福岡県飯塚市と鹿児島市で子ども3人の遺体が見つかり、殺人の罪などに問われた父親の裁判員裁判が始まった。9月20日の初公判で被告の父親は起訴内容を一部否認し、争う姿勢を見せた。

頭を丸刈りにし証言台へ 養子の暴行死を否認

記者:
あちらの席の真ん中にお座りください

田中涼二被告:
どういった内容から?

事件発覚の4カ月前、取材に応じる田中涼二被告(2020年10月)
事件発覚の4カ月前、取材に応じる田中涼二被告(2020年10月)
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記者:
会話の中で、どんどん伺っていきたいなと

田中涼二被告:
俺も10年以上前の話やけん

事件発覚4カ月前の2020年10月、別の事件の取材でテレビ西日本のインタビューに答えていた田中涼二被告(42)。3人の我が子どもに手をかけ死亡させた、殺人・傷害致死・死体遺棄などの罪に問われている。

福岡地裁で開かれた裁判員裁判の初公判に、田中被告は車椅子で入廷。頭を丸刈りにし、終始うつむきがちで証言台に立った。

裁判長:
名前は?

田中涼二被告:
田中涼二

頭を丸刈りにして、車椅子に乗り入廷
頭を丸刈りにして、車椅子に乗り入廷

裁判長:
職業は?

田中涼二被告:
無職

事件が発覚したのは2021年2月のこと。起訴状などによると、田中被告は鹿児島市内のホテルで、長男の蓮翔(れんと)君(当時3)の胸をナイフで刺したあと、首を絞めて殺害。一緒にいた長女の姫奈(ひな)ちゃん(当時2)の首も絞めて殺害したとされている。

長男は胸をナイフで刺し首を絞めて、長女は首を絞めて殺害か
長男は胸をナイフで刺し首を絞めて、長女は首を絞めて殺害か

事件を起こした田中被告は、自らもホテルのベランダから飛び降りて大けがをした。

さらに事件前の2021年1月以降、元妻の子どもで養子の大翔(ひろと)君(当時9)に暴行を繰り返し、外傷性ショックで死亡させ、遺体を飯塚市の自宅に放置したとされている。

元妻の子供の死にも関与か
元妻の子供の死にも関与か

初公判の冒頭、田中被告は裁判長の問いかけに対して次のように答えた。

裁判長:
読み上げた公訴事実と違うところはありますか?

田中涼二被告:
大翔にケガをさせたことは間違いありませんが、私の暴行で大翔が死んだかは分かりません。他は間違いありません

田中被告は実の子2人の殺害は認めた一方、養子の大翔くんに対する傷害致死などについては否認した。

元妻が証言 子煩悩な一方で養子には「厳しかった」

テレビ西日本の取材によると、田中被告は筑後地区に拠点を構える暴力団の元組員だった。7年ほど前に組織を脱退し、その後は建築作業員として働いていた。そして、2020年12月に妻と離婚し、田中被告は子ども3人と暮らしていた。

事件を起こす前、田中被告はインタビューで過去の自分を後悔する発言をしていた。

田中涼二被告:
今、自分の子どもが3人いますけど。(暴力団も辞めて)今の子どもたちにも胸を張って言える父親になれとろうし。自分は殺人はしてないけど、それなりの悪さはひと通りしてきて、行くとこまで行ってきたんで。自分が何かをして自分が苦しい思いをするのは、自分のせいやないですか。自分だけが苦しめばいいだけやないですか。人に迷惑をかけて、関係ない人間を苦しめるようなことをしたらいけないと思いますよね

過去を悔いていた田中被告
過去を悔いていた田中被告

検察側の証拠調べによると、田中被告は大翔君が死亡したのを確認したあと、福岡市内でレンタカーを借りている。そして、蓮翔君と姫奈ちゃんを連れて宮崎県串間市へ向かい、知人に金を無心。その後、鹿児島市内のホテルに入り事件は起きた。

検察の調べによる事件の経緯
検察の調べによる事件の経緯

事件当時、鹿児島入りした理由について、田中被告は捜査関係者に「最後の思い出作りをしてあげたかった」と説明している。

田中被告は実の子、蓮翔君と姫奈ちゃんの写真をSNSに数多く投稿していた。子煩悩な一面を見せていた反面、養子の大翔君に対しては「厳しく当たっていた」と、大翔君の実の母親で田中被告の元妻は証言した。

検察:
大翔君と蓮翔君と姫奈ちゃんとの接し方は?

元妻:
天と地くらい違う

検察:
田中被告は大翔君にはどんなことを?

元妻:
無視か、部屋に閉じ込めるか

検察:
その他には?

元妻:
酔っぱらって大翔にプロレスの関節技を決めて、よく泣いていました

さらに裁判では、田中被告が鹿児島のホテルに残したとされる遺書も読み上げられたが、「書き出し」に大翔君の名前はなかった。

検察(田中被告の遺書読み上げ):
私、蓮翔、姫奈が3人ずっと一緒にいれられるように火葬してください。最後まで本当にすみません。気づいたら手遅れでした

検察側は、冒頭陳述で「育児のストレスで大翔君を何度も暴行した犯行態様は、非常に悪質」「度重なる暴行による外傷性ショックで大翔君は死亡した」と厳しく指摘した。

一方の弁護側は「大翔君は死亡時、肺炎にかかっていて、肺炎で亡くなった可能性も否めず、傷害致死罪は成立しない」と主張している。

暴行のきっかけは食事 児相への発覚おそれ病院行かず

9月21日には、田中被告の被告人質問が行われた。

弁護側:
(大翔君が亡くなる日)どこを殴った?

田中涼二被告:
太ももを複数です。車の中でションベンを漏らして

ぼそぼそとした声で事件当時を振り返った田中被告。弁護側は2021年1月以降、大翔君に繰り返されるようになった暴行のきっかけについて尋ねた。

弁護側:
暴行のきっかけは?

田中涼二被告:
食事だった。嫌いな食べ物を口いっぱい詰め込んで、飲み込めずに吐いた

弁護側:
それだけで?

田中涼二被告:
「弁当の方がいい」と言われて頭にきて

大翔君への暴行のきっかけを聞かれた田中被告
大翔君への暴行のきっかけを聞かれた田中被告

このささいな出来事をきっかけに、田中被告は大翔君が嘔吐やお漏らしをする度、太ももなどを何度も殴ったと証言。また大翔君が死亡する前、肺炎の症状が現れた時も、「児相にバレたくなかった」などとして病院へ連れて行かなかったという。

弁護側:
(大翔君への暴行)やり過ぎているとは?

田中涼二被告:
思いました

弁護側:
あなたの精神状態は?

田中涼二被告:
おかしくなっていたと思います

度重なる暴力行為を認める一方で被告側は、大翔君は肺炎で亡くなった可能性も否めず、傷害致死罪は成立しないと主張している。

何の罪もない子ども3人の命が奪われたこの事件。求刑は9月30日に予定されている。

(テレビ西日本)