2021年2月、福岡・飯塚市と鹿児島市で子ども3人の遺体が見つかり、殺人などの罪に問われていた父親に対し、10月11日、福岡地裁で注目の判決が言い渡された。
判決は、検察側の求刑通り、無期懲役だった。
「極めて悪質な対応」きっかけはささいな出来事だった…
初公判の時と変わらず、黒っぽい長袖シャツを着用して法廷に現れた男。殺人や傷害致死などの罪に問われている住所不定・無職の田中涼二被告(43)だ。
武林仁美裁判長:
主文、被告人を無期懲役に処する

起訴状などによると、田中被告は2021年1月以降、飯塚市の当時の自宅で養子の大翔君(当時9歳)に暴行を繰り返し死亡させたうえ、2021年2月、鹿児島市内のホテルで長男の蓮翔君(当時3歳)と長女の姫奈ちゃん(当時2歳)の首を絞めるなどして殺害した罪に問われていた。田中被告は2人の殺害後に自殺を図り、ホテルの窓から飛び降りて大けがをした。

9月20日に始まった裁判員裁判。田中被告は、子ども2人の殺害を認めた一方、大翔君については「私の暴行で大翔が死んだかはわからない」と起訴内容を一部否認した。

9月21日、福岡地裁で行われた被告人質問。
田中被告:
(自分が作った弁当より)コンビニ弁当の方がいいと言われて頭にきて

弁護側:
(大翔君への暴行)やり過ぎているとは?
田中被告:
思いました
弁護側:
危険だとは思わなかった?
田中被告:
思いました
ささいな出来事をきっかけに、大翔くんに暴行を繰り返したという田中被告。

9月30日の論告で検察側は2人の殺害について「身勝手で情状の酌量の余地がない」とし、さらに大翔君への傷害致死についても「長期間にわたって衰弱するのを目の当たりにしながら、虐待した極めて悪質な対応」と指摘して田中被告に対し無期懲役を求刑した。
「罪のない子どもら巻き込み同情の余地なし」
そして迎えた判決公判。
福岡地裁の武林仁美裁判長は「肺炎も影響したと考えられるが、死因と考えられるほどではない」「衰弱しても、なお執拗に暴行を加え死亡させた」などと指摘し、大翔君を死亡させた傷害致死罪を認定。

そして判決理由について、
「幼い子ども3人の生命を奪ったという結果は極めて重大。短い生涯を終えざるを得ず、将来を奪われた被害者らの無念も計り知れない。
離婚して1人で養育することになり、育児ストレスがたまるなか、怒りを覚えたのは理解できなくはないが、児童相談所に預けてストレスを軽減することもできた。
被告人が養子に対して暴行に及んだ動機は身勝手というほかなく、酌むべき余地は乏しい。
養子の死亡が捜査機関などに露見することにより、実子2人と離れ離れになりたくないと考えて無理心中を図った。
被告人の身勝手な願望に、何ら罪のない実子らを巻き込んだもので同情の余地はない」などとして、田中被告に対し検察側の求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。

そして、裁判長は田中被告にこう言い聞かせた。
武林仁美裁判長(説諭):
生涯をかけて、愛する子どもの命を奪った自分自身の罪から目をそらさず、向き合い続けてください

裁判長からのこの言葉に、田中被告は無言のまま法廷を後にした。
(テレビ西日本)