飼育員だからこそ見ることができる、ある動物の姿が「海坊主」や「宇宙人」みたいだと、SNSで多くの人を怖がらせている。

東京・池袋にある「サンシャイン水族館」の公式Twitterアカウント(@Sunshine_Aqua)が投稿したのは、バックヤードでのアザラシの姿。まずはその姿を見てほしい。

バックヤードで見られるというアザラシの姿(提供:サンシャイン水族館)
バックヤードで見られるというアザラシの姿(提供:サンシャイン水族館)
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水の中から直立しているかのように上半身のみを出しているのが、バイカルアザラシのレオくん(推定24歳・オス)だ。レオくんは、飼育員さんがバックヤードに入ると直立して様子を伺ってくるのだそう。薄明るい中、たしかに大きな丸い瞳でじーっとまっすぐ見つめている。

この投稿には水族館のスタッフが「直立不動のアザラシはいつ見ても飽きません!」とコメント。しかし、投稿を見た人たちからは「ちょっとほんとに夢出てきそうで怖い…」「後ろ振り返ってこれいたらビビるww」と怖がる声が多く寄せられている。

中には「これは完全に海坊主…」「海から現れた宇宙人」といったコメントもあり、投稿は4万以上のいいねが付く話題となっているのだ(10月21日時点)。

扉の開く音、スタッフの足音を聞いて「エサかな?」

アザラシだと知らないで見ると、何のいきものなのか悩んでしまうかもしれないレオくんの姿。なぜ飼育員さんを見つめているのだろうか? 陸に上がらずにいるこの体勢に理由はあるのだろうか?

サンシャイン水族館の飼育スタッフ・アザラシ担当のフォーサイス有間さんに話を聞いてみた。


ーーバックヤードに行くと、毎回見てくるの?

エサの時間にやっている事が多いです。食欲がない時期はあまり見なかったです。(バックヤードを)覗き込むとこの姿勢で待っているので扉の開く音、スタッフの足音などをきっかけにやっているんだと思います。


ーーどれくらいの間この状態でいる?

普段はすぐに給餌の準備に入るので、どれくらい継続するかはわかりませんが、そっと見守っていればしばらく続けているかもしれません。

扉の開く音、スタッフの足音などを聞いたこの体勢に?(提供:サンシャイン水族館)
扉の開く音、スタッフの足音などを聞いたこの体勢に?(提供:サンシャイン水族館)

ーーなぜ見てくるのだと思う?

エサの時間にスタッフが入ることが多いので、入ってきた音を聞いて「エサかな?」と期待しているんだと思います。


ーー直立する体勢の理由は?

バイカルアザラシは臆病な性格なので、何かあった際に自分が素早く逃げる事ができる水中からはあまり出ようとはしません。この場所は水深が浅く、壁の向こうを見ようとすると自然とこの姿勢になったんだと思います。

陸に上がった全身 レオくん(提供:サンシャイン水族館)
陸に上がった全身 レオくん(提供:サンシャイン水族館)

ーー直立不動のレオくんを見てどう思っている?

流線形の体で直立するのはとても不自然なので、すごい「なで肩だな」と見るたびに感心しています。また、元々大きな眼もこの時はいつも見開いてこちらを見ているので、スタッフ側の物音や行動を注意深く観察しているんだなーと思います。

水面下では体をJ字に曲げています

ーーいつ頃から見てくるようになったの?

この姿勢自体は2011年の水族館リニューアル後しばらくしてから見られていましたが、今ほど頻繁にはありませんでした。


ーーなぜ頻繁にするように?

環境に順応するのには種類や個体によって時間がかかるので、ああいう行動が出るということは周りをそこまで気にせず、エサを持ってくるスタッフに関心を示しているということになります。なので「今の環境に慣れた」という言い方もできると思います。バックヤードに入る時は給餌の時が多いので、意欲が高い時にする行動だとは思います。


ーー水面下はどうなっている?

実は直立しておらず、水面下では体をJ字に曲げています。

レオくんの水面下での様子(提供:サンシャイン水族館)
レオくんの水面下での様子(提供:サンシャイン水族館)

ーーレオくんはどのような性格なの?

今の時期は食欲旺盛で、どっしりと構えているお父さん的な性格です。日中はほぼずっと水中でゆっくり泳いでいます。仔のメロにちょっかいを出されるとメロを追いかけたり、繁殖期になるとメスのラムを追いかけたり交尾などの行動も見ることができます。1日2回ある給餌の時間ではアクリル面近くで魚を食べたり、トレーニングの様子を観察することができます。


ーー「怖い」といった声も寄せられ、投稿は話題となっているが?

個人的には怖いという感覚は全くありませんが、直立の風貌と大きな瞳、薄明るい感じの部屋での写真なので、「怖いと感じる方もいるかな?」くらいは思いました。ですが、ここまで多く感心が寄せられるとは思わなくて、とても嬉しい気持ちです。

レオくん(提供:サンシャイン水族館)
レオくん(提供:サンシャイン水族館)

ちなみに、来園者側から見ることができるのは水面下のJ字になっているところまでで、残念ながら水上に出ている直立する上半身部分は見られないという。

サンシャイン水族館では、レオくんと共に、メスのラムちゃん。そして2頭の息子のメロくんの親子3頭が暮らしている。だが、直立して見てくる行動はレオくん以外はやらないのだそう。

もしかしたらバイカルアザラシの水槽で、水面下でJ字になっているレオくんを見かけることがあるかもしれない。その時はバックヤードで、飼育員さんしか見ることができない、エサを求める海坊主みたいな存在が出没しているはずだ。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。