愛媛県松山市で3年ぶりに行われた秋祭り。男たちが豪快にみこしをぶつけ合う「鉢合わせ」が見どころだ。コロナ禍が続くため、かき手も少ない中、気迫と万全の感染対策で立ち向かった。

「できることをして楽しむ」練習から対策徹底

10月7日、名物の「道後けんかみこし」が3年ぶりに帰ってきた。

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かき手たち:
もてこい!もてこい!

みこし同士が十分な距離をとったあと、激しくぶつけ合う姿は見応え十分。男たちの気迫と観客の歓声が会場を熱く盛り上げた。

北小唐人大神輿連合会・北岡尚小頭:
うまいこと、自分らで全部ができん部分もあると思う。やけどな、俺ら北小唐人な、みんなでしっかり盛り上がっていこうぜ!

かき手たち:
おー!

「走るみこし」として知られる北小唐人大神輿連合会。

3年ぶりの鉢合わせに向け、かき手たちは9月4日から毎週日曜日に集合し、練習を重ねてきた。

北小唐人大神輿連合会・花口仁亮大頭取:
世間の目も気になるので、感染対策はみんなで徹底してやろうと

コロナ禍での開催のため、祭りを取り仕切る道後八町会は、回、感染対策の徹底を強く呼びかけた。北小唐人も体温を測るためのタブレットを自前で購入。練習時から検温と手指の消毒を欠かさない。

北小唐人大神輿連合会・鷹本康佑小頭:
八町会の決まりで、全員3回目のワクチンを打ってという形になった。それでみんな当日に臨む

また、かき手全員にコロナワクチンの3回目以上の接種か、PCR検査での陰性確認などが義務付けられた。

北小唐人大神輿連合会・鷹本康佑小頭:
例年通りの祭り、できなくなる部分もあると思うんですけど、やれることをやって、楽しくいい祭りができたらなと思ってます

みこしの”理想の角度”を体に叩き込む

10月2日、本番に向けた最後の練習。みこしにはロープも巻かれた。この日、用意されたのは土が詰まった大きな袋。重さは約800kgで、みこし1体分に相当する。

北小唐人大神輿連合会・北岡尚小頭:
このトンパック(袋)でね、実際当ててみて、どんなふうに体重がくるか、どんなふうに負荷がくるか、みんなでな、しっかり感じてくれ

重い土の袋を対戦相手に見立てて、練習の総仕上げ。走るスタイルのみこしは、助走を取る分、相手にぶつかった瞬間に体勢がぶれやすい難しさがある。

かき手の心をひとつにして、何度も何度もぶつける練習を繰り返すことで、みこしが最も威力を発揮する理想の角度、45度を体に叩き込む。

北小唐人大神輿連合会・花口仁亮大頭取:
100%ですね。完璧に仕上がっていると思う。あとはもう本番、どれだけ気分出して、みこしの鉢合わせできるかだけですね

本番に向けて、かき手の姿も戦闘モードに。

かき手・武田聖也さん:
モヒカンにしてほしいです

美容師:
がっつり?

かき手・武田聖也さん:
がっつりです

気合十分のモヒカンを、さらに真っ赤に染め上げる。イメージ通りに仕上がり、大満足の武田さん。かき手の燃え盛る心意気を表すような炎のヘアスタイルが完成した。あとは本番を待つのみだ。

我慢してやっと…男たちの“華の舞台”

10月7日、鉢合わせ当日の夜も明けきらぬ午前5時、北小唐人みこしの約200人のかき手たちは宮出しの神事に参加した。

今年は勤務先などから祭りの参加を自粛するよう求められるケースも多く、かき手はコロナ前に比べ3割ほど少ないものの、一人一人の気合はこれまでと変わらない。

北小唐人大神輿連合会・大田晋輔頭取:
3年分、みんなが我慢して我慢して、やっとこの舞台に立てた。いろんな人の手助けがあってできていること。鉢合わせできる喜びをパワーに変えて戦いたいと思います

「祭り人」の魂を乗せたみこしを宮出し。あいにくの雨となったが、3年ぶりの鉢合わせを前に闘志は熱く燃え上がる。

北小唐人大神輿連合会・北岡尚小頭:
俺ら、これからな、鉢合わせ行くんど!

かき手たち:
おー!

北小唐人大神輿連合会・北岡尚小頭:
ここでダラダラダラダラして、負けて後悔するん、絶対嫌やけんな!

道後温泉駅前の会場の桟敷席は満席に。男たちの“華の舞台”がいよいよ始まる。激しい鉢合わせでは息もしにくいため、かき手たちはマスクを外して対戦に臨んだ。

かき手たち:
もてこい!もてこい!

対戦相手は「築山大神輿連合会」。

相手のみこしを待ち構える「待ちみこし」スタイルの築山大神輿が、なんと今回は動いた。

最初は押された北小唐人だが、すぐに体勢を立て直し築山を押し返す。思い通りの鉢合わせが披露でき、かき手たちもうれしさ爆発。

かき手・武田聖也さん:
3年ぶり最高でした、マジで。めっちゃうれしいです

北小唐人大神輿連合会・北岡尚小頭:
築山さんもちろん押しが強い。僕らもなかなか勝てなかった相手なんで、みんなに声かけして、必ず後ろに一回押されるから、そこから行こうと

しかし、今年の北小唐人は以前の鉢合わせと比べると、助走をとる距離が短いようだが…。

北小唐人大神輿連合会・尾﨑雄大取締:
足元が悪く、今まで練習してきた距離以上に危険性が増す。距離やタイミングの調整、かき手の足元の心配であるとか、そういうのを今確認したところです

3年ぶりの鉢合わせとなる上に雨が降り路面が滑りやすいため、宮出しの直前に走る距離を短くすることを決めたという。

北小唐人大神輿連合会・大田晋輔頭取:
充実した満足がいく鉢合わせができたんで良かったです。こういうかき手の顔を見るとやっぱりホッとして、もう来年のこと考えてしまう

コロナや雨を吹き飛ばす勢いで熱く盛り上がった、3年ぶりの鉢合わせ。かき手たちの熱気はすでに次の祭りへと向かっている。

(テレビ愛媛)

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