大阪にある水族館「海遊館」で暮らす、ワモンアザラシのミゾレくん(1歳・オス)。4月に誕生日を迎えたばかりの彼にはブームになっていることがある。飼育員が潜水して行う、水槽の掃除に「かまってちょうだい」とちょっかいを出すことだ。

Twitterユーザーのガッチリカ(@GacchiRika)さんが撮影した動画では、掃除をしている飼育員の懐に潜り込んだり、軍手を口でハミハミしたり。目を細め、うっとりしているようにも見える。

なんとも可愛らしいが、掃除はちょっぴりしにくそう…。投稿には「新しい海遊館名物ですね」などのコメントが寄せられ、11万以上のいいねを集め、動画は157万回も再生されている。(6月1日時点)
海遊館のTwitterでも同じような行動が投稿されていて、こちらでは飼育員の小脇に抱えられていた。どうしてこんなに人懐っこいのだろうか。

ワモンアザラシとしては珍しい…人間への親近感が強い
実はミゾレくん、完全人工哺育で育てられたアザラシで編集部でも取り上げたことがある。当時は生後間もない頃で、初めての水に驚いてうまく泳げなかったりもした。今は「ミゾレ」という名前をもらって大きく成長したが、この行動にも関係しているのだろうか。
(参考記事:アザラシなのに泳ぎが苦手? “初めての水”にくしゃみ連発…赤ちゃんアザラシの反応がかわいい)

この1年の歩みと合わせて、海遊館に聞いてみた。
――ミゾレくんはどんなアザラシ?性格や普段の様子を教えて。
海遊館で初めて繁殖に成功したワモンアザラシで、出生直後に低体温症などの症状が見られたことから、飼育員が親代わりとなる完全人工哺育で育ちました。人工哺育の影響なのか、神経質とされているワモンアザラシでありながら、アクリル越しにお客様と遊んだり、飼育員が水槽にやってくると一番に水槽の入り口で待っています。
――ミゾレくんがちょっかいを出すのはどうして?
ミゾレは産まれてすぐに人工哺育を行ったこともあり、人間に対して親近感が強く、また、2022年4月に1歳になったばかりでまだまだ子どもです。好奇心旺盛で何にでも興味があることが理由だと思います。特に水中では人間よりも動きが自由にでき、陸上よりも多くこのような行動が見られます。

――水槽の掃除はどのように行っている?
水槽掃除は硬いブラシを使うと水槽に傷をつけてしまう事があるため、生地の柔らかい軍手を使って掃除をしています。潜水をしながら掃除をしているのは、水槽管理の視点などの複合的な理由です。
――飼育員が抱きかかえているのはどうして?
潜水清掃中は危険を伴う可能性もあるため、現在はミゾレが暴れないように一番落ち着き安心できる方法で行っています。それが抱きかかえているように見えたりしますが、実際は手を添えている程度になります。軍手の上から噛んでいるのも甘噛みで、噛まないようにするトレーニングも考え中です。
命の危機を乗り越えて成長
――ミゾレくん以外のアザラシもちょっかいを出すことはあるの?
ワモンアザラシは本来、神経質な性格をしている個体が多いです。海遊館では現在、ミゾレを含めて4頭を飼育(内3頭を「北極圏」水槽で展示)していますが、ミゾレ以外の個体が積極的にダイバーに近付いてくることはありません。

――ミゾレくんのちょっかいをどう思う?
水中での作業は危険を伴うこともあり、私たちはダイバーもミゾレも危険が無いように、どのようにするかを考えています。お客様がこのような行動を見られて「かわいい」という印象が、ワモンアザラシを知りたいに繋がり、そして生息地などの環境問題などに興味が広がっていただければうれしいと思います。
――誕生から約1年間を振り返ってどうだった?
出生直後に体調を崩して命の危機に瀕したり、人工哺育開始当初は体重が伸びない、便が出ないなど、色々なことが起こりましたが、その都度問題を乗り越え、順調に成長してくれて本当に良かったです。

――今後はどのように育っていってほしい?
ありがたいことに、全国にたくさんのファンの方がいる人気者です。人が好きな部分を長所として捉えて、元気に成長してほしいです。
ミゾレくんはまだ子どもだが、ハズバンダリートレーニング(動物に負担をかけず、健康管理をするための訓練)も行っているという。持ち前の好奇心と人懐っこさで、すくすくと成長してほしい。
お掃除ダイバーさんの邪魔をするミゾレを見れたんですが
— ガッチリカ (@GacchiRika) May 24, 2022
想像のはるか上を超えて邪魔してて
ほんまに面白かったし、可愛かった❤️#アザラシ#海遊館 pic.twitter.com/0ykSRxCvQG