人通りが激減した駅前の商店街が、再び活気を取り戻そうと動き出した。着目したのは「ペット」と「アーケード」だ。雨が降ってもぬれない屋根のある商店街で、イヌと一緒に買い物や散歩が楽しめようにしたらどうだろうかーー。飼い主に知ってもらうために開いたイベントは好評で、手応えを感じたようだ。

4年間で人通りが4割減…“アーケード”の強み生かして新プロジェクト始動

七夕まつりで賑わう清水駅前銀座商店街(2022年7月)
七夕まつりで賑わう清水駅前銀座商店街(2022年7月)
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2022年7月、静岡市清水区にある清水駅前銀座商店街。新型コロナウイルスの影響で中止されていた七夕まつりが、3年ぶりに開かれにぎわった。

清水駅前銀座商店街の普段の人通りは少ない
清水駅前銀座商店街の普段の人通りは少ない

しかし普段は人通りが少なく、空き店舗も目立つ。2021年までのわずか4年間で、新型コロナの影響もあって、人通りが4割近く減少した。

こうした商店街を盛り上げようと、2022年3月から、新たなプロジェクトが始まった。

「犬町プロジェクト」参加店を示すステッカー
「犬町プロジェクト」参加店を示すステッカー

いくつかの店に貼られていたのは、犬のイラスト入りのステッカー。「犬の入店はできませんが 声をかけていただければお買い物の対応をします」と書かれている。
新しく始まったのは、イヌを連れたまま買い物が楽しめる「犬町プロジェクト」。イヌを飼う人たちが多く訪れる商店街にすることが狙いだ。

アーケードに着目したプロジェクトリーダー・下大澤さん(左)
アーケードに着目したプロジェクトリーダー・下大澤さん(左)

プロジェクトのリーダーを務める静岡商工会の下大澤志保さんは、地元の商店街を支援しようと、かまぼこ型の天井で覆われたアーケードに注目した。

プロジェクトのリーダー・下大澤志保さん(静岡商工会):
アーケードが強みだなと思う。商店街なので、人と人が交流するコミュニティスペースのような役割もあると思ってずっと考えていたのですが、アーケードはイヌが散歩するのにちょうどいい。それでイヌと一緒に買い物ができたら、すごくいいと思って始めました

店員が外に出てきて対応・一緒に出入り可能な店も 犬と一緒にお買い物

プロジェクトに賛同した店舗にはステッカーが貼られ、店員が外まで出てきてくれるため、外でイヌを連れたまま買い物ができる。
中にはイヌと一緒に店内に入り、買い物ができる店もある。

清水駅前銀座商店街
清水駅前銀座商店街

2022年8月には、プロジェクトを知ってもらうためのイベントが開かれ、買い物客の評判も上々だった。

イヌを連れた買い物客に好評
イヌを連れた買い物客に好評

イヌを連れた買い物客:
やっぱりイヌと一緒に歩いていることが多いので、一緒に入れたり、お店の方が声かけてくれるのは本当にありがたい

店側にも気づき 新商品の販売も

接客中の蒲原屋・新谷さん(左)
接客中の蒲原屋・新谷さん(左)

ある乾物店「蒲原屋」の新谷さんは、これまでにも犬を連れた客に外から声をかけられることがあり、新たな可能性に気づかされたと話す。

蒲原屋・新谷琴美さん
これはもしかしたらチャンスなのかもしれないなと。今まで商店街で意識してこなかったお客様が来られるのではと感じて、(プロジェクトと)一緒にやれたらいいなと思って

商店街の洋菓子店「おやつえん」で販売
商店街の洋菓子店「おやつえん」で販売

またプロジェクトにあわせ、イヌと一緒に食べられる商品の販売を始めた店もある。洋菓子店が、人もイヌも食べられるシフォンケーキを販売していて、売れ行きは好調だ。

おやつえん橋本さん「(飼い主は)同じものを食べたいのでは」
おやつえん橋本さん「(飼い主は)同じものを食べたいのでは」

おやつえん・橋本あゆみさん
(イヌを)飼われている方は、同じものを一緒に食べたいなという気持ちがある。私もワンちゃん大好きですし、いい商品ができたなと思っています

排せつの水たまりや臭い…課題解決目指し「駅前銀座」から「犬町銀座」へ

イベントを通して今後への期待が高まった一方、課題も浮かび上がった。
イヌの排せつの問題だ。商店街で排せつをして、臭いが残るケースがたびたびあったという。

商店街の店主たちと話し合い
商店街の店主たちと話し合い

商店街の店主
私が何度か目撃したのが、中型犬が来たらもう黄色い水たまりですよね。「ちょっと待て」と言ったことも何度もあります

下大澤志保さん
たとえば万が一 しちゃったら拭き取って、スプレーしてまた拭くというのは、どうですかね

商店街の店主
そうしていただければ、すごいと思いますよ。「ありがとうございます」と言いたいくらい

商店街の店主たちと話し合い
商店街の店主たちと話し合い

犬町プロジェクトでは、商店街でイヌに排せつをさせないよう呼びかけるポスターを、専門学校の学生たちにも協力してもらって制作する予定だ。

めざすは「イヌにやさしく、活気ある商店街」
めざすは「イヌにやさしく、活気ある商店街」

下大澤志保さん
課題解決に向けた第一歩として、まずはやはり現状把握から。現状を把握した上で、いろんな人に協力してもらいながら、課題を解決する方法を見つけていけたらなと思って

イヌにやさしく、活気ある商店街を目指す下大澤さん。

犬町プロジェクト リーダー・下大澤志保さん
平日でも、イヌを連れながら散歩がてら買い物をする、それが普通にできる商店街。名前としても「犬町銀座」じゃないですけど、そういうところを着地点にしたい

2022年10月現在、プロジェクトに賛同してくれた店は洋菓子店・生花店・寝具店など8店で、他の店にも協力をお願いしていく予定だ。
商店街を犬町へ。下大澤さんたちの挑戦は続く。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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