、田中容疑者は刑に服していた。

単独行動ではない?「不適切な取引」が関係か

そんな田中容疑者が殺人の疑いで逮捕された「王将社長銃撃事件」。

元福岡県警の藪さんは、逮捕にこぎ着けた警察の努力を高く評価する一方、全容解明の難しさを指摘した。

元福岡県警・藪正孝さん:
被疑者が単独で行動したというのは考えられないと思います。上部の人間が知らないということはあり得ない。第三者からの依頼を受けて組織的にやったとか、ひとつひとつ立証していかないといけないので、ハードルが高いんじゃないかと思います

事件当時「王将フードサービス」は、福岡県内のゴルフ場などをめぐる過去の「不適切な取引」について調査し、報告書をまとめていたことがわかっている。事件にこの「不適切な取引」が関係しているのか―。

銃を使うという極めて暴力的な犯行で1人の命が奪われた。警察は、全容解明に向けて捜査を進める方針だ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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